幼女の、幼女による、幼女のための楽園(VRMMO)
奈落の底と謎の場所
「やって、しまった……」
草原から森に入って数時間が経過した頃、みのりんは途方に暮れていた。
辺りは真っ暗で何も見えないが、決して夜になったという訳ではない。
とある理由で、みのりんは地中深くの奈落に閉じ込められてしまったのだ。
地上の光は届かず、距離が離れているため助けを呼んでも聞こえない。
静寂と闇が支配する魔の領域に、みのりんは踏み込んでしまっていた。
「どうして、こんなことに……」
一言で言えば、ぶっちゃけ自業自得である。
二言以上で説明するなら、まずは時間を巻き戻して、振り返る必要があるだろう。
全ては、森に入った所から始まる。
きっかけは、みのりんの飽くなき好奇心と探求心だった。
—————————————————————
「…………」
森へ足を踏み入れた、みのりんは感動で言葉を失っていた。
なぜなら、森を構成する全て、葉っぱの一枚から砂粒の一つに至るまでが、現実のそれと遜色のないレベルで再現されていたからだ。
それは、何も見た目に限った話ではない。
質感、感触、重さ、匂いなど、あらゆる要素が濃密に詰め込まれている。
加えて、葉っぱの模様や色合い、砂粒の形や大きさは一つ一つ異なっており、パッと見ただけでは同じものが発見できなかったのだ。
「すっごい、すっごい! これ、もう現実と変わらないっていうか、現実、超えてない!?」
【ネバーランド】の技術力に感動し、森の中で一人はしゃいでいた、みのりんは、ふとあることを思いつく。
「もしかして……」
恐る恐る、一枚の葉っぱに力を込め、引っ張ってみる。
すると、簡単にちぎれてしまった。
現実のそれと同じように。
次は、五本の指をぴんと伸ばして、えいやっ、と地面に突き刺してみる。
そして、指をくいっ、と曲げて引き抜くと地面が掘れてしまった。
これも、現実と同じ……いや、現実よりも、かなり掘りやすい。
「そうと分かれば、やることは、ひと~つ!」
その後、みのりんは、まず一本の木に生えた葉っぱを丸々むしり取った。
現実では、さすがに罪悪感が半端なく、まず出来ないことだ。
しかし、謎の達成感を味わいつつ、集めた葉っぱのベッドで一休みしていると、葉っぱが急にふわりと消えてしまう。
どうやら、時間経過で元に戻ってしまうらしく、裸になったはずの木を見ると再び葉が生えていた。
そこで止めれば良かったのだが、みのりんは次の遊びに移ってしまったのだった……。
—————————————————————
「よし! こんなとこでメソメソしてても仕方ない! 頑張って脱出するよ~!」
かくして、システム上で設定された最深部まで、穴堀りを楽しんでしまった、みのりんは、時間経過で穴がふさがってしまい、閉じ込められる事となった。
本来なら、ログアウトすれば最寄りの街から復帰できるのだが、みのりんはチュートリアルをスキップしたせいで、ログアウトの方法が分からない。
加えて、このゲームは時間を加速しているため、現実の1時間がゲーム内では1日になる。
つまり、自動ログアウト用に設定したタイマーが発動するのはゲーム時間で1日後だ。
とはいえ、こんなところで1日過ごす気は更々ないので、みのりんは拳を高く突き上げ、脱出に向けて気合を入れたのだった。
「うぅ、とはいえ、せめて灯りが欲しかったよ……」
そうは言っても、灯りなど持ってきていないし、そもそもアイテム画面の開き方が分からないため、どうにもならない。
みのりんは、ままならない現実 (といってもゲームだが……)に愚痴を垂れつつ、まずは手探りで近くの壁や足元を調べていく。
何でもいいから、とにかく脱出の手がかりになるものが欲しかった。
そして、指先の感覚に集中して、あちこちペタペタと触っていると、壁の一部が他とは違う手触りになっていることに気付く。
「ここ……少し湿ってる?」
そう、ほんの僅かではあるが、足元に近い壁が湿っていた。
みのりんは四つん這いになって、そこを更に掘ってみる。
すると、壁から水がチョロチョロと流れてきたのだ。
「川……いや、地下水路か何か、かな!? そこを泳いでいけば、地上に出られるかもっ」
目の前の水に希望を見出だし、力の限り、どんどん掘り進めていく。
掘れば掘るほど流れ出てくる水の勢いは増えていくが、みのりんに不安はない。
最悪、このゲームで溺れても、息が苦しくなることはないし、HPは減るので、ゼロになれば街に戻される。
どちらに転んでも損はない。
「いっけぇぇぇっ!」
その後も気合いを入れて掘り進むと、やがて目の前の壁がガラガラと崩れた。
そして——
「落ちる!?」
勢い余って壁の向こうに飛び出してしまった、みのりんは、水が勢いよく流れる広い空間に出る。
そして、そのまま落下し、激流に飲まれた、みのりんは泳ぐことも進路を変える事も叶わず、ただ水に揉まれて流されていった。
——それから、どれだけの時間が経っただろうか。
溺れたことで、とっくにHPが尽き、街に戻されているはずの、みのりんは、見覚えの無い場所に辿り着いていた。
「どこ……ここ?」
青でも赤でも、灰でも黒でもない、桜色の空。
芸術的なアーチを描いて宙に広がる空中水路。
いま、自分が足をつけているのは、大地ではなく、どうやら雲のようだ。
遠くには色とりどりの果実が実る不思議な木々が見える。
「楽……園?」
ふいに頭に浮かんだフレーズ。
ここは、【ネバーランド】に存在する真の楽園ではないか。
そんな疑問を抱いた、次の瞬間。
「ぶわっぷ!?」
急に突風が吹き荒れ、みのりんは反射的に目を閉じる。
やがて、風が収まったのを感じて、みのりんが目を開くと、そこは、元いた森の中だった。
「なに、今の……」
みのりんが狐に化かされたような心地でいると、唐突なファンファーレと共に、ウインドウが目の前に現れた。
そのウインドウの見出しには、こんな表示が。
『条件達成おめでとうございます! 称号を獲得しました!』
草原から森に入って数時間が経過した頃、みのりんは途方に暮れていた。
辺りは真っ暗で何も見えないが、決して夜になったという訳ではない。
とある理由で、みのりんは地中深くの奈落に閉じ込められてしまったのだ。
地上の光は届かず、距離が離れているため助けを呼んでも聞こえない。
静寂と闇が支配する魔の領域に、みのりんは踏み込んでしまっていた。
「どうして、こんなことに……」
一言で言えば、ぶっちゃけ自業自得である。
二言以上で説明するなら、まずは時間を巻き戻して、振り返る必要があるだろう。
全ては、森に入った所から始まる。
きっかけは、みのりんの飽くなき好奇心と探求心だった。
—————————————————————
「…………」
森へ足を踏み入れた、みのりんは感動で言葉を失っていた。
なぜなら、森を構成する全て、葉っぱの一枚から砂粒の一つに至るまでが、現実のそれと遜色のないレベルで再現されていたからだ。
それは、何も見た目に限った話ではない。
質感、感触、重さ、匂いなど、あらゆる要素が濃密に詰め込まれている。
加えて、葉っぱの模様や色合い、砂粒の形や大きさは一つ一つ異なっており、パッと見ただけでは同じものが発見できなかったのだ。
「すっごい、すっごい! これ、もう現実と変わらないっていうか、現実、超えてない!?」
【ネバーランド】の技術力に感動し、森の中で一人はしゃいでいた、みのりんは、ふとあることを思いつく。
「もしかして……」
恐る恐る、一枚の葉っぱに力を込め、引っ張ってみる。
すると、簡単にちぎれてしまった。
現実のそれと同じように。
次は、五本の指をぴんと伸ばして、えいやっ、と地面に突き刺してみる。
そして、指をくいっ、と曲げて引き抜くと地面が掘れてしまった。
これも、現実と同じ……いや、現実よりも、かなり掘りやすい。
「そうと分かれば、やることは、ひと~つ!」
その後、みのりんは、まず一本の木に生えた葉っぱを丸々むしり取った。
現実では、さすがに罪悪感が半端なく、まず出来ないことだ。
しかし、謎の達成感を味わいつつ、集めた葉っぱのベッドで一休みしていると、葉っぱが急にふわりと消えてしまう。
どうやら、時間経過で元に戻ってしまうらしく、裸になったはずの木を見ると再び葉が生えていた。
そこで止めれば良かったのだが、みのりんは次の遊びに移ってしまったのだった……。
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「よし! こんなとこでメソメソしてても仕方ない! 頑張って脱出するよ~!」
かくして、システム上で設定された最深部まで、穴堀りを楽しんでしまった、みのりんは、時間経過で穴がふさがってしまい、閉じ込められる事となった。
本来なら、ログアウトすれば最寄りの街から復帰できるのだが、みのりんはチュートリアルをスキップしたせいで、ログアウトの方法が分からない。
加えて、このゲームは時間を加速しているため、現実の1時間がゲーム内では1日になる。
つまり、自動ログアウト用に設定したタイマーが発動するのはゲーム時間で1日後だ。
とはいえ、こんなところで1日過ごす気は更々ないので、みのりんは拳を高く突き上げ、脱出に向けて気合を入れたのだった。
「うぅ、とはいえ、せめて灯りが欲しかったよ……」
そうは言っても、灯りなど持ってきていないし、そもそもアイテム画面の開き方が分からないため、どうにもならない。
みのりんは、ままならない現実 (といってもゲームだが……)に愚痴を垂れつつ、まずは手探りで近くの壁や足元を調べていく。
何でもいいから、とにかく脱出の手がかりになるものが欲しかった。
そして、指先の感覚に集中して、あちこちペタペタと触っていると、壁の一部が他とは違う手触りになっていることに気付く。
「ここ……少し湿ってる?」
そう、ほんの僅かではあるが、足元に近い壁が湿っていた。
みのりんは四つん這いになって、そこを更に掘ってみる。
すると、壁から水がチョロチョロと流れてきたのだ。
「川……いや、地下水路か何か、かな!? そこを泳いでいけば、地上に出られるかもっ」
目の前の水に希望を見出だし、力の限り、どんどん掘り進めていく。
掘れば掘るほど流れ出てくる水の勢いは増えていくが、みのりんに不安はない。
最悪、このゲームで溺れても、息が苦しくなることはないし、HPは減るので、ゼロになれば街に戻される。
どちらに転んでも損はない。
「いっけぇぇぇっ!」
その後も気合いを入れて掘り進むと、やがて目の前の壁がガラガラと崩れた。
そして——
「落ちる!?」
勢い余って壁の向こうに飛び出してしまった、みのりんは、水が勢いよく流れる広い空間に出る。
そして、そのまま落下し、激流に飲まれた、みのりんは泳ぐことも進路を変える事も叶わず、ただ水に揉まれて流されていった。
——それから、どれだけの時間が経っただろうか。
溺れたことで、とっくにHPが尽き、街に戻されているはずの、みのりんは、見覚えの無い場所に辿り着いていた。
「どこ……ここ?」
青でも赤でも、灰でも黒でもない、桜色の空。
芸術的なアーチを描いて宙に広がる空中水路。
いま、自分が足をつけているのは、大地ではなく、どうやら雲のようだ。
遠くには色とりどりの果実が実る不思議な木々が見える。
「楽……園?」
ふいに頭に浮かんだフレーズ。
ここは、【ネバーランド】に存在する真の楽園ではないか。
そんな疑問を抱いた、次の瞬間。
「ぶわっぷ!?」
急に突風が吹き荒れ、みのりんは反射的に目を閉じる。
やがて、風が収まったのを感じて、みのりんが目を開くと、そこは、元いた森の中だった。
「なに、今の……」
みのりんが狐に化かされたような心地でいると、唐突なファンファーレと共に、ウインドウが目の前に現れた。
そのウインドウの見出しには、こんな表示が。
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