赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~

木山楽斗

第124話 せめてもの手向け

 アンナと教授は、操魔将オーデットと対峙している。
 オーデットによって、教授が操られてしまったが、それもなんとか解決することができた。
 いよいよ、アンナ達も反撃の時だ。

「教授、私が突っ込みます。だから、サポートをお願いできますか?」
「ああ、もちろんだ。任せてくれ」

 アンナは聖剣を持ち、オーデットに向かっていく。
 これ以上オーデットが何かする前に、決着をつけるためだ。

「ふん! 向かって来るか! ならば!」

 そんなアンナに向かって、オーデットが糸を伸ばしてくる。
 その糸は、普通の糸ではない。オーデットの力によって強化された特別な糸だ。
 それをまともに受ける気など、アンナにはなかった。

「はああ!」
「何!?」

 アンナは聖剣を振るい、糸を切り裂いていく。
 強力な糸でも、アンナにとっては容易いものである。

「ぬううっ! 流石に、勇者か……」
「いくぞ! オーデット!」
「くっ! させん!」

 そこで、オーデットが動きを変えた。
 アンナに向かってではなく、自身の周囲に糸を展開し始めたのだ。
 どうやら、防御を固めるつもりのようだ。

「させないよ! 消滅呪文フレア!」
「ぬっ!」

 しかし、そんな糸の壁も、教授の消滅呪文フレアによって消滅していく。
 これにより、オーデットの体は無防備だ。

「オーデット、お前に操られ魔将達の無念、この私が変わって罰を与えてやる!」
「くっ!」
「いくぞ!」

 アンナは、聖剣を大きく掲げ構えた。
 その構えは、アンナが以前受けたことのある技と同じ構えである。

「剛魔奥義・鬼神粉砕撃オーガ・クラッシュ!」
「ぬううっ!?」

 アンナの一撃が、オーデットの体に完璧に当たった。
 その一撃は、大きな衝撃となり、オーデットの体を砕いていく。

「まだだ!」
「くっ!」

 アンナは攻撃が当たった後、大きく飛び上がった。
 さらに、オーデットの頭上で体を回転させる。
 それも、かつてアンナが苦しめられた技の一つだ。

「毒魔奥義・蛇の嵐スネーク・ストーム!」
「ぬわああっ!」

 アンナの突きが、次々とオーデットに突き刺さった。
 オーデットの体から、血液が噴き出し、辺りに飛び散る。
 アンナは着地しながら、その血液を操っていく。

「水魔奥義・三日月の水撃クレッセント・ブルー!」
「ぬぐうっ!?」

 その血液が、刃となってオーデットに降り注ぐ。
 それにより、オーデットの体からはさらなる血液が迸る。
 アンナは、さらにオーデットとの距離を詰めていく。

「狼魔奥義・狼重連撃ウルフ・ラッシュ!」
「ぐぬうっ!」
「はあああああ!」
「がはっ!?」

 アンナの連撃に、オーデットは苦しみの叫びをあげる。
 オーデットの体から、さらに血が飛び散っていく。

 アンナが放ったのは、全てオーデットに操られていた魔将達が放ってきた技である。それら全てを、アンナは受けてきた。

 それは、アンナにとって、魔将達への手向けでもあったのだ。操られた無念を晴らすための攻撃だったのである。
 敵ではあったが、アンナは魔将達のことをある程度尊敬していた。その者達を操り、仲間を操るという愚行に、アンナは怒っていたのだ。

「はああっ!」
「がはっ!?」

 アンナは大きく一撃を当て、オーデットの体を吹き飛ばす。
 次の一撃に、アンナは自身の技を放つ。
 アンナが持つ、最強の技で、一気に勝負を決める。

聖なる十字斬りセイント・クロス!」
「ぐわああああああっ!」

 オーデットの体に、聖闘気の一撃が当たった。
 それは、強力な破壊となり、オーデットの体を簡単に破壊していく。
 前魔王ではあるが、アンナの連撃には流石に耐え切れなかったようである。

「ぬうう……馬鹿な、このわしが……魔王たるこのわしが……」

 オーデットは、自身の様子にかなり動揺しているようだ。
 そんなオーデットに、アンナはゆっくりと近づいていく。
 放っていても、いずれ倒れるだろうが、それを待つ必要も、あまりないからだ。

「ぬっ?」
「え?」
「何?」

 しかし、アンナはその途中で足を止めた。
 なぜなら、オーデットの後ろから、一人の男が現れたからである。
 白いローブを纏っている顔の見えない男だ。

「お前は……シャドー!」
「ふん……」

 その人物に対して、オーデットは大きく声をあげた。
 その言葉で、アンナと教授も理解する。相手が、残る魔将の一人である影魔将シャドーであるということに。

「シャ、シャドー……わしがわかるか!?」
「無論……前魔王にして、現操魔将、オーデットだろう?」
「わかっておったか! なら、わしの指示に従え! わしを治療し、あやつらを殺すのじゃあ!」
「……」

 オーデットは大きく叫び、そのように指示を出してきた。
 その指示は、アンナと教授は気を引き締める。このタイミングで連戦になるとは思っていなかったが、それでも戦える力は残っていた。
 そのため、シャドーの動きに注意を注ぐ。

「ふん!」
「ぐっ!?」
「え?」
「何……?」

 だが、そんなアンナ達は目を丸めることになった。
 なぜなら、シャドーはその身から黒い刃を生やし、オーデットを突き刺したからである。
 その事実に、オーデットもかなり驚いているようだ。

 突如現れた魔将の行動に、アンナも教授も困惑することしかできなかった。

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