赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~

木山楽斗

第110話 海魔将タイラーン

 アンナ達は、海魔団と戦うために船に乗っていた。
 船が進んで行くと、だんだんと見えてくるものがある。
 それは、海を漂う者達の存在だ。

「あれが、海魔団?」
「うん、そうみたい……」

 アンナとカルーナは、そう言い交わしながら、それぞれ構える。
 ただし、最初の攻撃はアンナ達ではない。

「発射!」

 そこで、ボーデンが大きく声をあげた。
 すると、船から砲弾が放たれる。
 その砲弾は、海魔団の元へ向かっていく。

「敵襲だ!」
「撃ち落とせ!」

 海魔団の数人から、水の弾が放たれた。
 それにより、砲弾は勢いを失い、海に落ちていく。
 湿ってしまったため、爆発もしなかったようだ。

「まだまだ!」

 ボーデンの言葉とともに、さらなる砲弾が放たれる。
 それも、海魔団の攻撃によって撃ち落とされてしまうが、攻撃の手は緩めない。

「さて、俺もそろそろ行くか……」
「兄さん、気をつけて……」
「ああ、できるだけ奴らの数を減らしてみせる」

 そこで、ツヴァイが羽を広げて、飛び立った。
 ツヴァイは空を飛べるため、海魔団を攻撃しにいくのだ。
 ツヴァイは、一気に海魔団の頭上まで行き、槍を回転させる。

回転するスピニング・雷の槍サンダー・ランス!」
「鎧魔将だ!」
「逃げろ!」

 ツヴァイの槍から電撃が放たれ、海魔団を襲っていく。
 その中で、誰かが言葉を放ったが、時は既に遅く、ツヴァイの電撃に数名の魔族が沈む。

「くそっ!」
「逃がしはせんぞ!」

 逃げていく海魔団に対しても、ツヴァイは電撃を放つ。
 その攻撃によって、海魔団は次々と沈んでいく。

「むっ!?」

 しかし、そこでツヴァイの動きが止まる。
 次の瞬間、ツヴァイの体は吹き飛ばされてしまう。
 それは、巨大なものがぶつかってきたからである。

「ツヴァイ!」
「平気だ、アンナ。それよりも……」
「ああ、どうやら現れたみたいだね……」

 船の上に戻ってきたツヴァイに、アンナが声をかけた。
 どうやら、ダメージはそこまで内容だ。

 そして、今重要なのは、ツヴァイを殴りつけてきた者である。
 それは、いつの間にか現れていた。

 その大男は、人間に似た上半身と、魚のような下半身を持っている。

「海魔将……タイラーン!」
「貴様が、勇者か!」

 その男こそが、海魔将タイラーンだということを、アンナは理解した。
 タイラーンも、アンナのことを認識したようだ。

「貴様だけは許さん! 我が義弟、フロウを殺めた罪、その身で償ってもらうぞ!」
「何!?」

 アンナに対して、タイラーンがそんなことを言ってきた。
 その言葉から、水魔将フロウと彼は親しい関係にあったようだ。
 タイラーンは船に向けて、その銛を向けてくる。

三つの衝撃波トライデント・ショット!」

 銛の先端から、それぞれ炎、水、雷のエネルギーが放たれた。
 その衝撃波は、船に向かって一直線に進んでくる。

「こういう時の為に、船を強化したのさ……障壁バリア展開!」

 それに対して、教授がそんな合図を出す。
 その言葉により、船の周りに魔法の壁が発生する。

「聖なる光よ!」

 それに加えて、アンナが聖なる光を展開した。
 それにより、タイラーンの攻撃でも船はびくともしない。
 アンナは、ゆっくりとタイラーンを見据える。

「ふん!」
「来るか……」

 タイラーンは海を渡り、船の方に近づいて来ていた。

「向かって来るなら、私が……」

 そんなタイラーンに対して、カルーナが手を構える。
 さらに、その手に魔力を集中させていく。

紅蓮の不死鳥ファイア・フェニックス!」

 炎できた鳥が、タイラーンに向かって、真っ直ぐ向かう。
 タイラーンは、それに対して、腕を振るう。

「ふん!」

 その衝撃によって、炎の鳥は霧散する。
 しかし、すぐに炎は再生していく。
 それに対応できず、タイラーンの体が燃える。

「くっ……!」

 だが、ここは海の上だった。
 タイラーンはその身を沈め、炎を鎮火させる。

「やっぱり、私の魔法では、駄目か……」
「でも、いい攻撃だったよ。これで、タイラーンの動きを止められ――」

 アンナが、カルーナに言葉をかけようとした瞬間だった。
 アンナ達の乗っている船が、大きく揺れたのだ。
 その直後、アンナは理解する。

「タイラーン!」
「ふん! 油断したな!」

 タイラーンは炎を鎮火するとともに、アンナ達の方に近づいて来たのだ。
 それに気づかず、船への接近を許してしまったのである。

「……だが!」

 しかし、アンナにとっては、都合のいい面もあった。
 ここまで近づいて来れば、それはアンナの領域であるからだ。
 アンナは手に聖剣を握りしめて、一気に振るう。

聖なる十字斬りセイント・クロス!」
「その程度……むっ!?」

 聖なる刃が、タイラーンの身を引き裂いた。
 タイラーンの体は、いとも容易く斬ることができたのだ。
 それにより、タイラーンの体から鮮血が噴き出る。

「ぐっ!」

 アンナの攻撃により、タイラーンが後退していく。
 アンナ達は体勢を立て直し、次の戦いに備えるのだった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品