赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~

木山楽斗

第95話 獣王親衛隊ファルコ

 アンナは、町の北側から来る狼魔団を待っていた。
 カルーナ達は、南側の獣王の元へ向かっている。その仲間達が、獣王を倒してくれるはずだ。
 そのため、アンナの役目はこちらにいる狼魔団を倒すことである。

「見えてきたな……」

 アストリオン王国の兵士達とともに待っていたアンナは、前方の狼魔団を認識した。
 いよいよ、戦いの始まりである。

「アンナ様、行きましょう!」
「はい!」

 アンナ達とアストリオン王国軍は、狼魔団へと向かっていく。

「勇者アンナ!」
「何!?」

 狼魔団の元へと駆けていたアンナに、羽のようなものが飛んできた。
 アンナはそれを躱し、相手の姿を探す。すると、上空に鳥の獣人がいるのがわかった。

「お前は!?」
「私はファルコ。獣王親衛隊の一人!」
「獣王親衛隊!?」

 ファルコの言葉に、アンナは驚く。そんな者達がいるなど、知らなかったのだ。

「お前の相手は、私がさせてもらう! 羽の弾丸ウィング・ショット!」

 アンナが色々と考えていると、ファルコが動いた。
 その羽を動かし、羽を飛ばしてきたのだ。

「くっ!」

 アンナはその羽を躱しながら、ファルコを見据える。

「ふん! 飛べないお前に、私は倒せん!」
「……それは、どうかな?」

 余裕な態度をとるファルコに対して、アンナは笑う。
 確かに、空を自由に飛べるファルコに攻撃するのは、少々厄介だ。
 だが、攻撃する手段が、全くないという訳ではないのである。

「強がりを…」

 アンナは、足元に聖闘気を集中させていく。
 教授との修行によって、聖闘気はすぐに出せるようになっている。

「はっ!」

 そして、アンナは大地を大きく蹴った。
 すると、アンナの体は上空へと飛び立ち、ファルコの元に向かっていく。

「何!?」
「喰らえ!」

 急な接近に、ファルコは驚いたようで、動きを止めていた。
 アンナは、速度を止めないまま、ファルコに向かって、剣を振るう。

十字斬りクロス・スラッシュ!」
「ぐわああああああああ!」

 アンナの一撃によって。ファルコの羽は切り裂かれた。
 飛べなくなったファルコは、地面に向けて落下していく。
 アンナは空中で体を翻し、地面に着地する。

「どうやら、飛べなくなったようだね」
「くっ!?」

 地面に叩きつけられたファルコは、体を起こして、体勢を立て直していた。
 アンナはゆっくりと歩き、ファルコへと近づいていく。

「例え飛べずとも、私は戦える……羽の弾丸ウィング・ショット!」

 ファルコは残った翼を羽ばたかせ、アンナに羽を飛ばしてくる。

「その程度……」

 アンナは、向かって来る羽をものともしない。
 力のこもっていない羽を、アンナはいとも簡単に撃ち落としていく。

「くっ……! くそっ!」
「くるか!」

 ファルコは羽を飛ばすのをやめて、アンナへと向かってくる。体勢を低くし、そのくちばしを向けてきていた。

鳥人の刺突バードマン・スピア!」
「はああ!」
「ふっ!?」

 向かってきたファルコに対して、アンナは剣を振るう。
 その剣は、ファルコのくちばしを切り裂き、破壊する。

「クワアアアア!」

 体を破壊されたファルコは、叫び声をあげる。
 羽もくちばしも切り刻まれ、ファルコの体はボロボロだった。

「クワアアア!」

 それでも、諦めなかったようで、その足を振るってくる。

「はあっ!」
「クワアア!?」

 アンナはその足に対しても、剣を振るう。
 ファルコの足が切り裂かれ、鮮血が飛び散る。

「クワワア!」

 しかしファルコは、まだ諦めていなかった。
 その腕を、アンナに向けて振るってきたのだ。
 だが、その一撃には、ほとんど力が残っていなかった。

「はああっ!」
「クワ……!」

 そのため、アンナの一撃はいとも容易く当たり、その腕を切り裂く。

「クワ……」

 ファルコの体は、最早ほとんど機能していなかった。
 そんなファルコに、アンナは最後の一撃を放つ。

十字斬りクロス・スラッシュ!」
「クワアアアアアアアア!」

 十字の斬撃が、ファルコを切り裂いた。
 その体から、鮮血がほとばしる。

「こ、これが、勇、者の、力……か……」

 最期にそう言って、ファルコは倒れていった。
 アンナは、それを確認した後、周囲の様子を見る。
 すると、アンナを見つめる虎の獣人がいた。

「お前は……?」
「俺は、獣王親衛隊が一人、タイガ」
「また、獣王親衛隊か……」

 新たなる敵を認識し、アンナは冷や汗をかく。
 ファルコを簡単に倒せたのは、相手が油断している内に決着をつけられただけである。そのため、何度も戦うのは厳しいものだった。
 しかし、このクラスの敵を相手するのは、アンナの役割である。どれだけ厳しくても、戦うしかないのだ。

「ファルコの仇はとらせてもらう」

 タイガと名乗った獣人は、その爪を立て、そう宣言する。

「……わかった、相手しよう」

 アンナもそれに合わせて聖剣を構え、攻撃に備える。
 アンナの戦いは、まだ始まったばかりだった。

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