赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~
第71話 イルドニア王国出発
毒魔団との戦いから数日経った後、アンナ達は、イルドニア王に呼びだされていた。
アンナ達の今後を話し合うためである。
「よく来てくれたのう。勇者よ」
「はい、王様」
「さて、立ってくれて構わない」
イルドニア王の前に、アンナ達五人は跪いていた。
王の合図で、五人は立ち上がる。
「さて、お主達も、そろそろ新たなる国へと向かわなければならん」
「はい……」
アンナ達は休息を終えたため、新たなる国へと旅立たなければならない。
また、次の戦いが始まるのだ。
「次の目的地はオルフィーニ共和国……この国から、西へと向かった場所にある国じゃ」
「オルフィーニ共和国……ですか」
イルドニア王から告げられた目的地は、オルフィーニ共和国という場所であった。
「あの国に向かうには、海を越えなければならん」
「海ですか? 確か、海は海魔軍に支配されているのでは……?」
アンナは、かつて別の国でそう聞かされている。
そのため、海の航海は危険だと思ったのだ。
「それは、北の海が主でのう。こちらの海は、比較的安全じゃ」
アンナの疑問に、イルドニア王はそう答える。
こちらの海は、大丈夫なようだ。しかし、比較的安全であるということは、それなりの危険があることは確かである。
「最も、海を越えなければ、お主達が向かっていない国には、どの道行けん。多少の危険も、仕方ないのじゃ……」
「……そうですね」
アンナも、そのことは理解していた。
ただ、確認しておかなければならなかっただけだ。
海魔団と戦うのなら、それなりに覚悟をする必要があった。それだけのことである。
「船は既に手配してある。所定の場所に行けば、馬車ごと運んでくれるじゃろう」
「ありがとうございます」
こうして、アンナ達の次に向かう場所が決まったのだった。
◇
「さて、出発か……」
アンナ達五人は、馬車に乗り込むことにした。今回も、アンナとカルーナが御者席に座る。ティリアとガルス、ツヴァイは馬車の中に入るのだが、そこでアンナはツヴァイの格好が気になっていた。
「ツヴァイ、馬車の中くらい、鎧を解いてもいいんじゃない?」
ツヴァイは、魔人の鎧槍を鎧として纏っている。半人半魔であることを隠すためらしいが、流石に息苦しいのではとアンナは思った。
「構わん……人間に見つかると、厄介だろう?」
「でも、そんな格好じゃあ、息苦しくない?」
「俺は、長年鎧を纏っていたのだぞ? これくらい平気だ」
「あ! ああ……」
そこで、アンナは気づく。
ツヴァイは魔王軍に、リビングアーマーとして在籍していたのである。そのため、人前で鎧を脱ぐことはできなかったはずだ。
つまり、ツヴァイにとって鎧を纏って生活するのは慣れており、苦でないのだろう。
「さて、俺は馬車の中に入らせてもらう」
そう言って、ツヴァイは馬車の中に入る。
そこで、ツヴァイが手を伸ばし、ティリアに対して言葉を放った。
「ティリア、足元に気をつけるのだぞ。手を貸してやる」
「兄さん、ありがとうございます。でも、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ?」
ツヴァイの提案を、ティリアは丁重に断る。
ティリアも、流石に過保護だと感じたのだろう。
「ねえ、カルーナ?」
「うん? どうしたの?」
「ツヴァイって、なんていうか……妹好きだよね」
「……確かにそうかも」
アンナとカルーナが、そんな風に話していると、ガルスが口を開く。
「アンナ、カルーナ、お前達も人のことは言えないと思うぞ……」
「え? そうかな?」
「そうだ」
ガルスは、アンナやカルーナもツヴァイと変わらないと言ってきたのだ。
「……まあ、確かにそうか」
確かに、アンナにも思い当たる節があった。
他人を笑える立場ではなかったのだ。
「まあ、俺も兄妹愛や姉妹愛を否定するつもりはない。家族を愛し、心配するのは当然のことだ」
「家族を愛する……」
ガルスの言葉に、カルーナが反応した。
カルーナは、何かを考えているようだ。
「カルーナ、どうしたの?」
「うん、お姉ちゃん……今日はちょっとごめん」
「え?」
「ガルスさん」
カルーナは、アンナに謝るとガルスに声をかけた。
「なんだ?」
「今回の案内だけでいいので、変わってもらえませんか?」
「む? 俺は別に構わんが……どうかしたのか?」
「はい、ちょっと考えたいことがあって……」
そう言ってカルーナは、ガルスに地図を渡して、馬車の中へと向かっていく。
「それじゃあ、お願いします」
「カ、カルーナ? ちょっと……」
アンナの制止も聞かず、カルーナは馬車の中に入ってしまった。
残されたアンナは、少しショックを受ける。いつも一緒だったカルーナが、何故かわからず離れていく。それが、どうしようもなくショックだったのだ。
「……寂しいのか?」
隣のガルスが、アンナにそう聞いてくる。
「……うん」
弱っていたアンナは、誤魔化すこともせず、それに頷く。最早、強がる力も残っていなかったのだ。
「まあ、あの年頃なら、色々悩みもあるだろう。それに、別にお前を嫌ってのことではないようだ。問題ないのではないか?」
「……そうだね。ありがとう、ガルス」
ガルスの励ましで、アンナは少し元気を取り戻す。
二人は、御者席に乗り、馬達に合図を出した。
「マルカブ、シェアト、よろしくね……」
「ブルル!?」
「ヒヒーン!?」
馬達も、元気がないアンナに少し驚いていたが、すぐに走り出す。
「あ、そうだ。ガルスに聞きたいことがあったんだ?」
「聞きたいこと? なんだ?」
そこでアンナは、あることを思い出していた。
それは、ガルスがかつていた魔王軍のことだ。
「ガルスやツヴァイは、魔将だった訳だけど、それって何人いるの?」
「ああ、そのことか……」
アンナが気にしていたのは、魔将の数である。
今までアンナは、五人の魔将に会ってきたが、何人いるのかは気になることだった。
それは、後どれくらい戦いが続くのかという指標にもなるからだ。
「魔将は全部で十人いる」
「十人か……」
魔将は、合計十人いるらしい。
アンナが倒したといえるのは、四人である。よって、後六人もの魔将と戦わなければならないのだと、アンナは思った。
「お前が今まで会ったのは、剛魔将、竜魔将、狼魔将、鎧魔将、毒魔将。残りの水魔将、海魔将、闇魔将が魔王軍の主戦力だ」
「それだと八人だね」
「ああ、残りの影魔将と操魔将は、魔王の側近に位置する者達だ」
「側近……」
アンナは、ガルスのおかげで、これから戦うべき者達を理解できた。
「ガルス、ありがとう。魔王軍のことが、少しだけわかったよ」
「このくらいのことなら、いくらでも聞けばいい」
アンナ達の旅は続いていく。
アンナ達の今後を話し合うためである。
「よく来てくれたのう。勇者よ」
「はい、王様」
「さて、立ってくれて構わない」
イルドニア王の前に、アンナ達五人は跪いていた。
王の合図で、五人は立ち上がる。
「さて、お主達も、そろそろ新たなる国へと向かわなければならん」
「はい……」
アンナ達は休息を終えたため、新たなる国へと旅立たなければならない。
また、次の戦いが始まるのだ。
「次の目的地はオルフィーニ共和国……この国から、西へと向かった場所にある国じゃ」
「オルフィーニ共和国……ですか」
イルドニア王から告げられた目的地は、オルフィーニ共和国という場所であった。
「あの国に向かうには、海を越えなければならん」
「海ですか? 確か、海は海魔軍に支配されているのでは……?」
アンナは、かつて別の国でそう聞かされている。
そのため、海の航海は危険だと思ったのだ。
「それは、北の海が主でのう。こちらの海は、比較的安全じゃ」
アンナの疑問に、イルドニア王はそう答える。
こちらの海は、大丈夫なようだ。しかし、比較的安全であるということは、それなりの危険があることは確かである。
「最も、海を越えなければ、お主達が向かっていない国には、どの道行けん。多少の危険も、仕方ないのじゃ……」
「……そうですね」
アンナも、そのことは理解していた。
ただ、確認しておかなければならなかっただけだ。
海魔団と戦うのなら、それなりに覚悟をする必要があった。それだけのことである。
「船は既に手配してある。所定の場所に行けば、馬車ごと運んでくれるじゃろう」
「ありがとうございます」
こうして、アンナ達の次に向かう場所が決まったのだった。
◇
「さて、出発か……」
アンナ達五人は、馬車に乗り込むことにした。今回も、アンナとカルーナが御者席に座る。ティリアとガルス、ツヴァイは馬車の中に入るのだが、そこでアンナはツヴァイの格好が気になっていた。
「ツヴァイ、馬車の中くらい、鎧を解いてもいいんじゃない?」
ツヴァイは、魔人の鎧槍を鎧として纏っている。半人半魔であることを隠すためらしいが、流石に息苦しいのではとアンナは思った。
「構わん……人間に見つかると、厄介だろう?」
「でも、そんな格好じゃあ、息苦しくない?」
「俺は、長年鎧を纏っていたのだぞ? これくらい平気だ」
「あ! ああ……」
そこで、アンナは気づく。
ツヴァイは魔王軍に、リビングアーマーとして在籍していたのである。そのため、人前で鎧を脱ぐことはできなかったはずだ。
つまり、ツヴァイにとって鎧を纏って生活するのは慣れており、苦でないのだろう。
「さて、俺は馬車の中に入らせてもらう」
そう言って、ツヴァイは馬車の中に入る。
そこで、ツヴァイが手を伸ばし、ティリアに対して言葉を放った。
「ティリア、足元に気をつけるのだぞ。手を貸してやる」
「兄さん、ありがとうございます。でも、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ?」
ツヴァイの提案を、ティリアは丁重に断る。
ティリアも、流石に過保護だと感じたのだろう。
「ねえ、カルーナ?」
「うん? どうしたの?」
「ツヴァイって、なんていうか……妹好きだよね」
「……確かにそうかも」
アンナとカルーナが、そんな風に話していると、ガルスが口を開く。
「アンナ、カルーナ、お前達も人のことは言えないと思うぞ……」
「え? そうかな?」
「そうだ」
ガルスは、アンナやカルーナもツヴァイと変わらないと言ってきたのだ。
「……まあ、確かにそうか」
確かに、アンナにも思い当たる節があった。
他人を笑える立場ではなかったのだ。
「まあ、俺も兄妹愛や姉妹愛を否定するつもりはない。家族を愛し、心配するのは当然のことだ」
「家族を愛する……」
ガルスの言葉に、カルーナが反応した。
カルーナは、何かを考えているようだ。
「カルーナ、どうしたの?」
「うん、お姉ちゃん……今日はちょっとごめん」
「え?」
「ガルスさん」
カルーナは、アンナに謝るとガルスに声をかけた。
「なんだ?」
「今回の案内だけでいいので、変わってもらえませんか?」
「む? 俺は別に構わんが……どうかしたのか?」
「はい、ちょっと考えたいことがあって……」
そう言ってカルーナは、ガルスに地図を渡して、馬車の中へと向かっていく。
「それじゃあ、お願いします」
「カ、カルーナ? ちょっと……」
アンナの制止も聞かず、カルーナは馬車の中に入ってしまった。
残されたアンナは、少しショックを受ける。いつも一緒だったカルーナが、何故かわからず離れていく。それが、どうしようもなくショックだったのだ。
「……寂しいのか?」
隣のガルスが、アンナにそう聞いてくる。
「……うん」
弱っていたアンナは、誤魔化すこともせず、それに頷く。最早、強がる力も残っていなかったのだ。
「まあ、あの年頃なら、色々悩みもあるだろう。それに、別にお前を嫌ってのことではないようだ。問題ないのではないか?」
「……そうだね。ありがとう、ガルス」
ガルスの励ましで、アンナは少し元気を取り戻す。
二人は、御者席に乗り、馬達に合図を出した。
「マルカブ、シェアト、よろしくね……」
「ブルル!?」
「ヒヒーン!?」
馬達も、元気がないアンナに少し驚いていたが、すぐに走り出す。
「あ、そうだ。ガルスに聞きたいことがあったんだ?」
「聞きたいこと? なんだ?」
そこでアンナは、あることを思い出していた。
それは、ガルスがかつていた魔王軍のことだ。
「ガルスやツヴァイは、魔将だった訳だけど、それって何人いるの?」
「ああ、そのことか……」
アンナが気にしていたのは、魔将の数である。
今までアンナは、五人の魔将に会ってきたが、何人いるのかは気になることだった。
それは、後どれくらい戦いが続くのかという指標にもなるからだ。
「魔将は全部で十人いる」
「十人か……」
魔将は、合計十人いるらしい。
アンナが倒したといえるのは、四人である。よって、後六人もの魔将と戦わなければならないのだと、アンナは思った。
「お前が今まで会ったのは、剛魔将、竜魔将、狼魔将、鎧魔将、毒魔将。残りの水魔将、海魔将、闇魔将が魔王軍の主戦力だ」
「それだと八人だね」
「ああ、残りの影魔将と操魔将は、魔王の側近に位置する者達だ」
「側近……」
アンナは、ガルスのおかげで、これから戦うべき者達を理解できた。
「ガルス、ありがとう。魔王軍のことが、少しだけわかったよ」
「このくらいのことなら、いくらでも聞けばいい」
アンナ達の旅は続いていく。
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