赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~
第69話 勇者の運命は
アンナは、ラミアナの最期を看取り、その体を持ち上げた。
そして、ツヴァイとティリアの元に向かっていく。
「勇者アンナ……」
「ツヴァイ、助けられたね。ありがとう……」
ティリアによってダメージを回復したツヴァイに、アンナが話しかける。
「……そいつをどうするつもりだ?」
ツヴァイは、アンナが抱えるラミアナを指さしそう呟く。
「連れて帰って埋葬しようと思ってね……」
「そうか……」
アンナは、ラミアナをこのまま放っておく気になれなかった。
敵であっても、誇り高き戦士を雑に扱うことなど、アンナにはできなかったのだ。
「毒魔将が死んだのがわかれば、毒魔団も降伏するだろう……」
「うん、だから、急がなくちゃね……」
この戦いを終わらせるため、アンナ達はすぐに他の者達がいる場所に向かった。
◇
アンナ達により、ラミアナの敗北が伝えられたため、毒魔団の団員達は降伏した。
現在は、団員達の拘束が、イルドニア王国兵士によって行われている。
「カルーナ、ガルス、無事でよかった」
「お姉ちゃんこそ、無事でよかったよ」
「ああ……だが、それより驚くべきことがある」
そこで、アンナ達は合流し、仲間達が無事であったことを確認するのだった。
ガルスは、無事を喜びながら、ある人物に目を向けている。
「ツヴァイ……」
それは、ツヴァイ。
ガルスにとっては、かつての仲間であり、ここ最近は敵として戦った相手である。
「久しいな……ガルスよ」
ツヴァイもガルスに応えるように、声を発した。
「生きていたのだな……」
「ああ、俺もお前と同じことになったようだ……」
二人は、お互いに笑い合う。
魔王軍を抜け、勇者側につく。二人の立場は、似たものだった。
「とにかく、一度王国に戻ってから話し合おう」
アンナの言葉に、皆頷く。
そして、アンナ達は、王国に帰還するのだった。
◇
アンナ達は、いち早く王国へと帰還していた。
イルドニア王国の兵士達は、毒魔団の団員を連れて、後から来ることになっている。
ラミアナの遺体も、そこで運ばれてくるはずだ。
「勇者よ……よくやってくれたのう」
アンナ達は今、王の前にて跪いている。
イルドニア王は、アンナ達の成果に大きく喜んでいるようだ。
「ありがとうございます……王様」
「うむ、これで我が国もしばらくは安泰じゃ」
そんな会話をしている時だった。
兵の一人が、イルドニア王の近くに歩み寄り、何かを伝えたのだ。
「何……!?」
それによって、イルドニア王は目を丸くする。
何か問題があったようだ。
「王様、何かあったんですか……?」
「うむ、後から帰還するはずだった兵士の一部が、何者かに襲われたそうなのじゃ」
「襲われた!?」
イルドニア王の言葉に、アンナ達も驚いた。
戦いが終わったというのに、一体誰がそんなことをしたのだろうか。
「……そこで、あることが起こったようなのじゃ」
驚くアンナ達に、イルドニア王はさらに言葉を放つ。
「毒魔将ラミアナの遺体が、その者に奪われたそうなのじゃ……」
「ラミアナが……!?」
兵士を襲った何者かの狙いは、ラミアナの遺体だったようだ。
イルドニア王国軍の兵士を襲い、ラミアナの遺体を奪う者、そんなことをするのは限られた者であろう。
「ガルス、ツヴァイ……」
そこでアンナは、魔族側の二人に目を向けた。
もしかしたら、魔族側で遺体を使う者がいるかもしれないと思ったからだ。
「……俺の知る限りでは、死者蘇生の類を使えるものなどいないな」
ガルスはそう言いながら、顎に手を当てる。
何かを考えているようだ。
「……死者蘇生か」
一方ツヴァイには、死者蘇生で思い当たることがあった。
なぜなら、彼自身が瀕死の状態であったプラチナスを回復させたからだ。
だが、あの時のプラチナスはまだ生きている状態であった。ラミアナが完全に死んでいたことから、同じ方法ではないのは確かだ。
「俺も、死者を完全に蘇らせる方法は知らん」
結論として、ツヴァイにもわからないことだった。
「一体何者が、どんな目的で……」
もしかしたら、魔族でも、知られていないようなものがあるのかもしれない。
そのまだ見ぬ陰謀は、アンナの心に不安を残すのだった。
◇
アンナが部屋で休んでいると、その部屋の戸が叩かれる音がした。
部屋にいたカルーナが、その戸を開ける。
「あ……」
「お疲れのところ、申し訳ありません。勇者様とお話したくて……」
そこには、イルドニア王国の王女であるセリトアであった。
「今、お姉ちゃんは疲れているので……」
流石に、戦いの後でこんな訪問をするのは、非常識である。
アンナもカルーナもそう思った。そのため、カルーナは追い返すことにしたのだ。
「いえ……これだけは話しておかなければならないんです」
しかし、セリトアの目は、今までと何かが違った。
「一体、何を話したいんですか?」
「勇者様の戦いに関することです……」
「……わかりました。入ってください」
カルーナは、その目を見てセリトアを通す。
その目は、それをするのに十分な何かがあったのだ。
セリトアとアンナ、さらにカルーナはテーブルを囲み、話すことにした。
「それで、話というのは……」
「勇者様……私は、ずっと勇者という存在に憧れていました」
アンナが聞くと、セリトアはゆっくりと話し始める。
「……ところで勇者様は、先代の勇者様がどうなったか、知っていますか?」
「……今の魔王との戦いで、亡くなったと聞いています」
「そうです。ですが、先代の勇者様は、その前に先代の魔王を倒しているんです」
セリトアが話しているのは、アンナの前に勇者だった者のことだ。
その人物のことは、アンナももちろん知っている。
「それは一体、何を……?」
「つまり、先代の勇者様は、戦いに勝ったのに、亡くなられたのです」
「……それは」
「今までの歴史もそうです。魔王を倒しても、新たな魔王が現れます。つまり、勇者の戦いは終わらないということです」
それは、勇者の残酷ともいえる運命の話であった。
終わらない戦い、それがセリトアの伝えたかったことなのだろう。
「その戦いに、どれだけの意味があるのでしょうか? 私にはとてもわかりません」
そう言って、セリトアは立ち上がった。これで話は終わりなのだろう。
「勇者様、死んではいけませんよ。可愛い妹さんが、悲しみますからね」
「え……? 私?」
「ふふ、ちょっと反応が可愛くて、からかっちゃいましたけど、あなたのお姉ちゃんをとったりはしませんよ」
「ええ!?」
セリトアは、最後にそんな発言をしていった。
カルーナが目を丸くしている内に、セリトアは去っていく。
その顔は、笑顔であった。
「気づかれていたみたいだね……」
「……うう、そうだったんだ……」
カルーナは、顔を赤くした。
まさか、からかわれていたとは思わず、自分の行動が恥ずかしくなったのだ。
「勇者の運命か……」
カルーナが照れている中、アンナは小声でそう呟く。
セリトアの言った通り、今の魔王を倒しても、次の魔王が現れるかもしれない。そうした場合、自分はどうするのか、それを考えなければならなかった。
「……」
アンナは、平和な暮らしを取り戻すために戦いを始めた。
その後、魔王軍に襲われた人々を知り、その人達を守りたいという使命感も芽生えたのだ。
ならば、この戦いが終わっても、戦い続けるのか。それは、今のアンナには答えの出せないものであった。
そして、ツヴァイとティリアの元に向かっていく。
「勇者アンナ……」
「ツヴァイ、助けられたね。ありがとう……」
ティリアによってダメージを回復したツヴァイに、アンナが話しかける。
「……そいつをどうするつもりだ?」
ツヴァイは、アンナが抱えるラミアナを指さしそう呟く。
「連れて帰って埋葬しようと思ってね……」
「そうか……」
アンナは、ラミアナをこのまま放っておく気になれなかった。
敵であっても、誇り高き戦士を雑に扱うことなど、アンナにはできなかったのだ。
「毒魔将が死んだのがわかれば、毒魔団も降伏するだろう……」
「うん、だから、急がなくちゃね……」
この戦いを終わらせるため、アンナ達はすぐに他の者達がいる場所に向かった。
◇
アンナ達により、ラミアナの敗北が伝えられたため、毒魔団の団員達は降伏した。
現在は、団員達の拘束が、イルドニア王国兵士によって行われている。
「カルーナ、ガルス、無事でよかった」
「お姉ちゃんこそ、無事でよかったよ」
「ああ……だが、それより驚くべきことがある」
そこで、アンナ達は合流し、仲間達が無事であったことを確認するのだった。
ガルスは、無事を喜びながら、ある人物に目を向けている。
「ツヴァイ……」
それは、ツヴァイ。
ガルスにとっては、かつての仲間であり、ここ最近は敵として戦った相手である。
「久しいな……ガルスよ」
ツヴァイもガルスに応えるように、声を発した。
「生きていたのだな……」
「ああ、俺もお前と同じことになったようだ……」
二人は、お互いに笑い合う。
魔王軍を抜け、勇者側につく。二人の立場は、似たものだった。
「とにかく、一度王国に戻ってから話し合おう」
アンナの言葉に、皆頷く。
そして、アンナ達は、王国に帰還するのだった。
◇
アンナ達は、いち早く王国へと帰還していた。
イルドニア王国の兵士達は、毒魔団の団員を連れて、後から来ることになっている。
ラミアナの遺体も、そこで運ばれてくるはずだ。
「勇者よ……よくやってくれたのう」
アンナ達は今、王の前にて跪いている。
イルドニア王は、アンナ達の成果に大きく喜んでいるようだ。
「ありがとうございます……王様」
「うむ、これで我が国もしばらくは安泰じゃ」
そんな会話をしている時だった。
兵の一人が、イルドニア王の近くに歩み寄り、何かを伝えたのだ。
「何……!?」
それによって、イルドニア王は目を丸くする。
何か問題があったようだ。
「王様、何かあったんですか……?」
「うむ、後から帰還するはずだった兵士の一部が、何者かに襲われたそうなのじゃ」
「襲われた!?」
イルドニア王の言葉に、アンナ達も驚いた。
戦いが終わったというのに、一体誰がそんなことをしたのだろうか。
「……そこで、あることが起こったようなのじゃ」
驚くアンナ達に、イルドニア王はさらに言葉を放つ。
「毒魔将ラミアナの遺体が、その者に奪われたそうなのじゃ……」
「ラミアナが……!?」
兵士を襲った何者かの狙いは、ラミアナの遺体だったようだ。
イルドニア王国軍の兵士を襲い、ラミアナの遺体を奪う者、そんなことをするのは限られた者であろう。
「ガルス、ツヴァイ……」
そこでアンナは、魔族側の二人に目を向けた。
もしかしたら、魔族側で遺体を使う者がいるかもしれないと思ったからだ。
「……俺の知る限りでは、死者蘇生の類を使えるものなどいないな」
ガルスはそう言いながら、顎に手を当てる。
何かを考えているようだ。
「……死者蘇生か」
一方ツヴァイには、死者蘇生で思い当たることがあった。
なぜなら、彼自身が瀕死の状態であったプラチナスを回復させたからだ。
だが、あの時のプラチナスはまだ生きている状態であった。ラミアナが完全に死んでいたことから、同じ方法ではないのは確かだ。
「俺も、死者を完全に蘇らせる方法は知らん」
結論として、ツヴァイにもわからないことだった。
「一体何者が、どんな目的で……」
もしかしたら、魔族でも、知られていないようなものがあるのかもしれない。
そのまだ見ぬ陰謀は、アンナの心に不安を残すのだった。
◇
アンナが部屋で休んでいると、その部屋の戸が叩かれる音がした。
部屋にいたカルーナが、その戸を開ける。
「あ……」
「お疲れのところ、申し訳ありません。勇者様とお話したくて……」
そこには、イルドニア王国の王女であるセリトアであった。
「今、お姉ちゃんは疲れているので……」
流石に、戦いの後でこんな訪問をするのは、非常識である。
アンナもカルーナもそう思った。そのため、カルーナは追い返すことにしたのだ。
「いえ……これだけは話しておかなければならないんです」
しかし、セリトアの目は、今までと何かが違った。
「一体、何を話したいんですか?」
「勇者様の戦いに関することです……」
「……わかりました。入ってください」
カルーナは、その目を見てセリトアを通す。
その目は、それをするのに十分な何かがあったのだ。
セリトアとアンナ、さらにカルーナはテーブルを囲み、話すことにした。
「それで、話というのは……」
「勇者様……私は、ずっと勇者という存在に憧れていました」
アンナが聞くと、セリトアはゆっくりと話し始める。
「……ところで勇者様は、先代の勇者様がどうなったか、知っていますか?」
「……今の魔王との戦いで、亡くなったと聞いています」
「そうです。ですが、先代の勇者様は、その前に先代の魔王を倒しているんです」
セリトアが話しているのは、アンナの前に勇者だった者のことだ。
その人物のことは、アンナももちろん知っている。
「それは一体、何を……?」
「つまり、先代の勇者様は、戦いに勝ったのに、亡くなられたのです」
「……それは」
「今までの歴史もそうです。魔王を倒しても、新たな魔王が現れます。つまり、勇者の戦いは終わらないということです」
それは、勇者の残酷ともいえる運命の話であった。
終わらない戦い、それがセリトアの伝えたかったことなのだろう。
「その戦いに、どれだけの意味があるのでしょうか? 私にはとてもわかりません」
そう言って、セリトアは立ち上がった。これで話は終わりなのだろう。
「勇者様、死んではいけませんよ。可愛い妹さんが、悲しみますからね」
「え……? 私?」
「ふふ、ちょっと反応が可愛くて、からかっちゃいましたけど、あなたのお姉ちゃんをとったりはしませんよ」
「ええ!?」
セリトアは、最後にそんな発言をしていった。
カルーナが目を丸くしている内に、セリトアは去っていく。
その顔は、笑顔であった。
「気づかれていたみたいだね……」
「……うう、そうだったんだ……」
カルーナは、顔を赤くした。
まさか、からかわれていたとは思わず、自分の行動が恥ずかしくなったのだ。
「勇者の運命か……」
カルーナが照れている中、アンナは小声でそう呟く。
セリトアの言った通り、今の魔王を倒しても、次の魔王が現れるかもしれない。そうした場合、自分はどうするのか、それを考えなければならなかった。
「……」
アンナは、平和な暮らしを取り戻すために戦いを始めた。
その後、魔王軍に襲われた人々を知り、その人達を守りたいという使命感も芽生えたのだ。
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