赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~

木山楽斗

第37話 情報をまとめて

 カルーナは、色々な人から情報を集めていた。
 鎧魔団の情報も、ある程度集まっていた。

「鎧魔団は、リビングアーマーを中心とした集団か……」

 リビングアーマーは、生ける鎧であり、その防御力は脅威的であると、兵士達は言っていた。さらに、鎧の体故、肉体的な疲れや傷をものともしないらしい。

「厄介だよね……」

 防御力が高いというだけでも充分厄介だが、持久力まであり、しかも痛みで怯むこともないとなると、かなり戦いにくい相手となるだろう。

「鎧魔将ツヴァイ……」

 鎧魔将ツヴァイについては、女王が言っていた通りのこと以上はわからなかった。ただ、凄まじい力の持ち主であることは、兵士の語りから理解できた。


「鎧魔団……副団長」

 さらに、鎧魔団副団長の情報もわかった。その男は、白金の鎧のリビングアーマーで、プラチナスという名前らしい。剣の使い手であり、幾度となくエスラティオ王国兵士を苦しめたようだ。

「きっと、私の相手……」

 恐らく今回の流れは、剛魔団との戦いの流れと似たものになると、カルーナは予想していた。それなら、自分の相手はプラチナスになるはずだ。

「気を引き締めないと……」

 カルーナは決意を固めながら、情報を集めるのだった。





 カルーナは、鎧魔団の情報を集めると同時に、ティリアのことも調べていた。
 数十年前に赤子を連れてウィンダルス王国に行った女性はいないかなどを聞いていく内に、一人の女性が浮かび上がってきた。

「フォステアさんか……」

 どうやら、その女性がティリアの母親のようである。しかし、この女性は現在も行方不明になっており、謎はまだまだ残っていた。

「うーん、でも……」

 一つ気掛かりだったのが、ティリアの言っていた兄の存在だ。フォステアが女の子を連れていたという情報はあっても、男の子を連れていたという情報は出てこなかった。
 そもそも、二人子供を連れていたという話すら出てこない。少々、奇妙だとカルーナは感じていた。

「考えても、仕方ないか……」

 しかし、手がかりは手がかりのため、カルーナはとりあえず今日得た情報をティリアに伝えることにした。
 そう思っていると、王城の前まで戻って来ていた。考え事をしていたため、あまり気づくことができていなかったようだ。

「カルーナ様、お帰りですか?」
「あ、兵士さん。そうです」
「どうぞ」

 門番の兵士が、そう言ってカルーナを通してくれる。
 王城内に入ったカルーナは、まずティリアを探すことにした。自分の持っている情報を、伝えたかったからだ。
 そう思って城内を歩いていると、ティリアの姿が確認できた。

「カルーナさん、帰っていたんですね」
「はい、ティリアさんは今大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。そろそろ、部屋に戻ろうと思ってたところで……」
「そうなんですか。じゃあ、戻りながら話しましょうか。実は、ティリアさんの出自のことでわかったことがあって……」
「あ! それなら、実は私もわかったことがあるんです」

 そうして、二人は客室に向かいながら、お互いに持っている情報を交換し合った。

「なるほど、大体同じ情報ですね……」
「はい、でも、ありがとうございます。これで、少し進歩しました」
「それなら、よかったです」

 そう話していると、客室についた。戸を開けて中に入ると、すでにアンナが戻って来ていた。

「あ、二人ともお帰り」
「ただいま、お姉ちゃん」
「ただいま帰りました、アンナさん」

 アンナはベットに寝転がっており、リラックスした態勢で二人を迎えた。

「何か収穫はあった?」
「うん、こっちは色々、お姉ちゃんは?」
「私も一応あったかな」

 三人は、改めて情報交換を行うのだった。





 情報交換が終わった後、三人は入浴することにした。

「ふー、いい湯だね」
「うん、そうだね、お姉ちゃん」

 カルーナは、開き直ったため、アンナにぴったりとくっついていた。
 カルーナと反対側のアンナの隣には、少し離れてティリアがいた。

「一日の疲れが、とれていきますね」
「本当にね。まあ、私は本を読んでいただけだけど……」

 三人がそんな話をしていると、大浴場の戸が開かれる音が聞こえた。この時間なので、王城の誰かが入ってきたのだろう。そう思った三人はその人物を見て、目を丸くした。

「ほう、やはり、そなたらか」

 そこには、このエスラティオ王国の女王レミレアがいた。

「じょ、女王様!? どうして」

 アンナが困惑しながら聞いたが、レミレアは体を洗いながら、まったくなんともないような様子で答えた。

「うむ。風呂に入りたかったからな」
「いや、そうではなくて……」
「女同士なのだから、別によかろう。それとも、妾と入るのが不満か?」
「それは……」

 そう言われると、何も言い返すことができず、アンナは女王を受け入れるしかなかった。
 レミレアはゆっくりと、ティリアの隣に入っていった。

「その、王と一緒に入ってもいいんでしょうか?」
「王であろうと、人の子よ。一緒に風呂に入るくらい、何も問題はない」

 ティリアが聞くと、レミレアははっきりとそう言い放った。三人は少し迷ったが、女王がいいというのなら、いいのだと理解した。ただ、緊張してしまい、疲れをとることなどできそうになかった。

「む、緊張しておるのか。楽にしていいというのに……仕方ない」

 そんな三人の様子を理解したのか、レミレアは何か不敵な笑みを浮かべながら、ティリアとの距離をさらに詰めていた。

「な、なんです――きゃっ!」
「ふむ、やはり、いい肌をしておる」

 そしておもむろに、ティリアの体に指を走らせた。ティリアは、そのくすぐったさに思わず声をあげた。

「な、なんですか? 急に……」
「緊張しているようなので、ほぐしてやろうと思ってな。少し、緊張もとけたろう?」
「それは……そうかもしれませんが……」

 ティリアはいまいち納得がいかず、微妙な表情になった。それを見て、レミレアはにこにこと笑っていた。

「なんか、すごいや」
「うん、女王様って、意外と軽い人なんだね……」

 アンナとカルーナは、そんな女王の様子を見て、少し驚きつつも先程までの緊張がなくなっていることに気づいていた。それは、ティリアもそうだろう。
 レミレアは、三人の緊張を解くために、今のような行動をしたのだと推測できた。自身が、親しみやすい人物と理解させるために、軽いいたずらをしたのだろう。

「ふふ……」

 レミレアは、とても嬉しそうに笑っていた。





 それから三人は、レミレアと他愛ない話をして入浴を終えた。
 レミレアのあの行動のおかげで、三人はリラックスして入浴でき、疲れもとれた。
 そして、三人は寝るために、それぞれベットに入っていた。

「明日からは、どうしようか?」

 アンナは、カルーナの頭をなんとなく撫でながら、そう呟いた。

「私は、怪我をした人などの治療を続けようと思います。今日だけで、完全に治せる訳ではありませんし……」

 ティリアは、元々そう決めていたため、すぐに答えた。

「そっか、カルーナは?」
「私も、もうちょっと情報を集めようかな。あ、それと新しい杖も見ておきたいかも。お姉ちゃんは、どうするの?」

 アンナがカルーナに質問すると、答えとともに質問が返ってきた。アンナも、それは予測していたため、すぐに答えを出した。

「うん、私は、ちょっと修行しようと思うんだ。今日調べたことが実践できるのか、試してみたいと思うし」
「なるほど、それじゃあ、明日も別行動だね……」
「まあ、夜にはこうして集まるし、そんなに寂しがらないで」
「うん、そうだよね」

 カルーナが少し、寂しげな表情をしたので、アンナは優しい声色でそう言った。
 そんな二人をティリアは笑顔で見つめていた。

「さて、そろそろ寝よう」
「うん、お休みなさい、お姉ちゃん、ティリアさん」
「はい、お休みなさい、アンナさん、カルーナさん」
「お休み、二人とも……」

 そう言って、三人は眠りについた。

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