赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~
第34話 カルーナの悩み
アンナとカルーナ、ティリアの三人は無事に国境を越えていた。
関所に関しては、事前にウィンダルス王が話を通していたらしく、思った以上にすんなり通過できた。
エスラティオ王国の王都までの道のりは、まだまだ遠いため、今日は通過点にあった村で宿をとることになった。
「さて、今日はこの村に泊まるんだけど」
村について、アンナが御者席から降りようとしていると、カルーナが小さな声で話しかけてきた。
「カルーナ? どうかしたの?」
「あのね、お姉ちゃん。今日はそれぞれ別の部屋に泊まらない?」
「それは、またどうして?」
「だって、ティリアさんもいるし、同じ部屋って変じゃないかなって」
「そうかな?」
カルーナの言葉を聞いて、アンナは首を傾げた。そして、馬車の戸を開けて、中のティリアに話を振った。
「ねえ、ティリア、宿の部屋って、一つでいい?」
「え? あ、はい。一つで大丈夫です」
「そっか、ならそれでいいよね」
ティリアの了承が得られたので、カルーナに話しかけてみる。
「ま、まあいいけど……」
◇
結局三人は、同じ部屋に泊まることになった。
一度部屋に行った後、いつも通りお風呂に入る流れになった。
せっかくなので、三人で入浴することになったのだが、アンナはそこで違和感を覚えた。
「カルーナ?」
「何かな?」
「いや、なんかいつもより遠くない?」
「そう? いつも通りだと思うけど」
「いや……」
カルーナは明らかに嘘をついていた。いつもなら、肌と肌がくっつく程近寄ってくるが、今日は拳一つ分程離れていたのだ。カルーナとは反対の隣にいるティリアは、不思議そうな顔で聞いてきた。
「いつもは、そんなに近いんですか?」
「そ、そんなことないですよ」
ティリアの質問を、カルーナは何故か必死に誤魔化していた。
「カルーナ、一体どうしたの? いつもと違うよ?」
「お、お姉ちゃん」
「カルーナさん、いつもと違うんですか?」
「あ、いや、その……」
カルーナの顔が、どんどんと赤くなっていった。
そこで、アンナはやっと気づいた。
「カルーナ、もしかして恥ずかしがっているの?」
「うっ……」
「恥ずかしい……? カルーナさん、一体何が恥ずかしのですか?」
カルーナはどうやら、姉に甘えていることを他人に知られるのが嫌なようだった。
思い返してみれば、カルーナは変なところで恥ずかしがっていたりするのだ。アンナとしては、妹に甘えられるのは嬉しいし、別に他人から見ても、そこまで気になるようなことではないと思っている。
「ううっ……」
しかし、これ以上何か言っても、カルーナが可哀そうだと思い、アンナは何も言わないことにした。ティリアも、カルーナが顔を赤くして話せそうにないことを察してくれたのか、それ以上言及することはなかった。
◇
入浴を終え、部屋に戻った三人は寝ることにした。
アンナも予想していたことだが、カルーナはアンナと同じベットに入ろうとせず、別のベットで寝ようとしていた。
「カルーナ……」
「な、何かな? お姉ちゃん。私は、いつも通りだよ?」
「あ、あーあ、そう……」
アンナは、何故か少しだけ悲しくなってきた。恥ずかしがっているのはわかってるとはいえ、ここまで拒絶されるのは、普通に嫌だった。
そんな二人の様子を見て、何かを察したティリアがゆっくりと口を開いた。
「カルーナさん」
「は、はい?」
「もしかして、私がいるせいで、いつも通りではないのですか?」
「えっ……?」
ティリアが悲しそうな顔をしていたため、カルーナは困惑した。どうやらティリアは、カルーナの様子がおかしいのは自分のせいだと思っているらしい。
事実としては、その通りなのだが、それはカルーナの心情的問題であるため、ティリアに責任などあろうはずもない。
「……ティリアさん、ごめんなさい」
「カルーナさん?」
「私……実は、重度のお姉ちゃんっ子で、それを見られるのが嫌で、自分を偽っていました」
「そうだったんですか。それは……」
「けど、それはティリアさんのせいじゃないです。そう思わせてしまってすみません」
「い、いえ、そんな……カルーナさんは悪くないですよ。私の方こそ、変なことを気にして、申し訳ないです」
カルーナとティリアは、お互いに頭を下げて謝っていた。
「私、自分を偽ったりしません。ティリアさん、安心してください」
「カルーナさん……」
そして、お互いに笑顔になり、よくわからない和解をしていた。
カルーナは、それだけ言うと、アンナのベットに近づいてきた。
「カ、カルーナ?」
「お邪魔するね、お姉ちゃん」
「あ、どうぞ」
そう言って、カルーナはベットに入り、さらに距離を詰めてきた。
その光景を、ティリアは笑顔で見ていた。
「やっぱり、仲が良いんですね」
「そうなんです。とっても仲が良いんですよ」
最早、カルーナは開き直っていたが、この方が今後のためにもいいとアンナは感じていた。これからも、ティリアは同行するのだ。そのティリアに隠し続けるなど、できるはずはないのだ。
「まあ、カルーナがいつも通りで、私も嬉しいよ」
「お姉ちゃん……」
さらに単純に、カルーナが自分を求めてくれるのが嬉しかった。結局のところ、二人とも喧嘩したことの反動で、強くお互いを求めているのだった。
「いいですね、姉妹って。私は一人だったので、そういう存在は羨ましいです」
「あっ……!」
そこでアンナは、重要なことをティリアに言っていないことに気づいた。
複雑な事情のため、色々な人には姉妹ということにしていたが、自分達の本当の関係を、ティリアには話しておかなければならないと思った。これも同行する上で、隠しておくと気持ちよくないことだった。
少々、重い話になってしまうが、それは仕方ないだろう。
「ティリア……ちょっと、重要な話をしてもいいかな?」
「えっ?」
「あ、寝てるままでいいよ。重要って言っても、私達の中では、整理がついてることだから」
起き上がろうとするティリアを止めて、アンナは言葉を続けた。
「実は、私とカルーナは本当の姉妹じゃないんだ」
「えっ!?」
「あ、落ち着いて。簡単なことで、両親を亡くした私を、母の姉が引き取って、姉妹として育ったんです」
「……そう、だったんですか……」
「ティリアさん、そんなに重くならないでください。私達にとっては、もう乗り越えたことですから」
「カルーナさん……」
二人の気丈な態度を見て、ティリアも大丈夫だと納得してくれたようだった。
そして、意を決したような表情で、新たなことを話し始めた。
「……アンナさん、カルーナさん、私も少し話してもいいですか?」
「何かな、なんでも言ってよ」
「はい、大丈夫です」
どうやら、ティリアも話したいことがあるようだ。アンナとカルーナは、もちろん了承して続きを促した。
「実は、私には兄がいるようなんです」
「兄?」
「お兄さんが……ですか?」
ティリアの言葉に、二人は目を丸くした。
「はい、私を引き取ってくれたおばあさんが、話してくれたんです。私には、三つ年上の兄がいて、事情があって遠くで暮らしているようなんです。今となっては、知ることはできませんが、その手がかりも探したいと思っているんです」
ティリアが旅に出た理由は、それもあったようだ。どうやら、ティリアの事情は思ったよりも複雑だったようだ。
「そうだったんだ……それなら、私達も手伝うよ。ね、カルーナ」
「うん、もちろんだよ、お姉ちゃん」
「お二人とも……ありがとうございます」
二人がそう言うと、ティリアは嬉しそうに笑っていた。
そんな会話をしている内に、三人はだんだんと眠たくなってきていた。馬車での長時間の移動をしたのだから、それも当然だ。
「さてと、だんだんと時間も遅くなってきたし、そろそろ寝ようか」
「あ、はい。そうですね」
「お休み、カルーナ、ティリア」
「うん、お休み、お姉ちゃん。お休みなさい、ティリアさん」
「はい、お休みなさい、お二人とも……」
そう言って、三人は眠りにつくのだった。
関所に関しては、事前にウィンダルス王が話を通していたらしく、思った以上にすんなり通過できた。
エスラティオ王国の王都までの道のりは、まだまだ遠いため、今日は通過点にあった村で宿をとることになった。
「さて、今日はこの村に泊まるんだけど」
村について、アンナが御者席から降りようとしていると、カルーナが小さな声で話しかけてきた。
「カルーナ? どうかしたの?」
「あのね、お姉ちゃん。今日はそれぞれ別の部屋に泊まらない?」
「それは、またどうして?」
「だって、ティリアさんもいるし、同じ部屋って変じゃないかなって」
「そうかな?」
カルーナの言葉を聞いて、アンナは首を傾げた。そして、馬車の戸を開けて、中のティリアに話を振った。
「ねえ、ティリア、宿の部屋って、一つでいい?」
「え? あ、はい。一つで大丈夫です」
「そっか、ならそれでいいよね」
ティリアの了承が得られたので、カルーナに話しかけてみる。
「ま、まあいいけど……」
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結局三人は、同じ部屋に泊まることになった。
一度部屋に行った後、いつも通りお風呂に入る流れになった。
せっかくなので、三人で入浴することになったのだが、アンナはそこで違和感を覚えた。
「カルーナ?」
「何かな?」
「いや、なんかいつもより遠くない?」
「そう? いつも通りだと思うけど」
「いや……」
カルーナは明らかに嘘をついていた。いつもなら、肌と肌がくっつく程近寄ってくるが、今日は拳一つ分程離れていたのだ。カルーナとは反対の隣にいるティリアは、不思議そうな顔で聞いてきた。
「いつもは、そんなに近いんですか?」
「そ、そんなことないですよ」
ティリアの質問を、カルーナは何故か必死に誤魔化していた。
「カルーナ、一体どうしたの? いつもと違うよ?」
「お、お姉ちゃん」
「カルーナさん、いつもと違うんですか?」
「あ、いや、その……」
カルーナの顔が、どんどんと赤くなっていった。
そこで、アンナはやっと気づいた。
「カルーナ、もしかして恥ずかしがっているの?」
「うっ……」
「恥ずかしい……? カルーナさん、一体何が恥ずかしのですか?」
カルーナはどうやら、姉に甘えていることを他人に知られるのが嫌なようだった。
思い返してみれば、カルーナは変なところで恥ずかしがっていたりするのだ。アンナとしては、妹に甘えられるのは嬉しいし、別に他人から見ても、そこまで気になるようなことではないと思っている。
「ううっ……」
しかし、これ以上何か言っても、カルーナが可哀そうだと思い、アンナは何も言わないことにした。ティリアも、カルーナが顔を赤くして話せそうにないことを察してくれたのか、それ以上言及することはなかった。
◇
入浴を終え、部屋に戻った三人は寝ることにした。
アンナも予想していたことだが、カルーナはアンナと同じベットに入ろうとせず、別のベットで寝ようとしていた。
「カルーナ……」
「な、何かな? お姉ちゃん。私は、いつも通りだよ?」
「あ、あーあ、そう……」
アンナは、何故か少しだけ悲しくなってきた。恥ずかしがっているのはわかってるとはいえ、ここまで拒絶されるのは、普通に嫌だった。
そんな二人の様子を見て、何かを察したティリアがゆっくりと口を開いた。
「カルーナさん」
「は、はい?」
「もしかして、私がいるせいで、いつも通りではないのですか?」
「えっ……?」
ティリアが悲しそうな顔をしていたため、カルーナは困惑した。どうやらティリアは、カルーナの様子がおかしいのは自分のせいだと思っているらしい。
事実としては、その通りなのだが、それはカルーナの心情的問題であるため、ティリアに責任などあろうはずもない。
「……ティリアさん、ごめんなさい」
「カルーナさん?」
「私……実は、重度のお姉ちゃんっ子で、それを見られるのが嫌で、自分を偽っていました」
「そうだったんですか。それは……」
「けど、それはティリアさんのせいじゃないです。そう思わせてしまってすみません」
「い、いえ、そんな……カルーナさんは悪くないですよ。私の方こそ、変なことを気にして、申し訳ないです」
カルーナとティリアは、お互いに頭を下げて謝っていた。
「私、自分を偽ったりしません。ティリアさん、安心してください」
「カルーナさん……」
そして、お互いに笑顔になり、よくわからない和解をしていた。
カルーナは、それだけ言うと、アンナのベットに近づいてきた。
「カ、カルーナ?」
「お邪魔するね、お姉ちゃん」
「あ、どうぞ」
そう言って、カルーナはベットに入り、さらに距離を詰めてきた。
その光景を、ティリアは笑顔で見ていた。
「やっぱり、仲が良いんですね」
「そうなんです。とっても仲が良いんですよ」
最早、カルーナは開き直っていたが、この方が今後のためにもいいとアンナは感じていた。これからも、ティリアは同行するのだ。そのティリアに隠し続けるなど、できるはずはないのだ。
「まあ、カルーナがいつも通りで、私も嬉しいよ」
「お姉ちゃん……」
さらに単純に、カルーナが自分を求めてくれるのが嬉しかった。結局のところ、二人とも喧嘩したことの反動で、強くお互いを求めているのだった。
「いいですね、姉妹って。私は一人だったので、そういう存在は羨ましいです」
「あっ……!」
そこでアンナは、重要なことをティリアに言っていないことに気づいた。
複雑な事情のため、色々な人には姉妹ということにしていたが、自分達の本当の関係を、ティリアには話しておかなければならないと思った。これも同行する上で、隠しておくと気持ちよくないことだった。
少々、重い話になってしまうが、それは仕方ないだろう。
「ティリア……ちょっと、重要な話をしてもいいかな?」
「えっ?」
「あ、寝てるままでいいよ。重要って言っても、私達の中では、整理がついてることだから」
起き上がろうとするティリアを止めて、アンナは言葉を続けた。
「実は、私とカルーナは本当の姉妹じゃないんだ」
「えっ!?」
「あ、落ち着いて。簡単なことで、両親を亡くした私を、母の姉が引き取って、姉妹として育ったんです」
「……そう、だったんですか……」
「ティリアさん、そんなに重くならないでください。私達にとっては、もう乗り越えたことですから」
「カルーナさん……」
二人の気丈な態度を見て、ティリアも大丈夫だと納得してくれたようだった。
そして、意を決したような表情で、新たなことを話し始めた。
「……アンナさん、カルーナさん、私も少し話してもいいですか?」
「何かな、なんでも言ってよ」
「はい、大丈夫です」
どうやら、ティリアも話したいことがあるようだ。アンナとカルーナは、もちろん了承して続きを促した。
「実は、私には兄がいるようなんです」
「兄?」
「お兄さんが……ですか?」
ティリアの言葉に、二人は目を丸くした。
「はい、私を引き取ってくれたおばあさんが、話してくれたんです。私には、三つ年上の兄がいて、事情があって遠くで暮らしているようなんです。今となっては、知ることはできませんが、その手がかりも探したいと思っているんです」
ティリアが旅に出た理由は、それもあったようだ。どうやら、ティリアの事情は思ったよりも複雑だったようだ。
「そうだったんだ……それなら、私達も手伝うよ。ね、カルーナ」
「うん、もちろんだよ、お姉ちゃん」
「お二人とも……ありがとうございます」
二人がそう言うと、ティリアは嬉しそうに笑っていた。
そんな会話をしている内に、三人はだんだんと眠たくなってきていた。馬車での長時間の移動をしたのだから、それも当然だ。
「さてと、だんだんと時間も遅くなってきたし、そろそろ寝ようか」
「あ、はい。そうですね」
「お休み、カルーナ、ティリア」
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