これって悪役令嬢?!私の生き方貫きます!

ノベルバユーザー417511

さ迷う魂8

 ルーファスが自分の席に戻ると、
まりが帰り仕度をしている。


「ルーファス君、終わった?」
「ああ、今終わった所だ」
「本当は、美香と買い物付き合う
予定だったんだけど、今日はいいんだって。
帰ろっか」
「そうだな」
二人は会社を出て、駅へ向かう。


「なんだ?この乗り物は」
「えっ、まさか電車に乗った事ないの?
車で送り迎えだもんね。
とんだお坊ちゃんだな。まさか、
どこかの王子様が、人生経験ってやつじゃ
ないでしょうね?」
「まあな、そんなもんかもな」
「えっ!まじですか?」
「冗談だ」
「ルーファス君も、冗談言うんだ」


電車がホームに入ってくる。
帰宅時間という事もあり、電車は人で
ぱんぱんだ。
「おい、これに乗るのか?」
「そうだよ。王子様も慣れないとねっ」
二人は、電車に乗り込むと、後ろからの人に
押され、正面を向いて、密着してしまう。
「まり、離れるなよ」
「う、うん。あっ、また、まりって呼んだ」
「二人の時は、いいだろ」
「別に、いいけど....」
なぜだか、ルーファスとは初対面なのに
許してしまう自分がいる事に不思議に思う。


あまりの密着に、まりは自分の心臓が聞こえてしまうんじゃないかと、心配になる。


おかしいな?イケメンなんて興味ないはず
なんだけど....気のせい、気のせい。


会社から二駅なので直ぐまりの自宅の
駅へと到着する。
「明日から、少し時間かかるけど
歩いて帰ってもいいね....」
「ああ、それもいいな」
「今日の晩御飯はカレーなんだ。
もう買い物もしてあるから」
「カレーとは何だ」
「はは。もう慣れましたよ。ルーファス君の
何だこれはには。食べれば分かりますよ」
「まりが作るのか?」
「当たり前でしょ。他に誰が作るってのよ」
「確かに、そうだな。楽しみだ」


まりの家へ着くと、玄関に黒い猫が
ちょこんと座って待っている。


「ルーファス君が、飼っている猫って
あの子?なに、犬?」
「いや、猫だ。ジルっていう」
まりが急いで駆け寄って、
「ジル君~。お利口ですね~」と頭を撫でる。
「にゃんっ」
「やだっ、可愛い~」
ルーファスはジルを睨む。
ジルは、抱っこされながらルーファスに
べーっと舌を出している。
「ジルめ....後で覚えてろよ.....」


二人はドアを開け家に入る。
「ただいま~。って誰もいないんだけどね。
なんかクセでね。さっ、入って」
まりは、ルーファスに使ってない
2階の部屋に案内する。
「ちょっと、埃っぽいから、
換気しておいてね。
ベッドはそのまま使えるから。着替えは?」
「なんとかなる」
「まさか、その鞄に入ってるの?」
「まあ、そんな所だ」
「そうなの?じゃあ着替えたら、
下に来て。ご飯の用意してるから」
「ああ、分かった」
まりはキッチンへと向かう。


ルーファスとジルは部屋へ入ると
「ルーファス、遅いよ。待ちくたびれたよ~。
まりって、こっちでも案外可愛いよね」
「案外は、余計だ。全部可愛いに
決まってるだろ。俺は、まりもマリーも
外見で決めた訳では無いんだ」
「ふ~ん。つまんないの~」
「つまない。とはなんだ」
「あっ、そうだ。着替え出さなくちゃだね」
「お前は、本当に人の話しを聞かないな」
「うんっ!トト様にもよく言われる!」
ルーファスは言葉に詰まる。それと同時に
トトを不憫に思う。


ジルが一回転をすると、
着替えと、日用品が出てくる。
「さっ、ルーファスこれに着替えて!」
シンプルなグレーの上下スエットを手に取る。
「凄いな、この柔らい素材」
「そうだね、大体、皆家でこれ着てるはず」
ルーファスはスエットに着替える。
何でも、高級に見えてしまうから不思議だ。


ジルとキッチンへ向かうと
スパイシーないい香りがしてくる。
「着替えたの?じゃあ、テーブルに座って
待ってて。もうすぐ出来るから。
私も着替えてくるから」
まりは2階の部屋に向かう。


「ルーファス、なんか新婚さん見たいで
いいよね!」
「なんだ、こっちの新婚とは、こういう感じ
なのか?」
「そうだよ。いいよね~?」
「確かに、悪くないな」


まりが着替えて降りてくる。
ピンクの上下モコモコした
部屋着をタボつかせながら着ている。


「な、なんだ。その破壊力の凄まじい服は」
「えっ、こんなの普通だよ。暖かいんだよ」
「そ、そうか....」
「カレーも出来たみたいだし、用意するから。
ちょっと待っててね。
今日は特別です。明日からは、
ルーファス君にも手伝って貰うから」
「ああ、勿論だ」


二人は向き合いながら、カレーを食べる。
「あっそうだ。明日、飲み会なんだ。
帰り遅いから適当にご飯食べてて」
「なんだ、飲み会とは?」
「お酒を飲んで、皆と交流する会かな?」
「それには、桜井は来るのか?」
「うん、来ると思うよ」
「そうか....」
ルーファスが真剣な顔になり、
何か考えているようだ。


ご飯も食べ終わり、二人で並んで
ソファーに座る。
「テレビでも見る?まさか、テレビは
知ってるよね」
「あ、ああ、勿論だ」
「ちょうど、金さんやってるみたい」
ルーファスが食い入るようにテレビを見る。
「何か分からんが、この者達の格好は
変わってるな」
「そうだよね。これはね、時代劇って言って
昔の日本を舞台にしている、悪を成敗する
物語りなの。この金さん、かっこいいよね~」
「好みなのか?」
「うん。大好きなんだ」
「それは、初耳だな。この者のどこが
いいのだ」
「どこって、強い所?」
「そうか、まり、すまん....」
「な、何、謝ってんの?ルーファス君だって
大切な人が出来たら守るでしょ?」
「勿論だっ!」
ルーファスはマリーに伝えるかのように
強く答える。
「さすがっ!男はそうでなくちゃね。
テレビも終わったし、そろそろ部屋戻ろっか」
「そうだな」
二人は、それぞれの部屋へ戻る。


ルーファスは部屋へ戻り
「桜井か、あいつまりの事.....」
色々な事を考えていると、気がつけば、
時計を見ると12時を回っている。


「一旦帰るとするか。ジル、帰るぞ」
「う~ん。僕眠いから、一人で帰って....」
「ったく、お前はどうなっているのだっ」
「明日はついてくから.....」
ジルは丸くなって、動こうとしない。


ルーファスは諦めて、一人で
あちらの世界に向かったのであった。



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