リアル乙女ゲームは、悪役さえも付いていない、ただの令嬢だった。~40オーバーおばさんの乙女ゲーム初デビュー~

ノベルバユーザー417511

始まり

 桜は仕事からくたびれて帰ると、ヘトヘトになりながら家のドアを開ける。部屋に入るなり直ぐに、コンビニで買った惣菜とビールを取り出し、プシュっとビールのプルタブを開ける。
「ぷは~。やっぱり、1日の締めはこれに限るよね~」最近どんどん独り言が多くなる。
「今日は本当、しんどかったわ。お風呂明日の朝でいいや」と言いながら、二本目のビールを開ける。そしてテレビをつけると、
「知ってる、知ってる!あれでしょ?あれ」手を叩きながらテレビと愉快に話しをしている。桜のおばさん化は止まらない。程よく酔いが回ってくると、段々と睡魔が襲って来たようで、着替えだけ済ませ、化粧も落とさずベッドへと潜り込む。
「1日位、化粧落とさなくてもさ、死にゃしないわ」
最近は、眠る前の合言葉のようになっている。桜はベッドに入ると、5秒もしない内に眠りに落ちる。


すると、夢だろうか、突然
「あなたは、Aを選びますか?それともBを選びますか?」
「えっ、何?何の質問なの?」
10・9・8とカウントダウンが始まる。訳も分からず桜は
「Aで!」と勢いにまかせて答える。するとその声は、
「本当にAで宜しいですね?」
そう言われると人間は弱いのである。
「じゃ、じゃあBかな....」
「では、Bへ行ってらっしゃい~」軽快な声と共に桜は目を開ける。辺りを見渡すと、全く見覚えの無い部屋が目の前に広がる。
「ん?ここどこですか?随分リアルだな....」
じっくり部屋を観察すると、中世のヨーロッパを思わせるアンティークな家具が並んでいる。はっ、となり自分の服装を見る。繊細なレースを使用している、とても仕立ての良いドレスを着ていている。
「このアンティークなレース査定に出したら高額なんだろうな。欲しい....」どこまでもおばあちゃんである。
コンコンコン__
「アンリお嬢様、ランバード王子がおいでになりました」
王子?まっいいか、夢だもんね。なりきってやるわ。
「ええ、どうぞ。お入りになって下さい」
ランバードが部屋に入ってくる。
んっ?どこかで見たな?確か....思い出す間も無く
「アンリ、悪いが婚約は破棄してくれ」
婚約してるって設定ね。すると頭の中で、
A・断る。B・何も言わない。
また?悩むな....カウントダウンが始まる。
「Bで!」おもっいきり叫ぶ。ランバードは、顔をしかめて
「アンリ、なんだBとは?」
「聞こえてんだ....」心の中でB・何も言わないを選ぶ。頭の中でBがチカチカと光る。
「何も言わないって事は、やましい事があるんだな?」
えっ?そうなるの?ランバードは腰に差してある剣を引き抜くと、アンリをバッサリと斬りかかる。
「お前の罪は確認済みだ。断罪してもいいと許可が出てる」
桜は、そんな、殺生な~と思い、その場で倒れる。ドクドクと心臓が波打つ。斬られるってこんな痛いの?
血が海のように広がる。そして桜は意識を手放した。


目を開けると、暗闇の中、目の前にGAME OVER の文字が浮かび上がる。
「殺されたのね。それでゲームオーバーか、納得。でも本気で痛かったんだけど....」
するとまた声が聞こえる。
「残念ながら、不正解です」
「いや、あの場合どっちも不正解じゃない?」冷静にやり取りしてる。だってこれ夢だもんね。
「いいえ、夢ではありません」心も読むのか。
「どういう事なの?だって私普通に家で寝たんだけど?」
「残念ですが、心筋梗塞で無くなりました」
「なんてこった。突然死で死ぬとは....」
ニュースが頭をよぎる。
「死後一週間たち、マンションの一室で女性の変死体を発見。第一発見者は管理人でした。最近は孤独死する女性が増えています。」
なんてニュースが流れるのかな.....
「もう、宜しいですか?」我に返る。
「あ、はい。いいですよ」
「では、初めからやり直します」
「ちょっと待って。まずこの世界は何なのか教えくれない?」
「まさか、知らなかったのですか?」
「もちろん、知りません」
「ですが、あたの鞄の中から、やり込んだ、~何度でもプリンセス、あなたに会いたくて~が入ってましたが....」
「あ~、あれ、生徒から没収したのよ。間違えて持って来ちゃったみたいね。悪い事したな」
「生徒とは?」
「私、高校の先生してるのよ。してた。の方がいいか」そう、桜は高校の現代国語の教師をしていたのだ。


金○先生に憧れて教師になった。無我無中で働いて気が付いたら40オーバー。結婚歴なし。行き遅れもいいところ。婚活してた時期もあったけど、今さら結婚なんてあきらめている。女盛りはもう随分前に過ぎていて、いわゆる一般的に言う、おばさんである。
別に恋愛経験が無いわけでも無いし、普通の恋愛は一通りしてきたつもりだ。


もうすぐ、授業の始まる時間だ。教室に近づくと、廊下から生徒達の声が聞こえる。
「なんプリって超おもしろくない?」
「めっちゃ、面白い!超キュンキュンするよね。私、俺様のランバード王子がいい!」
「私は、ヤンデレなケイン王子が萌える!」
チャイムの鳴る音がする。ガラガラと教室の扉を開けるが生徒達は、私が入ってきた事に気が付いていないようだ。ゲーム片手に大興奮している。
「は~い。皆、席着いて。今手に持っている物、持ってきなさ~い。先生が預かっておきます」
女子生徒は、頬をぷっと膨らませて
「絶対返してよね。先生」
「帰り取に来なさい」
「は~い」
しぶしぶ女子生徒は了承して席に着く。そのゲームのタイトルを見ると『何度でもプリンセス、あなたに会いたくて』
なんか朝の情報番組でやってたな。ものすごく人気があるんだって。そのキャラクター達が超絶イケメンだとかなんとか。何が楽しんだろうね。とりあえず、机にしまう。授業も終わりそのゲームを持って職員室に戻る。自分の席に戻ると、ゲームを手に取り、あらすじを読む。
『ブルーラグーンには4人の王子がおり、皆どこか、心に痛みを持っていた。しかし、主人公が現れる事によって、王子達の心は次第に癒されるように。そして深く関わる事により深く結ばれ、王子様と二人、ブルーラグーンは幸せな国へと変わっていく。さて、あなたはどの王子を選ぶ?』
「ふ~ん。そんな話し」中を開け説明書を見る。そして登場人物を見る。
『どうして欲しいか言ってみろ....俺様王子ランバード、あなたに手錠をかけて誰にも渡さない....ヤンデレ王子ケイン、俺の事好きなんだろ....クール王子ラルフ、お前といると苦しくなるだろ...ツンデレ王子アレックそして、儚げたが芯の強いとても綺麗な主人公セフィ。恋のライバルとして、悪役令嬢アイリ』
メインの登場人物の名前を読み上げる。
「私はね....って、高校生のやるゲームでしょうが」
いつもの癖で自分の鞄にそのゲームをしまってしまう。終了のチャイムが鳴り、生徒を待っているがなかなか現れない。
「忘れてんだな。私もくたびれたから、帰るか」と言って桜は職員室を出て、家へ帰るのだった。

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