月に水まんじゅう

萩原 歓

エピローグ

「贅沢だよなあー」
 月姫が満足そうに言う。
「そう?」
「だってさ。俺、毎日外食ってことじゃん。しかも三ツ星のな」
「おおげさだなあー」
「ほんとだって」


 二人は長い遠距離恋愛の末、結婚した。
そして半年が過ぎ星奈は自分の身に起こった変化を話す。


「あのね。正樹。わたしね」
「ん?なんだあ?」
「えっとね。妊娠したみたい」
「えっ!?まじか!」
「う、うん。今日病院行ってきた」
「ほんとかよー。子供かあ」
 月姫は箸を空中に止めたまま、驚いている。


「あの。嫌じゃない?」
「嫌なわけなじゃん。どっち?男?女?」
「えっ、やだぁ。まだまだわかんないよ」
「そ、そうなのか。え?俺、父親になんの?」
「ん。そういうことだね」
「えーっと。ここに三人って手狭だよな。えーっとアパート検索、いや家買うかな。まてよ?」
 驚愕の中に喜びが感じられて星奈は、ほっとした。


 少年少女時代を過ごし、青年期を経て、妻と夫になり、これから母と父になるだ。(姫はいつもあたしに新しい世界をくれる)
 星奈は月姫に手を引かれ、今度はどんな世界へ誘ってくれるのだろうと、まだ平坦な腹をさすり期待に胸を膨らませた。

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