グラデーション

萩原 歓

エピローグ

 ☆乙女☆の希望で、挙式は神前で執り行った。
正樹の身近な知り合いは皆、教会式だったので意外性に驚いたが、
☆乙女☆の白無垢姿を見たときに、神前で良かったと思った。


 綿帽子から覗く、白い肌に赤い紅は正樹の目をくぎ付けにする。
「きれいだ……」
 思わずつぶやくと☆乙女☆はさっと頬を染めた。


 緊張する式の中、男の嗚咽が聞こえてくる。
☆乙女☆の父親がむせび泣いているのだ。
その声を聴きながら、正樹は彼女を再度、特別で大事な人だと認識する。
白い指に指輪をはめたとき、この手を一生繋いでいこうと心に誓った。


 聴き慣れない美しい雅楽の音が、二人をまるで異世界にいざなうようだ。
(一緒に行こう。いつまでもどこまでも)
 初めてゲートを飛んだ時の様に、新しい世界へ出発する高揚感が正樹を満たしていた。

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