未来飛行

ほたる

三日月家の面々

皐月はヘアーバンドを取り店内に戻って来ると、カウンターの端に座りコーヒーを煎れていた椿に注文をした。


「椿にぃ、ミルクティー飲みたい。」


「じゃ、このコーヒーを3番テーブルに持って行って来て。」



注文を受けるから手伝えと言う訳か。



コーヒーカップが乗ったトレーを受け取り、3番テーブルに運んだ。




「ホットコーヒーになります。砂糖とミルクはご自由にお使い下さい。ご注文は以上になります。」



「…先程は、ありがとうございました。
…前髪を下ろすと随分雰囲気が変わるんですね。」



コーヒーを受け取ったのは、裏メニューを注文した女性だった。


軽く会釈を返して、カウンターに戻った。



「はい。ミルクティー。ちょうど飲み頃だよ。」


椿が、程よく湯気が立ったティーカップを手渡した。



小皿に入れられたスコーンを頬張りながら、甘いミルクティーを啜る。


皐月は基本甘党だ。

特にストロベリー系のスイーツが好みだった。





落ち着いた曲のBGMが流れる店内でお茶をしていると、3人組の女子高生が来店した。



途端に皐月は慌てて、
「…今日は、もう注文入れないでって菖蒲にぃに伝えといて!俺は家に帰るから。」


近くに居た楓にそう言うと、そそくさと休憩室に行ってしまった。



「楓?…皐月何て言ってた?…何かヤバいもんでも視えたのか?」


皐月の慌てぶりを不思議そうに聞いてきた椿。


楓も何があったのかいまいち理解出来ずにいた。



とりあえず菖蒲が注文を伝えに来たタイミングで、皐月が言っていた事を伝えた。










PM6時


カフェ『三日月』は閉店を迎えた。



店内には4、5人程の客がレジに並び支払いを待っていた。



水蓮がレジ打ちをしている間に、菖蒲が店内のテーブルを拭き掃除をして行く。



キッチンでも双子がバタバタと食器類を洗い片付けをしていた。




ランチ時のハヤシライスの残りをタッパーに移し替え鍋も洗う。


このハヤシライスは、兄弟達の夕飯になるのだ。





7時前店内の照明が切られ、戸締りを確認した4人は自宅である2階に上がった。





「おかえりー。」



扉に背を向けテレビを見ていた皐月が、兄達の帰りに気づいて振り返った。



その口にはアイスの棒が咥えてあり、

「また夕飯前にアイスなんか食べて…。」

菖蒲が呆れたように呟いた。



それに皐月がテヘッと笑って誤魔化すのもいつもの事。




「あれ?…コレ俺のパーカーじゃん。」


皐月が着ていたパーカーは、楓の物だったらしく不機嫌な顔をした。



「そうなの?…寒かったからソファーにあったの借りた。」


悪びれる様子もなく飄々としている皐月。


「寒かったからって、アイス食うからだろ!」



楓が食いつく勢いで、怒鳴り言い争いが始まろうとしていたが、




「はいはい。そこまで!…夕飯食べるよ?」


菖蒲の鶴の一声で5兄弟はテーブルに着いた。




兄弟5人でテーブルを囲んで、


『いただきます!!』




「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く