未来飛行

ほたる

カフェ『三日月』

巷で話題のイケメン兄弟が営むカフェ『三日月』。


平日にも関わらず夕方頃は、学校や仕事帰りの若い女性客で店内は賑わう。


一日の疲れを甘い絶品スイーツとイケメン従業員で癒す為だ。





「いらっしゃいませ。2名様ですね。」


三日月のオーナー兼ホール担当の長男 菖蒲あやめは、長身で少し癖のある髪の毛を緩いセンター分けで決めていた。

穏やかな笑顔と物腰柔らか話し方は女性客を魅了していた。




「シフォンケーキのオレンジピューレ添えを1つと、紅茶ムースを2つお願いします。」


キッチンには二人の従業員が、忙しなく入る注文に対応していた。



双子の兄で三男の椿つばきと弟で四男のかえで


二卵性双生児なだけあって容姿は差程似ていないが、息はピッタリで阿吽あうんの呼吸とはまさにこの事。


三男の椿は、アッシュグレーのストレートヘアーに整った目鼻立ちは、クールな雰囲気を漂わせていた。


四男の楓は、アッシュベージュのゆるふわパーマで、笑った時に見える八重歯はやんちゃなイメージを漂わせていた。






「お会計ですね。…………円になります。」


レジとホール等をオールマイティにこなす次男の水蓮すいれんは、人並み外れた霊感を持っていた。


黒髪に揉み上げを出した無造作ヘアーと切れ長の目は、少し独特な不思議な雰囲気を漂わせていた。






「ぁの…。
……未来飛行…をお願い…できますか?」

少し緊張した面持ちで、裏メニューの注文をして来た1人の女性。



注文を受けた水蓮は、

「少々お待ち下さい。確認して来ますね…。」と一言告げ下がった。




従業員の休憩室で寛いでいた、五男の皐月の元へ注文が入った事を伝えに行った。


水蓮は、裏メニューを注文した女性客の元へ戻り、店外にある別の入口から入れる小部屋へ案内する。




三日月家の兄弟で末っ子の皐月さつきは、生まれながらに不思議な力を持っていた。



その力は未来飛行と言い、他人の未来を視る事視せるが出来る。

未来飛行の力を依頼者に使うと、未来で必ず起こる事を脳の中で視せる事が出来る。




いつ裏メニューを提供しているのかは定かではない上に、その存在は噂程度なので直接従業員に尋ねる人は少なかった。




それに皐月は無意識の内に他人の未来を視てしまう事があり、外では前髪を鼻先まで伸ばし人との関わりを自ら避けていた。


他人の不幸な未来は尚更視たくないものだからだ。







コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品