太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜
65,洞窟内探検⑩(感情)
ん、待てよ。
腑に落ちない点が一つある。
ルイフによってか、既に腕が治っている幼女を見る。
ムスメ? ダレガ? ダレノ?
(ああ、気になるかい。)
「当たり前だろ! というか、まず服を着させてあげて……」
幼いとはいえ、女の子の裸をまじまじと見るのは気が引ける。さっきまでは必死だったから気にする余裕はなかったけど。
─アレン、そういう趣味が─
ないから
断じて違うから
(ここでずっと暮らしているからね。服は邪魔だったのさ。さて、説明してやる前に、お前たちの仲間も呼ぼうかね。)
あ、そうだ。
タマがみんなを上手く説得してくれているはず。
ほんと、タマには助けられてばっかだ。
(そのうち来るさ。ちゃんと状況も教えておいた。それで、まずは服をと。)
無数の輝く糸が幼女を取り巻いき、徐々に形成される。
(こんなもんかね。)
おー、見事な早業!
出来上がったのは動きやすさを重視した服……服だよな? いや、服と言うより下着?
要所しか隠してない。
別にまだ幼いし、いい……のか?
(それだと街に出る時に困りますよ。)
(そうかい。ならこれでどうだい。)
次に全身を隠すローブが出来た。
わー、ローブ8人目だー。この子はちっさいけど。
(白は目立つかねぇ。)
(どうでしょう。)
ローブの色が白から黒、黒から黄色、黄色から緑、緑から青と色々変わる。
(ま、これでいいか。)
最終的に暗赤色で止まった。
まあ、マシなのか? 分からんな。
(私の糸だからね。絹より軽いし、鉄並に丈夫だよ。)
なんか、それを聞くと羨ましいな。
僕って剣はこの輝があるけど、防具ってないからなぁ。
(……アレン様も欲しいのですか?)
(そうなのかい?)
少し物欲しそうな顔をしていたからか、ルイフに勘づかれた。
ふ、流石だな。……正直に言おう。
「僕って特に防具的なのないからね。この服も、別に何か特別な力があるわけでもないしさ」
(ふむ、なら作ってやろうか。あー、でも要望は受け付けないよ。今着ているやつに似せるからね。)
おぉ! 言ってみるもんだな!
触手の上にみるみる、僕の着ているものと同じような服が仕上がっていく。
(さあどうだい?)
「流石は【王種】!」
触手から服を受け取り、着てみる。
確かに軽い。質感も良いし、剣でつついてみても破れる様子はない。
え、これをくれるの? まじ?
もう、騙されてたとかそんなの水に流そう。
君は良い奴だ。
(喜んでくれたようで何よりさ。ちょうど彼らも着いたようだね。)
見るとタマやルドルフ達がものすごい勢いで走ってきていた。
ん、ルドルフ? それ以上はぶつかっ……!!?
ゴンッ
「い、痛い……」
ルドルフに頭突きをされ、痛みで涙が出てきた。
うぅ……あ、避ければいいじゃんとか言わないで。
「……俺を差し置いてお前!」
あ、ルドルフ闘うつもりだったんだっけ?
めんごめんごー。でも実際やったら死ぬぜ?
僕も危なかったから……自滅だけど。
「パーンクァフル様、アレンは合格ですか?」
(なんだい、魔法猫。お前は知ってたのかい。)
「違和感がありましたからね」
(ふん。一応合格さね。)
「そうですか! やったなアレン!」
タマは怯むことなく、スタスタとパーンクァフルの目の前まで歩いていき会話している。
うん、タマとルドルフは割と普通?
ジャスミンとローブ7人は、パーンクァフルの姿を見て固まっている。威圧は消してあるけれど、やはり【王種】なのだろう。
あ、あいつがいない!
「あれ!? ルイフは!?」
「なっ!? ルイフ様がいたのか!?」
「……ルイフ?」
いつの間にかルイフの姿が見えなくなっていた。
いつ現れたのかも分からなかったし……
はあ、僕もまだまだだな。
(太陽の申し子。それで、聞きたいことは何だったかね。)
「あ、ごめん。えーと、あの子は?」
仮面をかぶったかのように無表情の幼女を指す。
いい出来だろって言ってた意味も気になる。
(さっきも言った通り、私の娘だ。)
「うん?」
(まあ、実の娘ではないがね。私を含め、【王種】は稀にだが、弟子のようなものをつくるのさ。それは眷属に似て眷属ではない。俗に【継承者】と言われてるね。だからこの子は、私の【継承者】って言うのが正しい。本来、私は【継承者】をつくらないし、つくったこともなかった。だが、前に私の可愛い眷属の1匹が捨てられてたこの子を拾ってきてねぇ。食ってもよかったんだが、何故かふと【継承者】にしようって案が思い浮かんだんだよ。)
「なるほど……?」
【継承者】って言うのがいて、元々パーンクァフルはそれをつくりたいとは思ってなかったと。だけど、この子を眷属が連れてきた時に、何故か【継承者】にしようと思ったのか。
……何故?
パーンクァフルは続ける。
(理由は分からない。【王種】としての勘なのかね。長い間眠っていた竜が目を覚ましたんだ。何かが起きる、その時のためなのかもしれないね。恐らく、他の【王種】も何かしらやってるんじゃないか? 私のように【継承者】をつくってたりとか。)
「じゃあルイフも?」
(あの鳥はお前が【継承者】みたいなもんだろう。)
……いつの間に。
「【継承者】の役目、は……?」
(役目かい……役目ねぇ。【継承者】って言うんだから【王種】の後釜みたいなもんじゃないかね。私も詳しくは知らない。黒亀なら知ってるかもしれないね。)
「ん、この子が感情が希薄なのってじゃあ」
(私が感情を管理する柱だからだね。だが、別に感情自体が無いわけじゃないよ。抑え込むように躾しただけさ。ただ、この子はまだ幼いからねぇ。このままここにいると本当に感情が無くなっちまうかもしれないんだよ。)
「酷いな……」
(それでいい機会だし、お前にこの子を少しの間だけ預けようと思っててね。お前が外の世界を見せてあげれば、感情をもう少し表現してくれるだろう。その後、また感情制御の練習だね。)
腑に落ちない点が一つある。
ルイフによってか、既に腕が治っている幼女を見る。
ムスメ? ダレガ? ダレノ?
(ああ、気になるかい。)
「当たり前だろ! というか、まず服を着させてあげて……」
幼いとはいえ、女の子の裸をまじまじと見るのは気が引ける。さっきまでは必死だったから気にする余裕はなかったけど。
─アレン、そういう趣味が─
ないから
断じて違うから
(ここでずっと暮らしているからね。服は邪魔だったのさ。さて、説明してやる前に、お前たちの仲間も呼ぼうかね。)
あ、そうだ。
タマがみんなを上手く説得してくれているはず。
ほんと、タマには助けられてばっかだ。
(そのうち来るさ。ちゃんと状況も教えておいた。それで、まずは服をと。)
無数の輝く糸が幼女を取り巻いき、徐々に形成される。
(こんなもんかね。)
おー、見事な早業!
出来上がったのは動きやすさを重視した服……服だよな? いや、服と言うより下着?
要所しか隠してない。
別にまだ幼いし、いい……のか?
(それだと街に出る時に困りますよ。)
(そうかい。ならこれでどうだい。)
次に全身を隠すローブが出来た。
わー、ローブ8人目だー。この子はちっさいけど。
(白は目立つかねぇ。)
(どうでしょう。)
ローブの色が白から黒、黒から黄色、黄色から緑、緑から青と色々変わる。
(ま、これでいいか。)
最終的に暗赤色で止まった。
まあ、マシなのか? 分からんな。
(私の糸だからね。絹より軽いし、鉄並に丈夫だよ。)
なんか、それを聞くと羨ましいな。
僕って剣はこの輝があるけど、防具ってないからなぁ。
(……アレン様も欲しいのですか?)
(そうなのかい?)
少し物欲しそうな顔をしていたからか、ルイフに勘づかれた。
ふ、流石だな。……正直に言おう。
「僕って特に防具的なのないからね。この服も、別に何か特別な力があるわけでもないしさ」
(ふむ、なら作ってやろうか。あー、でも要望は受け付けないよ。今着ているやつに似せるからね。)
おぉ! 言ってみるもんだな!
触手の上にみるみる、僕の着ているものと同じような服が仕上がっていく。
(さあどうだい?)
「流石は【王種】!」
触手から服を受け取り、着てみる。
確かに軽い。質感も良いし、剣でつついてみても破れる様子はない。
え、これをくれるの? まじ?
もう、騙されてたとかそんなの水に流そう。
君は良い奴だ。
(喜んでくれたようで何よりさ。ちょうど彼らも着いたようだね。)
見るとタマやルドルフ達がものすごい勢いで走ってきていた。
ん、ルドルフ? それ以上はぶつかっ……!!?
ゴンッ
「い、痛い……」
ルドルフに頭突きをされ、痛みで涙が出てきた。
うぅ……あ、避ければいいじゃんとか言わないで。
「……俺を差し置いてお前!」
あ、ルドルフ闘うつもりだったんだっけ?
めんごめんごー。でも実際やったら死ぬぜ?
僕も危なかったから……自滅だけど。
「パーンクァフル様、アレンは合格ですか?」
(なんだい、魔法猫。お前は知ってたのかい。)
「違和感がありましたからね」
(ふん。一応合格さね。)
「そうですか! やったなアレン!」
タマは怯むことなく、スタスタとパーンクァフルの目の前まで歩いていき会話している。
うん、タマとルドルフは割と普通?
ジャスミンとローブ7人は、パーンクァフルの姿を見て固まっている。威圧は消してあるけれど、やはり【王種】なのだろう。
あ、あいつがいない!
「あれ!? ルイフは!?」
「なっ!? ルイフ様がいたのか!?」
「……ルイフ?」
いつの間にかルイフの姿が見えなくなっていた。
いつ現れたのかも分からなかったし……
はあ、僕もまだまだだな。
(太陽の申し子。それで、聞きたいことは何だったかね。)
「あ、ごめん。えーと、あの子は?」
仮面をかぶったかのように無表情の幼女を指す。
いい出来だろって言ってた意味も気になる。
(さっきも言った通り、私の娘だ。)
「うん?」
(まあ、実の娘ではないがね。私を含め、【王種】は稀にだが、弟子のようなものをつくるのさ。それは眷属に似て眷属ではない。俗に【継承者】と言われてるね。だからこの子は、私の【継承者】って言うのが正しい。本来、私は【継承者】をつくらないし、つくったこともなかった。だが、前に私の可愛い眷属の1匹が捨てられてたこの子を拾ってきてねぇ。食ってもよかったんだが、何故かふと【継承者】にしようって案が思い浮かんだんだよ。)
「なるほど……?」
【継承者】って言うのがいて、元々パーンクァフルはそれをつくりたいとは思ってなかったと。だけど、この子を眷属が連れてきた時に、何故か【継承者】にしようと思ったのか。
……何故?
パーンクァフルは続ける。
(理由は分からない。【王種】としての勘なのかね。長い間眠っていた竜が目を覚ましたんだ。何かが起きる、その時のためなのかもしれないね。恐らく、他の【王種】も何かしらやってるんじゃないか? 私のように【継承者】をつくってたりとか。)
「じゃあルイフも?」
(あの鳥はお前が【継承者】みたいなもんだろう。)
……いつの間に。
「【継承者】の役目、は……?」
(役目かい……役目ねぇ。【継承者】って言うんだから【王種】の後釜みたいなもんじゃないかね。私も詳しくは知らない。黒亀なら知ってるかもしれないね。)
「ん、この子が感情が希薄なのってじゃあ」
(私が感情を管理する柱だからだね。だが、別に感情自体が無いわけじゃないよ。抑え込むように躾しただけさ。ただ、この子はまだ幼いからねぇ。このままここにいると本当に感情が無くなっちまうかもしれないんだよ。)
「酷いな……」
(それでいい機会だし、お前にこの子を少しの間だけ預けようと思っててね。お前が外の世界を見せてあげれば、感情をもう少し表現してくれるだろう。その後、また感情制御の練習だね。)
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
55
-
-
549
-
-
17
-
-
75
-
-
147
-
-
4503
-
-
221
-
-
4
-
-
34
コメント