太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜
62,洞窟内探検⑦(信頼と期待)
ルビアスが合計6匹のクァクァロードを相手取っている。残りは僕かな?
糸についてはもう大丈夫。燃やし尽くした。
蜘蛛の最大の武器を、鎌とこいつらの身体能力ですっかり忘れていた。だから簡単に捕まってしまった。あの糸は補助魔法で強化した僕を完璧に封じこんでいた。ほんと細心の注意を払っていかないと。
3匹のクァクァロードと対峙する。
鎌を打ち鳴らし威嚇してきた。
さて、どうするかな。
「おっと」
2匹が糸を直接飛ばしてきた。慌てず宙へ逃げる。
へー、そんなことも出来るのか。
あれ、あと1匹どこいっ……上か!
見上げると既に鎌を振り上げているクァクァロードがいた。あ、これはヤバイかも!
ガキンッ
輝で咄嗟にガードするが、空中で衝撃を受けたことで地面にそのまま落ち……!?
地面が僅かにちらついたのが見えた。糸だ!
「強風動!」
お馴染みの強風動で落下位置を変更し着地する。こいつらなかなかやるな。
最初に狩ったやつも土壇場で相討ちを狙ってきたし、知能もだいぶ高いようだ。
モタモタしてたら危険か……?
─『氷の礫よ、敵に降り注げ』─
突然空中に巨大な氷の礫が30個ばかり出現した。やったのは僕ではない。ルビアスだ。
無慈悲な力の塊が、クァクァロード達に……魔蟲達に降り注ぐ。
速く動けるとはいえ、ルビアスよりも鈍いクァクァロード達の体の大きさは単なるいい的でしかない。
一撃必殺。
巨大な氷に体を貫かれ、彼らは息絶える。そのはずだった。
魔蟲達にぶつかる寸前、地面から突如生えた白い柱のようなものに氷の塊が破壊されて霧散する。
(アハハハハ! いやぁたまげたよ。ルイフのやつも短い期間でよくここまで鍛えたもんだ。)
薄気味悪い笑い声、何かを引きずるような声と呼べない声。こいつがやったのか……
(パーンクァフル。)
(私の可愛い子供たちを沢山失いたくないからね。太陽の申し子、合格だ。直々に私が戦ってやる。さ、子供たち、彼らを案内してあげな。)
それを合図に、魔蟲達が洞窟の奥へとひいていく。白い柱のようななにかも、また地面に消えた。
……とりあえずついて行けばいいのか?
─アレン、乗って─
わかった
ルビアスが頭を下げて乗りやすくしてくれる。
定位置に座り、後ろを振り返るとみんなが困惑していた。行こう!とか言おうとしたんだけど。
これは……もしかして、
(タマ、聞こえてた?)
(ん、なにがだ? というか、なんであいつら逃げてったんだ?)
やっぱりそうだ。
あいつは今回僕にだけ念話を飛ばしてきた。つまりは。
(どうやらパーンクァフルは僕とルビアスだけ、をご指名みたいだね。)
(……ああ、なるほど。)
それだけでタマには伝わったみたい。
(だから、行ってくるよ。)
(こいつらは任せろ。大丈夫だ、お前なら出来る。あの方に見せてやれ。お前の覚悟、思いをな!)
(ありがとう。)
ルビアス、行ってくれ!
─わかった─
タマが信頼してくれている。だったら僕も応えなくちゃいけない!
そしてこんな形になるとは思っていなかったけど、ようやくパーンクァフルとの対面だ。
ルビアスがゆっくりとスピードを落としていき、止まる。
……真っ暗だ。何も見えない。
ここが最奥部か? 案外小s……その時、声が響いた。
(よく来たね、偉大なる竜王の忘れ形見そして、選ばれた太陽の申し子。待っていた。待ちわびていた。)
ぼう、という音を立てて壁につけられている無数の燭台に火が灯っていき、周りが照らされていく。
そして、声の主。12柱ある【王種】の1柱であり魔蟲の王……純白の支配者が姿を現す。
大きな白い蜘蛛。それが純白の支配者の正体。名前の通り全身は純白の毛に覆われており、頭の中心にある紅い水晶を菱形の紅い目が囲んでいる。体はルビアスよりもやや大きく、八本ある脚はそれぞれ先端に小さな鎌がついている。
姿だけ見れば崇めたくなるような神聖な存在だ。しかし、実際の彼女を知ればそんなこと思わないだろう。人という種族を見下し、死を弄ぶ輩を誰が崇拝するものか!
ルビアスからは降りず、剣を抜き構える。名を小さく呟き、補助魔法を自分とルビアスに掛け直して準備をすます。
(ああ、久しぶりだ。こんなにも興奮しているのは。胸が高鳴る。期待しているよ、お前たち。)
期待なんてしてくれなくていい。
僕はお前と遊びに来たわけじゃない。
お前に、命の重さを、大切さを、尊さを、教えるために戦うんだ!
(アハハ、さてじゃあ楽しい楽しい殺し合いの始まりさ! いいよ、かかってきな。)
挑発にルビアスが吠え、突進する。最大限の威圧を込めた咆哮は、クァクァロードさえも恐怖させた。
(なんて馬鹿正直な。)
呆れたような声とともにルビアスの突進は避けられることも無く止められる。しかも数本の蜘蛛の糸によって。
─この程度で……私を見縊るな!─
(おおん?)
ルビアスの体が緑の炎に包まれていく。ちょうど輝と同じだ。熱くはない、寧ろ力の循環が生まれ、ルビアスと僕の力が上限なく更に増え、練度が高まっていく。
ブチブチという音を立てて糸がちぎれ、そのままルビアスがパーンクァフルの頭を殴る。
(……ほう。)
殴られたパーンクァフルは飄々とした様子だ。やはり【王種】ということか。
(よし、いいことを思いついた。)
「させるか!」
何をするのかはわからないが、やらせない方がいいに決まっている!
『炎の矢よ、敵を射抜け!』
周りの被害を考えず、僕の今操作出来る限りの量と質の矢を作り、パーンクァフルへと放つ!
(ふん。)
が、ルビアスの時と同様。地面や壁から生えた複数の白い柱によって阻まれた。一体この柱の正体はなんなんだ!?
いや、柱と言うよりかは触手に近いな。形も先端につれて尖っている。だが、やはり実態はわからない。
(どうだい? いい出来だろ。これで傍から見ればちゃんと2対2だ。)
パーンクァフルがそう言って見せてきたのは、幼い少女だった。
糸についてはもう大丈夫。燃やし尽くした。
蜘蛛の最大の武器を、鎌とこいつらの身体能力ですっかり忘れていた。だから簡単に捕まってしまった。あの糸は補助魔法で強化した僕を完璧に封じこんでいた。ほんと細心の注意を払っていかないと。
3匹のクァクァロードと対峙する。
鎌を打ち鳴らし威嚇してきた。
さて、どうするかな。
「おっと」
2匹が糸を直接飛ばしてきた。慌てず宙へ逃げる。
へー、そんなことも出来るのか。
あれ、あと1匹どこいっ……上か!
見上げると既に鎌を振り上げているクァクァロードがいた。あ、これはヤバイかも!
ガキンッ
輝で咄嗟にガードするが、空中で衝撃を受けたことで地面にそのまま落ち……!?
地面が僅かにちらついたのが見えた。糸だ!
「強風動!」
お馴染みの強風動で落下位置を変更し着地する。こいつらなかなかやるな。
最初に狩ったやつも土壇場で相討ちを狙ってきたし、知能もだいぶ高いようだ。
モタモタしてたら危険か……?
─『氷の礫よ、敵に降り注げ』─
突然空中に巨大な氷の礫が30個ばかり出現した。やったのは僕ではない。ルビアスだ。
無慈悲な力の塊が、クァクァロード達に……魔蟲達に降り注ぐ。
速く動けるとはいえ、ルビアスよりも鈍いクァクァロード達の体の大きさは単なるいい的でしかない。
一撃必殺。
巨大な氷に体を貫かれ、彼らは息絶える。そのはずだった。
魔蟲達にぶつかる寸前、地面から突如生えた白い柱のようなものに氷の塊が破壊されて霧散する。
(アハハハハ! いやぁたまげたよ。ルイフのやつも短い期間でよくここまで鍛えたもんだ。)
薄気味悪い笑い声、何かを引きずるような声と呼べない声。こいつがやったのか……
(パーンクァフル。)
(私の可愛い子供たちを沢山失いたくないからね。太陽の申し子、合格だ。直々に私が戦ってやる。さ、子供たち、彼らを案内してあげな。)
それを合図に、魔蟲達が洞窟の奥へとひいていく。白い柱のようななにかも、また地面に消えた。
……とりあえずついて行けばいいのか?
─アレン、乗って─
わかった
ルビアスが頭を下げて乗りやすくしてくれる。
定位置に座り、後ろを振り返るとみんなが困惑していた。行こう!とか言おうとしたんだけど。
これは……もしかして、
(タマ、聞こえてた?)
(ん、なにがだ? というか、なんであいつら逃げてったんだ?)
やっぱりそうだ。
あいつは今回僕にだけ念話を飛ばしてきた。つまりは。
(どうやらパーンクァフルは僕とルビアスだけ、をご指名みたいだね。)
(……ああ、なるほど。)
それだけでタマには伝わったみたい。
(だから、行ってくるよ。)
(こいつらは任せろ。大丈夫だ、お前なら出来る。あの方に見せてやれ。お前の覚悟、思いをな!)
(ありがとう。)
ルビアス、行ってくれ!
─わかった─
タマが信頼してくれている。だったら僕も応えなくちゃいけない!
そしてこんな形になるとは思っていなかったけど、ようやくパーンクァフルとの対面だ。
ルビアスがゆっくりとスピードを落としていき、止まる。
……真っ暗だ。何も見えない。
ここが最奥部か? 案外小s……その時、声が響いた。
(よく来たね、偉大なる竜王の忘れ形見そして、選ばれた太陽の申し子。待っていた。待ちわびていた。)
ぼう、という音を立てて壁につけられている無数の燭台に火が灯っていき、周りが照らされていく。
そして、声の主。12柱ある【王種】の1柱であり魔蟲の王……純白の支配者が姿を現す。
大きな白い蜘蛛。それが純白の支配者の正体。名前の通り全身は純白の毛に覆われており、頭の中心にある紅い水晶を菱形の紅い目が囲んでいる。体はルビアスよりもやや大きく、八本ある脚はそれぞれ先端に小さな鎌がついている。
姿だけ見れば崇めたくなるような神聖な存在だ。しかし、実際の彼女を知ればそんなこと思わないだろう。人という種族を見下し、死を弄ぶ輩を誰が崇拝するものか!
ルビアスからは降りず、剣を抜き構える。名を小さく呟き、補助魔法を自分とルビアスに掛け直して準備をすます。
(ああ、久しぶりだ。こんなにも興奮しているのは。胸が高鳴る。期待しているよ、お前たち。)
期待なんてしてくれなくていい。
僕はお前と遊びに来たわけじゃない。
お前に、命の重さを、大切さを、尊さを、教えるために戦うんだ!
(アハハ、さてじゃあ楽しい楽しい殺し合いの始まりさ! いいよ、かかってきな。)
挑発にルビアスが吠え、突進する。最大限の威圧を込めた咆哮は、クァクァロードさえも恐怖させた。
(なんて馬鹿正直な。)
呆れたような声とともにルビアスの突進は避けられることも無く止められる。しかも数本の蜘蛛の糸によって。
─この程度で……私を見縊るな!─
(おおん?)
ルビアスの体が緑の炎に包まれていく。ちょうど輝と同じだ。熱くはない、寧ろ力の循環が生まれ、ルビアスと僕の力が上限なく更に増え、練度が高まっていく。
ブチブチという音を立てて糸がちぎれ、そのままルビアスがパーンクァフルの頭を殴る。
(……ほう。)
殴られたパーンクァフルは飄々とした様子だ。やはり【王種】ということか。
(よし、いいことを思いついた。)
「させるか!」
何をするのかはわからないが、やらせない方がいいに決まっている!
『炎の矢よ、敵を射抜け!』
周りの被害を考えず、僕の今操作出来る限りの量と質の矢を作り、パーンクァフルへと放つ!
(ふん。)
が、ルビアスの時と同様。地面や壁から生えた複数の白い柱によって阻まれた。一体この柱の正体はなんなんだ!?
いや、柱と言うよりかは触手に近いな。形も先端につれて尖っている。だが、やはり実態はわからない。
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