太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜

日孁

53,オーセンちゃん

 別に話すのが苦手とかではない。
 ただ年上ってのが苦手なんだ。
 なのに、今いる人たち全員僕より年上!
 緊張しないわけがない!
 ドロフィンさん? あれは別枠。
 年上だけど、親戚のおじさんに近いしね。

「えっと、アレンって言いまふッ!」

 噛んだ。だが考えるな。やりすごせ!

「冒険者のランクはEで14歳です」
「今噛んd……」
「剣と魔法両方いけます!」

 噛んでない。噛んでない。噛んでない。
 よし、多分ごまかせた。

「……こいつはランクこそDだが……今日カードを作ったばっかだ……実力は……俺が保証する」
「へえ、そうなのか坊主。じゃないな、アレン」
「い、いやぁ、ドウナンデショー? あはは」

 乾いた笑いが出る。
 多分だが、傍から見て今の僕はガチガチだろう。
 リアが見たらなんて言うか。というか鼻で笑われそう。

「そんな緊張すんなって、オレ達もう仲間なんだしよ! もっと気楽に話していいんだぜ? 敬語なんていらねえよ」
「ああ、敬語なんて使わなくていい。仲間なんだから」

 この人たち優しい! でも仲間の敷居がちょっと低い!
 嬉しいんだけどね。

「じゃ、じゃあそうさせてもらうよ」
「おう!」「よろしくな」

 そこでふと、タマが思い出したようにルドルフに尋ねる。

「ルドルフお前、なんか龍人族の女とか連れてなかったか? あいつらはいいのか?」
「……あれは勝手についてきてるだけだ」
「へえ、ルドルフお前ませてるなぁ!」
「……お前よりかは年上だ……」
「そうだったな! オレにも紹介してくれよ!」
「……別に構わんが」
「おいルドルフ、その女は連れていくのか?」
「そうだ。俺もそこが気になってた」

 タマとジクシオはあの龍人族の人を連れて行くのかが疑問らしい。
 実際僕も気になってた。
 ルドルフとかララさん程じゃないにしてもかなりやり手そうだった。少なくとも絡んできたあのアホそうな男たちより。

「……そのつもりだ……今まではあいつと潜っていた」
「なのについてきてるねぇ、実際のところが気になるな!」
「…………」

 ラウルの言葉にルドルフが顔を顰める。
 ルドルフはラウルのこと苦手なのかな?

「あら、よかったわ。女が私だけだとむさ苦しいもの」

 アンナの発言。
 確かに女性がアンナ1人だけだとむさ苦しいな。

「あ、えーとアンナ。ちなみにこいつだけは女だぞ」
「え?」

 ジクシオが7人の中の1人を指す。
 指された1人は前に出て直角にお辞儀した。

「オーセンと言います」
「あら? ほんとね。ジクシオあなた、女性にもこんな可愛げのないローブを着させて……」
「ち、ちげぇよ! 別に俺は好きにしていいって」
「そうです。私が自分の意思で着ているだけで」

 アンナが急にグイグイきたな。
 というか言われないと気づかなかったな。
 他の6人より体つきは優しかったけど、魔法使いならそんなもんかとか思ってたし。髪も短く顔も中性的だったから。
 ついでに全員の見た目一応言っておこうか。
 1人はオーセンとは逆にめちゃくちゃ筋肉質なごっつい人。ラウルよりね。本当に魔法使い?
 1人は綺麗な顔立ちの人で、眼鏡をかけてる。知的な感じ、本たくさん読んでるのかな? 気が合いそうだ。
 1人は髪の長い人で、この人が女の人だと思ってた。中性的なのもオーセンと一緒。
 1人は目が充血したかのように赤い。犬歯が長くて獰猛な顔つきだね。ルドルフより吸血鬼ヴァンパイア族っぽい。
 残り2人はフードを被っていて分からないな。
 因みに髪色は統一してみんな黒!
 つまりジクシオだけが赤だね。

「へえー、こんな可愛い顔しているのに勿体ない」
「有難うございます」
「ねえ、ちょっといいかしら? ジクシオ、この子借りるわね」
「え、借りるって」
「さ、オーセンちゃん来なさい」

 バタン

 アンナがオーセンを連れて出て行ってしまった。
 僕を含めみんな固まっている。

「遺伝か」

 タマの独り言が妙に響いた。

「……出来れば明日から潜りたい……各々準備してくれ」
「何日ぐらいいるつもりなんだ? それによって変わるだろ」
「……3日間を目処にする」
「分かった。なら明日の午後だな。買い込んでくる。ここで集合でいいのか?」
「…………ああ」

 てなわけで明日から洞窟探検だ!
 ひゃっほー!

「浮かれるな」
「うす」

─────────────────────────

「アンナ様!? 一体これは!?」
「ふふふふふ、いいから私に身を委ねておくのよ!」

─────────────────────────

 タマに揺すられて目を覚ます。
 もう朝みたい。
 光が入ってこないから分からなかった。
 昨日はあの後、ルドルフだけ出て行って少しみんなと雑談してた。あまり会話の内容は分からなかったけど、まあまあ楽しかった。
 少し経ってからアンナとオーセンが帰ってきて、、

「か、かわ……」「「「「おぉ!」」」」「「……」」
「オーセンちゃん! オレの彼女になってよ」

 って具合にジクシオとローブ6人とラウルが反応してたね。沈黙してるのはフード被ってた2人。合わせろよ!と思ったのは言うまでもない。
 オーセンがオーセンちゃん・・・になってたからね。タマも結構本気で驚いてた。アンナの意外な特技?にだと思うけど。
 アンナも美人だけどね。ガサツだったりするし。
 あ、言ったらだめだぞ?
 僕はそれよりもお風呂というものに驚いた。体を洗うことはあるけど、川とかが普通だったし。あんな温かい水とか、体を洗うヌルヌルするやつとか初めてだったから。なんというか、サッパリしたね!

「よし、起きたな。買い出しに行くぞ」
「あー、洞窟探検の」
「探検というか……まあいいか。ほら、さっさと準備しろ」
「ういー」

 顔を洗い、直ぐに外に出る。さっちゃんことサルパさんはいなかった。いいのかね? 留守にして。ありがたいけど。

「うわー、やっぱ人多いね」
「ま、連合都市国家……超巨大都市国家なんて言われてるだけはあるわね」
「だな。えーと、商店街はあっちだったな」

 昨日は夕方あたりに入国して冒険者ギルドにずっといたからね。多いは多いけど、今ほどじゃなかった。こんだけいるとすぐに見失いそうだ。
 そう思いタマとアンナに急いでついていく。

「そうだ。アレンにアンナ、お前達冒険者ギルドでなにか依頼受けてこい。少しはヘビィ大洞窟での依頼もあるだろ。どうせ行くんだ、お金も貰えるし一矢二魔物! 人のためになってんだから三魔物かもな」
「いいけど、でも僕道わからないよ?」

 まずここもどこかよくわかってない。
 飛んできたしね! あ、どうやって誤魔化したか聞いてないや。

「人に聞けば……って教えてくれるかわからんか。田舎とかだといいんだがなあ。仕方ない、地図を作ってやるからそれを使え」
「流石だねぇ!」
「いや、私知ってるわよ?」

 地図があればさすがに分かる!と思う……
 早速作ってもらおうとしたが、アンナがそれを遮る。というか今、魔法で作ろうとした? 紙じゃなくて。

「そうなのか?」
「当然よ!」
「なら大丈夫か。任せるな」
「ええ、いいものを選んでくるわ」

 僕の出番は無さそうだ。
 そして地図の作り方が少し気になった。

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