太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜

日孁

51,要件

「……では次は俺の要件だ」
「あー、オレ達出てった方がいいか?」
「…………構わない……お前たちにも頼もうと思ってた」
「そうか」

 僕とタマだけだと思ったらどうやら彼らにも関わることらしい。なんという偶然!
 ん? いや、まさか。

「……強いからな」
「???」

 はい、やっぱそういうことですか!
 全員と闘いたいのか! この戦闘狂!

「……お前たちには俺と一緒に洞窟に潜って欲しい」
「洞窟って言うと、ヘビィ大洞窟か?」
「……そうだ」

 ほーら、やっぱr……?
 洞窟? しかもヘビィ大洞窟?
 ちょうど僕達の目的地だ。

「それはまたどうして」

 タマがルドルフに問いを投げかける。
 僕も気になってた。
 別に洞窟に潜るのは魔物を狩るだったり鉱石を取る為に、冒険者なら有り得ることだろう。
 けど、ルドルフはS+ランク。かつ不老不死の吸血鬼ヴァンパイア
 別にこんな大勢、しかも実力者ばっかで挑む必要なんてあるのか?という疑問だ。

 自分で言うのはなんだけど、僕もそれなりに強いと思う。ルドルフと闘えば恐らく、勝てないだろうけどいいところまでは行けると思うし、負けることはないと思う。なにせ、僕にはルビアスがいるからね。
 ルビアスがやられてしまってはどうしようもないけれど……そんなことはないだろうし、させない。
 ついでタマ。タマは、まあ強いのはわかっているからいいや。アンナも、弱くはない。8人の男の冒険者相手に戦えてたし、押してたらしいし。最後は負けてるけど☆
 そのアンナを負かしたのがこの青年……そういえば名前まだ聞いてないや……はドラゴンを使役、じゃないね契りを交わしている龍契者だし。
 アンナに負けたとはいえ連携が完璧だったっていう7人とそのリーダーのジクシオ。弱かったらアンナも焦って変な事しなかったし。つまりはそこそこ強いはずだ。
 このメンバーで行かなければいけない理由。誰かに断られる可能性があるからってのもあるだろうけど。

「……洞窟の主に会うためだ」
「主ってお前、【王種】か!」
「おい、そもそもいるのか?」

 ジクシオと青年が驚いの声を上げる。といっても落ち着いてるな。
 僕ら?
 僕達は……ねぇ?
 もともとそのつもりだったし、別に今更驚くことじゃない。

「……いるはずだ」
「会って、どうするんだ? 少年」

 タマが核心を突いた質問をする。
 僕達でさえ会えるのか分からない相手。会って何をするつもりなんだ。闘うのかな?

「…………闘ってみたい」

 闘うんだ。

「流石にそれは……無理だろ」

 ジクシオの冷静な判断。
 無理に決まっている。ルイフという【王種】を間近で見てきたから分かる。勝てるわけが無い。

「でも、まぁこんだけ強いやつがいれば何とかなるかもしれないけどな」

 青年の発言。
 舐めすぎている。
 伝承でしか語られないような【王種】は実際の強さなんて分からない。計り知れない。
 ただ人知の及ばない相手だからこその【王種】であり、危険度10と言われている。
 あ、でも前ルイフに「天王ならお前に勝てるのか?」って聞いたら「どうでしょう」なんて濁されたな! もしや!

「いや、やめておけ」
「…………」

 タマが制止する。
 この中で1番【王種】を理解していて、かつ冷静なのはタマだ。
 アンナ? 僕やローブの人達と一緒にボケーッとしてますが?

「なぜお前が【王種】と闘いたいのか分からないが、お前が闘っているつもりでも【王種】にとっちゃ遊びでしかない。命が無駄になる。悪いことは言わない、やめておけ」
「……だが」
「どうしても行くってんなら、闘おうとするのだけは無しだな。別に闘うだけが目的じゃないんだろ?」
「……お前は」

 違うの? 戦闘狂だから世界最強と呼ばれる【王種】と闘って最期を終えたい、みたいなのかと。

「……目的はない……生きる目的を探すために旅している」
「生きる目的を探す、か」

 訳ありがとう。
 生きる目的を探す……分からなくもないな。
 それがなきゃ生きている実感が湧かないし、活きている意味がない。
 それを探す旅、なんだか少し面白そうだね。

「結論のところあれだ。その生きる目的ってのを知りたくて【王種】に会いにいくと。そんで闘えばなにかヒントが得られるんじゃないか。死んでもそれはそれで本望だと」
「…………そうだ」

 タマがスラスラと、訳しているように見えて実際は心の中読んでいるんだろうなー。
 ルドルフが「俺のことをこんなに理解してくれる奴なんてこいつが初めてだ」みたいなちょっとキラキラしてるし。

「なんていうか、戦闘狂。あ、いやバトル馬鹿?」
「奇遇だな。オレも同じこと思ったぞ」

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