太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜

日孁

44.冒険者ギルド

「でっけぇ!!! ここが冒険者ギルドか!」
「おう! にしてもやっぱ、この大きさをビビるよな」


 冒険者ギルド……建物の外観はとにかくでかい!
 僕の家がどれだけ入るんだ? 分からないな。外周だけでも1キロ以上はあるぞ? 高さも相当……なんだここ!
 煉瓦と木材と……よく分からない素材を使っている。なんだあれ、透けてるけど、膜があるよな。


「まあ宿とか解体場とか色々兼用してるからな。私立のギルドと違って冒険者ギルドは国立だからそれなりに融通されてんだよ。扱う人員も他とは桁違いだしよ」
「にしても限度ってのが……」
「とにかく中に入って早く登録するぞ」


 僕の手を引っ掴んでタマがズカズカと中へ入っていく。
 もう/// 強引なんだから♡


 ……はい、すみません。
 目の前の透けた膜なのかなんなのか分からないとこを通る……動いた。どういう原理だ? 魔法なのか?
 中に入るとやっぱり広い。人もそれなりにいる。 というかめっちゃいる。服装、というか装備はバラバラで、だいたいみんな腰に短刀とか大剣を背負っている。たまに杖とかハープ?を持った人もいるね。何も持ってない人は……まさか拳か?


「この時間は任務報告で人が多くなるんだよなぁ。受付はたしか、あっちだな」


 ボケーッとしてるとタマにまた手を引っ張られる。向かってる方を見るにあそこか。
 なっがーい机を挟んで向こう側に人が数名。
 あれを基準にわけてるのかな。種族は全体的に統一感がない。本で見た天翼族ハーピィとか小人とか、アンナと同じ魔人族とか。もちろん人族もいるけどね。しかし、なんでこんなに色んなのがいるんだ?
 宿の時タマに聞くか。覚えていたら。


「冒険者登録をしたいんだが」
「はい。身分証の登録ですね。ではこちらの番号札を持ってお待ちください。順番が来ましたらお呼びします」


 と言って木の板を渡してきた。
 なるほど。人が空いてたのはこれが理由か!


「これだと、そんなに待たなくても良さそうだな。あそこが空いてるし座っとくか」


 タマの指を指した方に長椅子があった。なんでみんな座らないんだ?と、疑問に思いつつ腰をかける。
 何故か周りの人達の表情が曇る。というか怒ってない?


「おい! おめぇら!! そこは俺たちがある人のために取ってた席だ! さっさとどけ!」
「あーわかった。悪かったな、知らなくてよ」


 怖い怖い……
 でも取っておくのなら自分たちで座ってればいいのに。


「……おい、待ちな。知らないとはいえやったことにはちげえねえんだ。だからよお、相応の金を払ってもらおうか」


 なるほど。これがしたくて座ってなかったのか!
 なんていうか、頭良さそうで悪いよな!
 流石にこれにはタマもキレ……?


「ああそうだな。ほらよ」


 タマがなにかが入った袋をそいつらに投げつけ、翻って離れていく。
 袋の中ジャリジャリいってない?


「う、うぉっ!!!」


 中身を見た男は嬉しそうだ。ピョンピョンしてる。
 まじかよタマさん……ほら、周りも引いてるって。


(……いいかアレン。こんなとこで面倒起こしたら外にしょっぴかれるぞ。こういうことは穏便にだ)
(いやまあ分かるけど……)


 逆に目立ってはいるよね。


(ある人って誰だろ?)
(さあな、あんなやつを部下においてんだ。ろくな奴じゃないだろ。)
(たしかにそうだね。)


 念話便利だ。
 どんだけでも悪口言えちゃうね!
 言われてたらショックだけど。


「「「「ルドルフさん、任務ご苦労様です!」」」」


 どうやらあの人とやらが帰ってきたみたい。


(いいか、目線合わせないようにな。また絡まれるぞ。)
(うす。)


「……暑苦しい」
「いえ、そんなこと言わずに! ささ、席もご用意しておきましたので」
「……」


 後ろだけのやり取りだから見えないけど、会話だけは聞いている。今の様子だと仲良くはない?
 というか、あの男が一方的に媚び売ってる感じなのかな?


「ちょっとルドルフ! 置いてかないでよ!」
「……お前が勝手についてきてるだけだろ」


 1人増えた!?


 ただ、妙なのはルドルフと呼ばれた方の気配がハッキリと掴めない事だ。


(どうやらあの方とやらは相当の手練らしいな。アレン、最初に馬に念話した時の感覚覚えてるか? これは実際には念話ではなくてだな。相手の精神を見つけ出して語りかけてるんだ。つまり、この技法は1種の索敵であってだな。)
(言いたいことはわかったよ。)


 これを使って相手を確かめるってことだ。


 目を瞑り精神を研ぎ澄ます。まずは自然と同化。
 周りの人達の気配を探る。一人一人の動きが手に取るようにわかってきた。更に集中する。
 これは解体場かな、そこにいる小さな虫の動きもなんとなく掴めてきた。ちょっと可愛い。更に集中。
 今度は遠くに意識を飛ばすんじゃなく、近くに向けていく。一人一人の動き、そしてその感情を読み取るようにしていく……これは難しいな。


 さて、ここでいよいよ後ろの会話している連中の方へと意識を向け始める。これぐらい集中してからじゃないと感知できないかなと思っての事だったけど……意外と簡単に把握できたな。多分、こんなこと普通やらない、というか知らないから対策も何もないんだろうね。


 服装は結構厚着で銀髪、肌は青白くて、瞳は黄色と言うより金色でちょっと鋭い。ま、総合して言うと美男子だね、タマもそこそこだけど。んでマフラーをして口を隠してる。なんでだろ? 見た目の年齢は若い、絡みに来た男なんかよりだいぶ。
 僕と同い歳ぐらいかな?なんて思ったけど、そうじゃないことは彼がマフラーを取ったことでわかった。


 ……牙がある。この特徴を持つのは吸血鬼ヴァンパイアだけだ。吸血鬼……ルイフに勝てないって言われたなそう言えば。
 吸血鬼は不老不死と呼ばれる純血種。ただ日光に浴びれば死んでしまうとされている色々と可哀想な種族だ。呪われた者達って言われたりもしてる。その分、生まれ持った力は凄まじく、エルフに次ぐとさえ言われている。
 で、不老不死だから実年齢は分からないわけで。


(分かったか?)
(うん、吸血鬼だね。)
(あぁ。ただあの感じは本当に迷惑してるって訳では無いか、嬉しそうでもないが。)


 どうやらタマは容姿だけではなく感情も読みとったらしい。僕は間違って精神に触れてしまいそうだったからやめておいた。相手がやり方を知らないと言っても、精神体に触れてしまえば誰だってなにかしら気づく。
 この加減が難しいんだよねこれ。まだあんまり使ったことないけど。

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