太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜

日孁

21,輝

(まずはこの剣を見てください。)


 ルイフがそう言って指したのは村長のもつ剣だ。
 刀身はギラギラと鉄色に照り輝いていて、見ているだけで命を刈り取られそうなほど、斬れ味が良さそうだ。


 ……まて、これで僕はやられたのか?
 首チョンパされてない!?


 慌てて確認するけど、そんなことはなかった。一安心。


「えっと、まさかこれも?」


(はい、鑑定出来ます。)


 鑑定眼凄い便利だな。
 欲しいわ。


「……何もならないのだけど?」


(いつも貴方はどうやって相手のことを鑑定していますか?)


「どうって……普通に」


(そこが分かっていないのなら無理ですね。では、私を鑑定してみてください。どうやっているのか意識しながら。)


「わ、分かったわ」








 ……まだかな。
 ずーっと微動だにしてないけど。
 生きてる?


「何となく分かった気が……?」


 おぉ!
 生きてたか!


(とても早い上達ですね。では、もう一度これを鑑定してみてください。)


「えぇ」


 さぁ、果たして結果は……!?


「見える……!」


 おぉ!
 何が見えたのかは分からないがおめでとう!


究極級アルティメットって…嘘でしょ!?」


 究極級?
 武具に関しては知識がないから分からないな。


「なんだそれ」
「え? 知らないの?」


(アレン様は知らなくて当然ですね。究極級とは武具につけられるランクの中で2番目に高いものです。ランクが高ければ高いほど良いとされ、持ち主との相性が良ければ様々な特殊効果が発揮されます。そして神世級デウス、究極級、伝説級レジェンドの3種は作成不可とされるもの。だから驚いているのですよ。)


 ご丁寧にありがとうございます。
 で、なんで村長がそんなものを?


(それは、作成不可というのが現代定義されているものだからですね。この3種で現存するものは最古の文明の時に作られたものが殆どです。ですから掘り出し物でしか手に入らない。しかし、この村は……)


 そうか!
 あれ? 最古の文明に作られたってことはもしや……


(その通りです。作られる際、古代語を付与していました。そのために、多大なる力を持っています。)


 古代語って、アンナがいるけどいいんですかい?


「究極級……あの方の武具よりも上……ハハハ」
「へぇ、お前究極級だったのか」


 大丈夫そうだ。
 てか村長知らなかったんだね。


(まぁこの村にも、古代語を使える者がいないのですがね。)


「ちなみに僕のこいつは?」


(……そう言えば、その剣は一体どこで手に入れたのですか?)


 いつだったかなー、なんて。


「僕と一緒に捨てられてたんだってさ。ちょうど僕が抱きしめる形で」


(危ないですね。)


「それは思う」


(それも鑑定してもらいましょう。アンナ。)


「あ、はい。えと」


 完全にパシリだな。


「これは、英雄級ね」
「というと?」


(現代作成可能な中で最高のランクです。もう少し詳しくすると、名前は『カミューナ』、と呼ばれる金属を使用しています。しかし、これは……)


「どうした?」


(星霊の雫は貴金属であり、その性質は他のどの金属よりも優れているのです。それ故か、色はこんな鉄のようではなくて……もしや!? アレン様、この剣の名前を。)


「え? まぁいいけど。」


 何を思ったんだ?
 やれば分かるか。


カミューナ!!!』


 唱えた次の瞬間、刀身が柄が、紅い光を放ち始める。
 そして光が収まるとそこには……


 ひと振りの、深碧と真紅の美しいつるぎがあった。
 まるでルビアスのような色合いだな。
 刀身はほとんど緑色だが、中心を通る筋はものすごく紅い。


(やはり…… 星霊の雫は持ち主の魔力の色を映し出します。だから、普通は鉄色なんてありえないのですよ。名前が鍵だったのですかね。)


 いやまて、魔力の色ってことは、鉄色だったのって……
 いや、考えるのは止めよう。
 僕が虚しくなるだけだ。
 しっかし、名前なんてあったんだなぁ。


(そりゃありますよ。それより驚くべきは古代語が名前だったことです。)


 あ、確かに。


(これは最古の文明で作られたと考えるより、何者かが古代語を知っていて、それを名付けたと考えるのが良さそうですね。)


 でもそれぐらいはあるんじゃない?
 マスコルの時もたまたま知っていたんだし。


(念の為ですよ。)


 そう。


(古代語を広めさせる訳にはいきませんからね。)


 あ。


「これ、色変わっただけじゃなくて強くなってたりしないのか!?」


 英雄級は変わる前に鑑定したんだし、多少強くなっててもいいんじゃ?


(ああ、多少なら。使いやすくなりましたでしょう?)


「まぁ、多分」


(持ち主の魔力の色に合わせるというのは相性に合わせることでもあります。つまり、それを魔法の媒介にすることも出来ますし、魔力を流し込んで強化することも自由自在です。)


「ほーん。そんなものかぁ…… ん?」


(どうなさいました?)


「もしそうならよ? これルビアスの魔力と相性が良くなったってことだよな?」


(はい。あっ。)


 その あっ はどっちだ!
 色が変わらなかった理由に気づいた方か!


(もはや英雄級などではありませんね。)


 そっちだったか。
 なら良し。
 良し……?
 まぁいい、そういう事だ。
 ルビアスの魔力を流し込んで強化するなら、これはとんでもない代物になる。
 使い方を間違わないようにしないと。

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