太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜

日孁

激動

 この日、世界は激動の時代を迎えた。
 その変化は、強きものほどはっきりと感じ取ったであろう。




 ✧✧ウルノメリア大陸(ヘヴィ大洞窟)✧✧


 ここに1匹の大蜘蛛がいた。
 純白の体に10の真っ赤な目、その姿はは見るものを圧倒する。


(アハハハハ! 遂にこの時が来たかね。さぁ、早くここに来い。太陽の申し子!)


 彼女はパーンクァフル。
 魔蟲の王にして、王種の一柱。そして、このヘヴィ大洞窟の主でもある。


(アハハ。)


 彼女は笑う。


(アハハハハハ!)


 彼女は不敵に笑う。
 まるで世界を嘲笑うかのように……


(アハハハハハハハハ!!)


 彼女は笑う。
 彼女の名の意味は『純白の支配者』。






 ✧✧ナルタ大陸(ナルタ大帝国・首都ルビオラ)✧✧


「……きたか。」


 そこには一人の覇王が佇んでいた。
 彼は虚空を見つめ、自らの家臣へと、重い口を開く。


「時代が動き出したようだ。」


「は、今……なんと?」


「新たな時代の幕開けだ。どうやらのんびりはしておられぬようだ。」


 続けて言う。


「全軍団長をここに! 戦争の準備を始める!」


「……はは! 仰せのままに!」


 彼こそが、覇王ルビオラ。
 巨大なひとつの大陸全土を、己の武力のみでまとめあげた最強の男。
 その男が、今まさに動きださんとしていた。


────────────────────


 家臣が部屋をあとにした後、彼はポツリと呟いた。


「これでいいのだな? フィミオン。」


 そして、その呟きに答える者がいた。


 ─えぇルビオラ。全ては世界のため─


 彼は、大きくため息を吐く。






 ✧✧名もなき土地(無限牢獄)✧✧


 ここには何も無い。いや、あるにはあるが、あるのは草木の生えない呪われた土とひとつの牢屋、そしてそこに囚われる一人の男のみである。
 この男は、かつて英雄と呼ばれ、類まれなる才能により最上位龍との契りを交わした初の存在。そんな者が何故この牢獄へと放り込まれたのか。その真実を知るものは数少ない。
 そして、この男もまた、感じていた。


「クックック。始まる、激動の時代が! さぁ、今回は誰が生き残る……かな?」


 一人、そう言葉にした。




 ✧✧???(???)✧✧


 そいつは一体なんなのか。
 浅黒い肌に背中からは蒼白の翼が、金の角が額から生えている。
 ソレは一体何者なのか。正体を知るものは誰もいない。


「……やはり目覚めたか。偉大なる竜王の子よ。」


 だがしかし、ソレははっきりと口にした。

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