太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜

日孁

6,儀式⑤

 リアを連れて、再びハーカバを登る。
 とはいっても、ほとんど登りきっているからそんな時間はかからない。


 お? また戦闘音だ。


 2頭の亜龍が縄張り争いをしていた。


 僕はなにも聞いていないし、見ていない。
 だから、危険度5の亜龍がなんでこんな所にいるかとか、あれが飛龍ワイバーン陸龍ドレイクかなんて、思ってない。


 さらに数十分ほど歩いたところで、スーが口を開いた。


「よーし、ここら辺でいーよねー」
「いいんじゃないかしら? 話の内容からすると、まだ危険度5は無理そうだし」
「うん。いいと思う」


 この辺なら、危険度3~4ぐらいがほとんどだしちょうどいいね。
 マスコルみたいに下ってくるやつもいなくないけど、そういうのは縄張り争いで負けて降りてくるようなやつだから、やれなくはないと思う。
 ふむ、するとマスコルは負けてきたのかな?
 そう仮定すると、僕達が倒せれたことも納得が……
 いや、タフゴープナを一撃で沈められるやつを弱いとは思えない。


 んー、やっぱ謎だな……


 お、いいヤツいるじゃん!


 周りを見渡して、何かいい相手がいないかと探していたら、数十メートル先に大きな土色のカエルを見つけた。体長は約7m。


 いやぁ、すごいちょうどいい。


「スー、とりあえずあいつをやってみろ。」
「あれはー?」
「あれはガロゲロ、大型の蛙型魔物だ。体はぬめぬめしていて、剣とかの物理的な攻撃が効きづらいからな。あと、舌を器用に使って攻撃してくる。」
「物理効きづらいのー?」
「そうだぞ。とはいえ、同じ危険度4の他のやつよりかは攻撃力も素早さも低いし、特殊な効果も持っていない。おそらく、お前達にとって一番いい相手だと思うぞ。」
「りょーかい。マスコルー! 行くよー!」


 スーとマスコルが向かっていく。
 音で気づいたのか、ガロゲロもこちらを向いて舌を伸ばしてきた。


 なにあれ……?
 舌を器用に使って相手を攻撃するとは知っていたけど……
 あんな伸びるの?!
 その代わり離れるほどスピードは無くなるけど


 数十メートルの距離にいるはずなのにも関わらず、スー達の場所まで届いた。
 スーとマスコルはそれを横に飛ぶことで避ける。


 あんな遅かったら余裕だよねー。


 ガロゲロは当たらないと判断したようで舌を戻すと、今度は舌を地面に突き刺し、その反動を活かして前に飛んだ。


 うん。
 舌って便利だね!
 あの大きさからいくと、普通に跳んでも高いんだろうけど……
 舌を使ってもっと高いと思う。
 本当に飛んでるみたい。


 お、ハイジャンプからのメテオアターック!!!


 決まった!


 ……決まっちゃダメだな。
 だけど、マスコルもスーもダメージはそんな入ってない。
 良かった。
 良くないか?
 いや良かった。


 ガロゲロが一瞬で近づいたことにより、スーとマスコルは少し怯んだみたいだけど、すぐにとりなおしてガロゲロへと剣を構えて向かう。
 ガロゲロは動かない。


 ヌルッ


 剣がヌメって刺さらなかった。


 まぁね。そういう魔物だし。
 スーも僕から聞いて予習済みだったので、そんなに驚きはない。
 少し驚いてるのは……うん、仕方ない。


 さて、あのヌルヌルするやつにどうやって立ち向かう?!


 あっとぉあ。
 マスコルがガロゲロに突進!


 大きな蛙に熊が向かっていくって、なんかシュールだな。
 てか、これはあれか?
 ツノぶっ刺しか?




 あっ……違った。
 普通に引っぱたいた。


 でも、それで正解。
 剣がとかの鋭利なものによる物理攻撃はあんまり効果がない。
 だけど、打撃系統のものならばダメージが蓄積されていく。
 まさか、マスコルの方が気づくとはねー。


 あ、違うなあれ。
 めっちゃ驚いてるわ。
 たまたまかよ!
 とはいえ、これでスーも戦い方が分かって……


「はぁぁぁあ!!!」


 ないな。
 ずっと剣で斬りつけてる。


「おーい、スー。さっきのマスコルの見てなかったのか?」
「え? うん。」


 舌の薙ぎ払いを避けながら返事をくれた。


 はぁ、見てないのか……
 これじゃあ連携もなにも無理だぞ?
 先が思いやられる……


 え? そんな余裕ないだろって?
 バカを言っちゃあいけない。
 スーならできる!


 と言っても、言ってあげた方がいいよな。


「そいつは打撃なら通る。そして連携。これで理解したか?」
「わかったー! マスコル、やるよ!」


 お! マスコルとスーが連携を……!


 まぁ出来ないわな。
 両方全然タイミング合ってない。
 んー、まぁ初日だし仕方ないのかもなー。
 逆に初日であれだけ言うことを聞かせられていたらすごいのかもしれない!
 いや、知らないけど。


 でも、着々とダメージは与えられている。
 特にスーの一撃がヤバい……
 なんで1発ごとにガロゲロ、気失いかけてんの?
 あっ、終わった。
 大きな蛙が泡を吹いて倒れてる。


「マスコルー! やったよー!」


 スーがマスコルを抱きしめて言う。


 うん。やったね。
 連携してなかったけどね。


「ちょっと、あれでいいの?」


 静観していたリアが小声で聞いてきた。
 こちらがか聞きたいくらいだ。
 なんだあれ!
 ゴリ押しじゃねーか!
 でも、そんなこと言える立場じゃないんだよなー。


「さぁ、魔物使いの修行なんて詳しくは知らないからな……初めてだし、あれでいいんじゃないか?」
「……そう」


「じゃあリア。僕は見回りに行くから、その間スー達を見といてくれ」


「……ええ、分かったわ」


 リアにスーのことを任せて、他の子を見に行く。


 別にスー達が強すぎて自信なくしそうだから、他の子達を見て安心したいとか、そんな気持ちはない。


 ほんとにない。
 断じて違う。
 ただ、長老達に任されたからやるだけだ!


 少し歩く。


 ギャオォオーン!!
 グォォォォォオン!!


 早歩きで歩く。


 お、いたいた。
 ふむふむ、あれは……スライムかな?


 手こずってる。
 やっぱあれぐらいが普通なんだよな。
 あれでも危険度2だ。
 普通は手こずってもまぁ仕方ない。


 ……こう客観的にみると、僕も強い方だよな?
 うん、スライムには手こずらんぞ?


 はぁ。
 周りにヤバいのがいるだけで、ほんと強さの基準がおかしくなってくる。


 お、倒したな。
 大丈夫そうだし、次行くか。

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