神の使徒、魔王卿となり平和を求む

こにユウ

転入してくるらしい

翌朝、俺は早めに目が覚めた。昨日、バースのことがあってもう少し休んでおきたいがしなければいけないことがある。
王都に来てからしていなかったが自主トレの再開だ。中庭に出て自主トレをいつもの半分する。
そして体が温まった頃に座って坐禅ざぜんをする。これは簡単に言うと精神統一の様なものだ。前世ではそうでもなかったが転生してからどうも沸点が低くなっている。
大事なものが増えたのも理由なのだろうが1番は父さんと母さんの血を継いでいる事だろう。父さんは今はだいぶ丸くなったらしいが、昔は身内のことをバカにされたりするとすぐにキレる性格だったとか。母さんも同じようなもので今でもあまり変わってないないらしい。

と、いうことで今日から精神状態を安定させるために坐禅をはじめたというわけだ
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「·····ガ!ナ·····、」

ん?

「ナーガ!」

呼ばれて目を開けると目の前では心配した様子で俺を揺すっていたらしい父さんがいた。

「あれ、父さん?」

「あぁ、そうだぞ。お前もとうとう精神統一まで始めたか。なかなか自分のことが視えているな。」

「えっと、ありがとう?」

「だが、集中しすぎるのも、ダメだ。戻って来れなくなる可能性があるから気をつけるようにな。」

「はーい」

父さんの手に掴まり俺は起き上がった。空はだいぶ明るくなっており、もう街も段々と活気づいてきている。

「朝食を摂ったら学校行きだ。
·····頑張ってこいよ!」

少し間があった事が気になるがまぁいいや。

水を浴びて汗を流して下に降りるとレイがパンを食べていた。相変わらず眠そうだな…

「おはよう。レイ」

「お…は…ょ…ぅ」

段々と声が小さくなっていき、うとうとし始める。

「レイ、起きないと…」

そこで初めて気づいた。朝食がいつもより質素なことに

「ナーガ、言っていなかったがバースは少しの間休みをとるそうだ。」

椅子に座った父さんはそういい、パンをかじる。俺も席につき、パンをかじりながらスープをすする。

「もしかして…」

「あぁ、グリムとの時間を作るそうだ。今まで毎日ほぼ休まず働いてくれていたし、有給が有り余るくらいあるからいいんだが…」

父さんはそこで言葉を区切った。やっぱり、寂しいのだろうか。今まで何気に1番長くバースと一緒にいたのは父さんなんだろうし、いや、グリムさんが居たな。

「父さん、寂し…」

「飯が質素になる!」

バン!

と俺の方を向いてそう言ってきた。よかったよ。父さんが平常運転で

「今日は俺が作ったがやはりコックを雇うか…」  

などと会話をしていると

ゴーンゴーン

と時計がなった。
あっ、

「父さん、いってきます!」

「おぅ!レイを忘れるなよ!」

言われて後ろを見るとソファで横になっているレイ。なにやってんだか

「レイ、行くよ!」

「ねむ…」

『空隙支配!』

レイに最後まで言わせずスキルを発動させる。

目の前に教室のドアが現れた。この場合は俺が移動したんだろうが

目をこするレイの手を引いて教室に入る。

変わらない、いつものメンバーだ。

「おはよ!ナーガくん!レイエルちゃん!」

フィーネが元気ハツラツに挨拶してくる。てか皆来るの早くね?いや、俺らが遅いのか。

「おはよう。フィーネさん。」

「ん。おは…ょ」

挨拶を交わして他愛ない話をしていると教室の扉が開いた。

誰だあの人

青い髪に黒縁メガネ、ピシッとしたスーツを着たいかにも真面目そうな男の人が入ってきた。

「新しく担任になったシン・タッカートだ。よろしく頼む。」

ザワザワ

「ヴィーナ先生はどうされたのですか?」

そこですかさずニルベルクくんが聞いた。まぁそうなるわな。

「前担任は、家の事情で2年間離れることとなった。俺はその2年だけ担任を受け持つ。」

「わ、わかりました。」

ヴィーナ先生はあれでも貴族令嬢だし、あと少ししたら結婚の発表もある。二年という期間は王宮の仕事かな。まぁ休むしかなくなるよな

「では、立て続けに悪いが転入生を紹介する」

そう言われて入ってきたのはエリス嬢と黒髪の女の子。あぁ、Aクラスから引き抜いた二人か。

「エリス・エル・シュワンですわ。よろしくお願い致します。」

驚いた。だいぶ前よりは落ち着いているな。なにがあった?

「次 」

「は、はい。」

「クロナ・エル・ウェイフです。よろしくお願いします」

あの子、貴族なのか。それにしては、だいぶ卑屈な感じだが…

「席は空いているところを使え。それでは訓練場に移動するぞ。」

そう言って教室を出ようとする先生だが

「先生、今日は、B組とC組が訓練所を使うはずですが」

そこで不思議そうにシンセさんが聞いた。

「訓練所ではない、訓練場だ。それに行く場所は学園の保有しているものでは無い。」

「では、どこに?」

「騎士団の保有している訓練場にいくぞ」

「「「えーーー!!!!!」」」

俺を含め全員が驚きの声を上げた。

「うるさいぞ。着いてこないのなら置いていくぞ。」

そう言ってタッカート先生はスタスタと歩いていく。俺達も置いていかれないように急いで後を追った。

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