神の使徒、魔王卿となり平和を求む

こにユウ

どうやら1体1じゃないらしい

昼飯を食べ終わり、俺、レイ、父さん、そしてバースさんが訓練所に向かった。なぜバースさんまで来るのか聞いてみたところ「護衛です」との事だった。どうやらワクワクしてるように見えたのは勘違いだったようだ。

訓練所に着くと、国王陛下と大罪卿が待っていた。他にも剣王卿、魔法卿とほか2名が居た。それぞれ仮面を被っており、顔を見ることが出来ないが、それなりの圧を感じる。
訓練所だから兵士がいると思ってきたがいたのは国王陛下と卿の人達だけだった。

「ようやく来たか。待ちわびたぞこの時を」

そう口を開いたのは大罪卿だった。どうにも嫌われてるような気がしてならないのだが、俺は何かしたかな?

「それでは卿となるための試練を始める。ナーガよ、なにかハンデはいるか?」

国王陛下が聞いてきたので

「いえ結構です。」

「その心意気は買うが本当にハンデはいらんのか?」 

「はい。逆に俺は魔法を使わない。その上大罪卿ともう2人くらいなら俺一人で相手できます。」

「「「なっ!?」」」

卿の人達と父さん、そして国王陛下でも驚いた声を上げた。まぁ国の最高戦力を俺一人で、しかも魔法を封印した状態で相手するなんて言ったら驚くよな。俺だって驚いてる。元はと言えばこの案はレイが考えたものだ。なんでも魔法を使わずスキルとその身一つで相手することでいい特訓になるだとか。俺は全力で拒否したけど、レイが勝ったらなんでも1つ願いを聞く、なんて言われたらやる以外の選択肢なんてないよな。負けたら二度と口聞かないとも言われたし、ある意味命懸けだ。

「クククッ。
そうか。ナーガがそういうのであれば
剣王卿!魔法卿!相手してやれ!」

国王は面白そうに笑って剣王卿と魔法卿に伝えた。

「いいのですか?国王陛下」

「そうだぜぇ。剣聖を凌いだとはいえ流石に3対1は無理だと思うのだがなぁ」

「よいよい、相手してやれ。それにあそこまで言われて黙っておるお主らではないだろうて。我が王国の最高戦力、大罪卿、剣王卿、魔法卿よ。全力で相手してやれ!」

「「「は!」」」

「あっちょっと待ってください。」

「なんだ?」

「レイ。よろしく」

「うん…わかった」

レイには訓練所に結界と物が壊れないように建物自体に『不壊』の付与をしてもらった。

「これで大丈夫です。どんな衝撃でも壊れません。もちろん結界も」

「お主ら…。いやなんでもない。では双方武器を構えよ。武器はそれぞれ持ってくるように言っていたがナーガは何も持ってないようだが?」

「いえ、ありますよ」

そう言ってアイテムボックスから刀身が真っ黒で柄が黒と赤の模様の刀を取り出した。

「ほう。アイテムボックスか、珍しい」

「なんだよ。あの真っ黒の剣…刀から殺気が出るなんて有り得んのかよ」

魔法卿と剣王卿はそれぞれの感想を漏らす。

「始めましょう。修行でしかない理不尽な戦いを」
「では始め!」

合図と同時に大罪卿と剣王卿が突っ込んできた。大罪卿はレイピアを剣王卿は大剣を扱うようだ。しかも連携はバッチリでありお互いの邪魔をせず確実を攻撃を仕掛けてくる。
レイピアを避け、大剣を刀で軌道をずらす。後ろに嫌な気配を感じ上に飛ぶ。案の定後ろには魔法陣があった。設置型か。いつ設置したんだか。

「避けているだけでは勝てんぞ!」

この状況にイライラしてきたのか剣王卿が怒鳴る。仕方ない。攻めに出るか。俺は1度距離を置き刀を鞘に収め、

「深奥流剣術奥伝殺界さっかい

入学試験でエリザさんを苦しめたあの技だ。流石に辛いだろう。
気にした様子が無いのはレイとバースさんぐらいだ。父さんでさえ歯を食いしばっている。卿の人達は分からないが…
俺が父さん達から相手3人に目を向けると剣王卿は迫ってきて、魔法卿は詠唱をしており、大罪卿は力を溜めていた。
なんでこの人たち動けんの!?

「小僧!ワシらを甘く見すぎじゃ!この程度の死の重圧何度も味わったことがあるわ!」

剣王卿の攻撃をバックステップで躱す。レイを見ると頑張れ!というふうに手をグーにして見守ってくれてる。けど流石に、

「レイ!身体強化使ったらダメか!?」

「む。ダメに…決まって…る。訓練…だから」

そういうと、

ガチャン!

また俺の中で何かが閉まる音がした。
まさか…

「身体強化…封印した…頑張って」

親指を立ててグッ!とするレイに溜息をつき前をみると詠唱が終わった魔法卿と力をまだ溜めてる大罪卿が居た。

「剣王卿どけ」

機械が故障したような声を魔法卿からでた瞬間に剣王卿が魔法卿の後ろに回った。
俺は何が来てもいいように刀を鞘に収めどの技を出してもいいように構える。

「くらえ小僧。『ゲート・オブ・ザ・ソード』!」

そう言うと魔法卿の前と俺の周りに黒い渦が出てきた。数えるのも嫌になるくらいの量である。その中から赤く光る剣が飛んできた。
いやいやいや!待て待て!この量は流石に不味い

「早く、リタイアいいんじゃないか?ううん?」

魔力が尽きればこの猛攻も終わるんだろうがそれを待ってたらこちらが力尽きそうだな。
それを見越しての魔法卿の言葉だろう。


仕方ない…な。



俺は防ぐのをやめて避けるのに専念した。もちろん全部避けきれる訳もなく傷が増えていくが構わない。アイテムボックスを開き真っ黒な剣を出した。さっき出したのより禍々しい剣だ。左手に剣、右手に刀を持ち深呼吸をする。この際につく傷は無視。

「なんだあやつ。新しい剣を出したと思ったら止まりやがった。諦めたか?」

剣王卿がそう言い、

「あれは対軍用の魔法だ。そりゃあ諦めるだろ。だが諦めたと言うまで魔法は解かない。」

「こちは準備が整った。が、無駄に終わりそうだな。」

力を最大限まで溜めた大罪卿がため息をついた。

散々いいやがって。
レイには悪いけど、後で謝ろう…
よし!ここからは


 

攻防なんて生ぬるい





蹂躙だ。

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