神の使徒、魔王卿となり平和を求む

こにユウ

入学試験は大変らしい

馬車で数日揺られ、入学試験の前日に王都に着いた。一日観光し、早めに寝て明日の試験に備えることにした。なぜ馬車なのかは父さんが着いてくることになったからだ。母さんは家にいるということだったが公爵として父さんは来なければいけなかったようだ。

そして当日。王都にある家を出る時に

「ナーガ!レイ!遠慮なく頑張れ!」

「ナーガ様。レイ様。くれぐれも全力を出さないようにお願い致します。」

全く正反対のことを言ってくる父さんとバースさんに苦笑いを浮かべレイさんと試験会場に向かった。

試験会場にはたくさんの生徒がいた。受付を済ませ大ホールで待っていると

「あの人って確か2年間眠ってた公爵家の子供だろ」

コソコソ

「確か呪いにかかってたとか」

コソコソ

色んなことを話されている。気にせずに座っていると横に座るレイさんがソワソワしだした。まさか

「レイ…さん?」

「ナーガ。燃やして…いい?」

「ダメだよ!?」

俺が早くしてくれと思いなが待っていると

「受験者が全員揃ったので筆記試験の会場にお連れします!受験番号100番から150番の方はこちらへ!」

順番に案内されて俺とレイさんはたまたま同じ教室だった。まぁ受験番号が260と261だから当たり前と言えばそうなんだが…

「それでは、筆記試験を始める!不正行為は失格だからな!では始め!」

1問目から順調に書き進めていく。
しかし途中、分からない問題があり苦戦していると脳内に

「そこ…は、ファウス革命…で多く…の人が…死んだから…だよ」

「!!!」

驚いていると横でレイさんが机の下でピースしてた。いやいや不正だし。まぁでもいいか

「ありがとうレイさん」

「ん。」

脳内での会話もそこまでにし、問題も解き進める。

数分後

「そこまで!」

試験監督からの合図で筆記試験は終了した。

「次は剣技の試験に移る。次の試験会場に移動するように」

次の試験場に着くと、結構な人数がいた。そこで一際目立ったのが赤髪の女の子だ。目も綺麗なルビー色をしており、炎を連想させる。綺麗だなぁって思って見ていると、レイさんからジト目を向けられ、足を少しつままれた。痛い。レイさんの誤解を解いていると

「あなたね!さっきから私をジロジロ見ていたのは!」

なんとさっきの女のが俺の目の前まで来ていた。

「すいません。あまりにも綺麗でしたので」

「ふん。私は伯爵の娘よ!私に色目を使ってたあなたは死刑ね」

「なっ」

これはまた横暴な。

「すみません。ご令嬢。しかしこの学園は身分制は関係なく、みな平等であるべきと…」

「あっはは、あなたそれ本気で言ってるの?そんなのみんな上っ面だけに決まってるでしょ?これだから平民は。もし私より試験の点数が上なら許してあげるわ。まぁ無理でしょうけどせいぜい頑張りなさい。」

俺が末期だなぁと考えていると

「よし!全員着いたな!今から剣の実技を試験を始める!今年は特別に勇者パーティのリーダー、剣聖エリザ様にいらしてもらいました!」


「勇者パーティのリーダーをさせてもらってるエリザだ。よろしく。」

「「「おー!!!」」」

主に男子が雄叫びを上げた。

「うるさいぞ!それでは試験を開始する。番号順に並べ!それとエリザ様に試験をしてもらうのは250番台以降だ。」

「「えー!!!」」

おー。俺はぎりぎり手合わせできるようだな。


俺の番が来た。

「君、名前は」

「ナーガです」

「そうか。ナーガか。うんよし!悔いのないように全力でこい!」

それはまずいような気がするがまぁ剣聖もちなら大丈夫だろう。

「はい。わかりました!」

「では、こい!」

それを合図にエリザさんに斬りかかった。一応身体強化はしていない。

「なっ!?」

驚きながらも受け止めるエリザさん。

「なかなかやるな。ならこれはどうだ!
 スターセイバー!」

いやいや!生徒に上級剣術使うなよ!?

『身体強化』

「っ!深奥流剣術風月の型・風柳ふうりゅう!」

これは我流で自分で生み出した受け流しの方だ。初めて実践で使ったけど上手くいったな。

「ならこれはどうだ?百刀修羅!」

それは、やばい!?
百刀修羅はその名の通り100本の刀から斬りつけられるような錯覚を覚えるくらい早いスピードで相手を斬る技だ。
てか受験生にそれを放つか!?

『身体強化レベル2』!
 
「深奥流剣術水月の型・叢雲むらくも

「えっ!?」

エリザさんは驚いている。それもそうだろう。俺を斬ると俺が霞のように消えるのだから。と言ってもこれは避けるスピードに緩急をつけて、さらに自分を魔力の幕で覆えばいいんだが分かってるのはレイさんくらいかな。

「ナーガ。その避け技には驚いたが、私は悔いのないようにと言った。だから攻めてこい!」

攻めかぁ。なら

「わかりました。けれど死なないで下さいね」

「なんだと?」

少しイラついているようだが仕方がない。

「深奥流剣術奥伝殺界さっかい

それと同時に全ての人が動けなくなった。俺が濃い殺気と威圧を放ち、周りには死の重圧をかけている。もちろん俺も例外ではない。自分に無数の刃が向けられている。動ける者は居ないだろう。

俺を除いて

「なっ何だこれは!?」

「これは殺界。深奥流剣術奥伝の技です。これは俺から半径100メートル以内の人に見せる死の重圧です。」

「こんな…もの。こわ…くも…なんと…も」 

「無茶ですよ。これを敗れる人はほぼ…」

「ナーガ…早く…とい…て?」 

後ろからレイさんの殺気を感じ取り即座に殺界を解いた。俺とレイさんを除いては皆、その場から動けなくなっていた。レイさんにはこれからどれだけ強くなっても勝てそうにないなぁ。色々と。

「えーっと、合格でいいですか?」

「まだだ!まだ私は認めていないぞ!」

いやいやいや!めんどくさいぞ!?流石に

「わかりました。」

「よし!なら仕切り直…」

「深奥流剣術奥伝死海しかい

「えっ?」

これは死の海に引きずり込まれるような錯覚を覚えるとものだ。いくつものリアルな手と人の顔をしたものに引きずり込まれるからさぞ怖いはずだ。効果範囲が1人だから使いどころが難しいが…
というか怖いはずなんだが、さっきからエリザさんは下を向いて動いてない。まさか効かなかったのか!?
俺が不安に思って近付いて顔を除くと白目を向いて気絶してきた。あっちゃぁ…やりすぎたなぁ。


「すいません。エリザ様気絶してるんですがどうしたら…」

ぼーっとしてた先生に声をかけると

「はっ!わかりました。医務室に連れていきます。あなたの試験の間に他の人も終わってしまったので魔法の試験に進んでください!」

「はい。わかりました。」

「皆さんもそのようにお願いします!」

「「「はっはい!」」」

魔法の会場に移動中は凄く静かだった。しかも誰も近付いて来ないし…

「ナーガ、あれ…は、やり…すぎ…」

レイさんから呆れたように言われた。だってめんどくさかったし…
 
っとついたな。

「少し遅かったですね。しかし良いでしょう。これから魔法実技試験を始めます。ここでは50メートル先の的を目がけて魔法を放ってもらいます。それを見て点数を付けるのでいいですね?」

「「「はい!」」」

「今年は特別に勇者パーティの賢者ルビィ様にお越しいただきました。」

「よろしくお願いします。勇者パーティのルビィです。今日の試験、皆さん頑張ってください。」

あっ、やっぱり師匠も来てたんだ。相変わらず敬語が上手いなぁ。 

「では順番に魔法を放ってください!」

そうして受験生が定位置に立ったのだが

「多いなる大地よ!俺に力を!
 アースボール!」

「風よ!私に力を貸して!
 ウィンドボール!」

詠唱あるし、的には当たってるがほぼ的にダメージはないようだ。しかし皆、あいつ凄いとか才能あるとか言ってるのを見るとそんなもんなんだと思う。

「それじゃあ、私の番ね」

あっ、さっきの伯爵の娘だ。

「いくわよ。ファイアーボール!」

「ぬっ。入学前にして無詠唱とはなかなか見どころがあるな。」

「ふふん。」

少しいい気になってるな。個人的にはあの子苦手なんだよなぁ。なんかわかんないけど

「次、早く打ちなさい」

先生から催促されて俺の番が来たことがわかった。んー。どの魔法を使おう。そう考えていると師匠が近づいてきて

「ナーガ。闇魔法は使ってはダメよ。基本的にあれは魔族しか使えない魔法だから。それ以外の魔法ならなんでもOKよ。」

「わかりました。」

小声でそういった後

「おい、早くしろ!どんな魔法でも結界があるから気にせず撃て」

「ちょっ、先生!」

師匠は慌て、レイさんはやってやれとでも言うような顔をしている。もちろん俺は

「我が元に集え 全ての元素よ 我が力となりて我が前の敵を灰塵とかせ…」

「なんだあの魔法、俺聞いたことないぜ?」

「私もよ。もしかして使えないからあんな長ったらしい詠唱をしてるんじゃ…」

「全てものはゼロに帰結し逃れるすべはなし!」

「ナーガ!それはダ…」

『ゼロ・ザ・ユニオン!』

どかぁぁぁぁぁん!!!

「「「うわぁぁぁぁ!!」」」
「「「きゃぁぁぁ!!!」」」

「あちゃあ…」

「なっ何だこれは!?」

的があった場所には大きなクレーターができ、結界が張られてたであろう壁は見る影もなく無くなっていた。
幸い、力をセーブしたお陰で学園の敷地より外には被害は出ていなかった。

「なっなんの音だ!?」

そこに慌ててやってきたのは偉いんだろうなぁって思える人がきた。

「あっあの生徒が…」

「理事長。私が状況説明を。」

「む。頼む。」

「まずそこの教師が生徒を挑発し、それにのったそこのナーガという者が放った魔法がこの惨事を引き起こしました。」

「ふむ。それは本当かね?」

「はい…すいません。理事長」

「よい。だが二度とこんな問題を起こさないようにな」

反省した様子に理事長は顔は怖かったが許していた。器が大きいってすげぇな。その後俺は、師匠にはみっちり怒られた。すげぇ怖かった。まぁ下手したら人的被害が出てたかもしれないから当たり前と言えば当たり前なのだが…

その後、試験は第2会場で行われ、そこではレイさんが魔法をぶっぱなし会場を壊したので、第3会場に移された。そこでようやく無事に試験が終了した。

「後日に試験結果を貼りだしますので学園に来てください!では解散!」

「レイさん、帰ろうか。」

「う…ん。」

それから俺とレイさんは2人で父さんとバースさんがいる家に帰った。

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