代打・ピッチャー、俺 (少年編)

雨城アル

18投目・キャッチャーデビュー

「プレイボール!!」


そして試合が始まり、キャッチャーボックスへ座る真中。だがしかし、一つの懸念を抱えていた。昨年の上級生との喧嘩が、今後の信頼関係に響いてくるかを気にしていたのである。

投球コースのサインは、話し合ってなんとか決められたものの、素直に受け入れてもらえるとは思っていなかった。


「こうなったら実力で認めてもらうしかない……!」


この試合で雪辱を果たして、理解してもらえるように努めた。


「(初球、アウトコースで様子見……)」

「ストライク!!」


スポーツ雑誌で学んだ配球コースを使い、打者を追い込んだ。


「(高め勝負だ!)」

「ストライク!!バッターアウト!!」


一人目を抑え込むことに成功した真中、後続は打たせて取る戦法で、1イニング目を攻略した。裏の攻撃では、三者凡退で次の回を迎えることになった。

続く2回表、先頭打者に二塁打を浴びると、5番打者にシングルヒットを許し、ノーアウト1,3塁のピンチを作ってしまう。ここで、ど真ん中失投をしてしまい、ツーベースで先制点に加えて2点を許すこととなった。

攻撃では打線が奮わず、またしても三者凡退。そのまま試合は進み、6回表が終わって5点ビハインドで真中の打順が回ってきた。


しかしベンチは既に諦めムードで、やる気を見せる者は存在していなかった、バッターボックスへ向かう真中を除いて。


「こりゃ無理だなぁ……俺に回ってきても打てっこねぇや」


真中の耳がピクッと動き、9番バッターのピッチャーへ顔を向けた。


「いいえまだ勝てます、例え10点ビハインドでも野球は打ち続ければ逆転のチャンスがありますよ、10点ビハインドが無理でも今はその半分なので可能性はゼロではありません」

「な、なんだよ急に……この状況からまだ勝てるとか信じてるのか?」

「そうですね、勝てると信じなければ勝てることはありません、先輩も失点した分を返す最後のチャンスだって残ってます」


真中はそう言い残し、バットを握り締めてバッターボックスに佇んだ。そして、これまでに感じたことがないほどの集中力で、相手ピッチャーに威圧感を与えた。

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