俺と私とあたしの恋愛三角模様

きりんのつばさ

“これから”という言葉





「さて帰るか」

楓のおかげでなんとかなった小テストを乗り越え、今日の授業を終えた俺は今日の放課後どうするかを考えていた。本屋で最近発売された小説を買うのもありだし、ゲームセンターによるのもありだと考えていると不意に後ろから声をかけられた。

「へいへい篠原君や」

「……どうした山吹」

「今日、この後暇かね?」

「まぁな」

「ほぅほぅ……あたしと君の幼馴染とで今からファミレスに行こうと思っているんだけどさ、篠原君も暇なら来ないかね?」

「はい?」

「いやいや、今から楓ちゃんとあたしはファミレスに行きます。なので篠原君もどうかなと」

「言っている意味は分かるが、それなら俺よりもクラスの女子誘えーー
ーーあぁ……そういうことか」

そういえば楓は山吹や俺意外とは上手く話せないのであった。だからクラスの女子は誘えないので代わりに俺という訳か。ちらっと幼馴染の方を見ると不安そうにこっちを見ているのが視界に入った。

「分かった、行く」

まぁ大した用事も無いので断る理由もないのだが。
……別に放課後に遊ぶ友人がいないわけではない。

「よぉし!! 良かったね楓ちゃん~篠原君も来るって」

「……そう」

といつもの様にほぼ表情を変えずに返事をする楓。

「“そう”なんて言っちゃって本当は嬉しいくせに~照れ屋なんだからこのこの~」

なんて言いながら肘を楓に当て、ニヤニヤする山吹。それに少し困惑しながらも反応する楓

「ち、ちょっとやめてよ山吹さん……別に嬉しくはないわ……ただ夏樹も暇なのね。
まぁ暇なら仕方ないわね一緒に来てもいいわよ」

「おぅ……これが王道ツンデレというやつですか……リアルで見れるなんてねぇ」

「ちょっと今なんて言ったのかしら山吹さん」

「べっつに~何でもないよ~」

まるで太陽と月ように性格は正反対なのにこの2人はとても仲がいい。人当たりの良い山吹に、クールなようで実はとても面倒見がいい楓、結構いいコンビなのだろうと思う。楓は山吹に会うまでは俺や家族以外には心を開かず、自ら話そうとはしなかった。だけど山吹と会ってから楓は俺や家族以外とも少しだけど話すようになった。俺はその成長を少し嬉しく思う。

「さぁ行こうじゃないか、あたし達のオアシスに!!」

と勢いよく楓の手を引き、前に進み山吹。いきなりのことに驚きながらも付き合う楓。なんやかんやで2人は仲良いんだなと思う。

「ち、ちょっと手を引っ張らないで……な、夏樹も笑ってないで来てよ」

「へいへい行きますよ」


3人でファミレスに行き、1時間半ほど喋ったあと最寄の駅まで山吹を送り俺と楓は帰路を歩いていた。

「やっと今週が終わる……長かったなぁ今週も」

「そうね、今週は小テストが多かったもの」

「つらたん……だが明日からは休日!!
目一杯遊べる!!」

「はぁ……夏樹、貴方それで受験大丈夫なの?」

「……今それを言わないで欲しかったなぁ」

「貴方ねぇ……私もいつまでも夏樹の勉強を見ていられないのよ?」

「それを言ったら俺もいつまでも楓を起こしにいけないぞ?」

「くっ……痛いところをついてきたわね……」

「というか俺の勉強以上に“朝起きれない”ってやばくないか?」

前に俺が風邪をひいて起こしに行けなかったとき楓は遅刻しかけた。というか俺が起こしにいけない日は休んでいたりする。

「うるさいわね……それを言ったら夏樹はこれからやりたい事は無いの?」

「……」

“これから”

普段何気なく使っている言葉だが、今の俺には強く刺さる。
ーーその言葉に対して俺は答えを返すことが出来ないからだ。
楓も俺の言葉に詰まった様子を見て、しまったと思ったらしく気まずそうに

「あっ……ごめんなさい」

「いいんだ楓。俺が前を向けてないだけ、楓が心配することじゃない」

「でも……」

楓が何かを言いかけたのを俺は遮った。

「勉強は頑張って楓に迷惑をかけないようにする
ーーこれが直近の目標だな」

「夏樹……そうね。もし夏樹がそこまで出来たら私も朝頑張って起きないといけないわね」

「そうだな、お互い頑張ろうぜ」

「えぇ、そうね」

それからは普通に会話をしながらお互いの家の前まで歩いた。

「じゃあ楓、また明日」

「えぇ夏樹明日ね」

楓が家に入っていくのを見てから俺も自分の家に中に入って、そのまま自室に向かった。



「これからか……」

だが自室に戻ってからもその何気ない4文字が頭の中から離れなかった。



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