極振り夫婦のVRMMO生活

峯 こうめい

極振り夫婦の二人目の仲間と作戦会議

 いつものようにログインした俺たち三人は、パーティーメンバーをもう一人増やしたいと話していた。

「やっぱり、強い人がいいよね!」
 莉乃がそう言う。

「確かにな。例えば、前のイベントで表彰台に上がった人とか」

「でも、そういう人って、もうどっかのパーティーに入ってる可能性が高いよね……。みんな誘うだろうし……」
 ミリアがそう言ったあと、俺たちは、うーん、と唸った。

「あ、あの!」
 突然声をかけられ、後ろを振り返ると、小四くらいの身長の女の子が立っていた。だが、顔が見えない。なぜか、ス○イリーのお面をつけているからだ。そう、あのス○イリーだ。ニコニコ顔の。

「どうしたの?」
 ミリアが、しゃがみ込んで目線を合わせ、いつもの笑顔で言った。

「あ、えっと、こ、ここじゃあ人がいっぱいいるので移動しましょう。あんまり、聞かれたくないので」
 女の子がそう言うので、俺たちは街から草原の隅へと移動した。見たところ、人はいない。

「私、よくオープンチャットを見るんです」

「それで、見ちゃったんです」
 
「あなたたち三人を倒すために、ミリアさんを嫌っている人たちが一致団結しているのを」

 た、倒すってどういうことだ?いや、そのままの意味だろうがイマイチ理解ができない。

「た、倒すってどういうことだ?」

「そのままの意味です。嘘だと思うかもしれませんが、本当に見たんです。それに、私も参加すると言って作戦も聞きました!」

「だから、私を仲間に入れてください!作戦を知っている私なら、あなたたちを守れます!」

「あの人たちは、三人がこのゲームをプレイしなくなるまで徹底的に叩きのめす、と言っていました!このままじゃあ、危ないんです!」

 どうやら、計画が立てられているのは本当らしい。女の子が本当に焦っているのが、伝わるからだ。まあ、あくまで俺の感じ方がそうなだけであって、本当に嘘じゃないかは分からないわけだ。本当はただのイタズラかもしれない、という気持ちはまだ少しはある。

「どうして、そこまで私たちを助けようとしてくれるの?私たちを助けるってことは、あなたまで敵として見られちゃうってことなんだよ?」
 ミリアが笑顔で問いかけた。

「ファンなんです!ミリアさんの!憧れなんです!だから、どうしても助けたいんです!ミリアさんがこのゲームをやらなくなるなんて、そんなの嫌なんです!」

「…………これからよろしくね!」
 そう言って、ミリアは手を差し出した。女の子は、その手を握ろうとする。が、

「待って!その子が私たちの仲間に入れてもらうことも、計画の一つだったらどうするの?」
 莉乃が言う。
 その通りだ。このやり取りも計画の一つならば、この女の子を仲間にしてしまったら俺たちの行動が全て筒抜けだ。

「いいよ!これが計画の一つだとしても!私は私が信じたい方を信じる!これでもし、ボコボコにされてステータスが0になっても私はこのゲームをやめない。ユウキとリノと一緒に、また最初からやり直す!それで、今よりも強くなって、絶対やり返す!二人は、どうかな?それで」
 
 莉乃の方をチラッと見てみると、さっきまで強張っていた顔が笑顔になっている。莉乃も、ミリアの考えに納得したのだろう。

「よし!絶対に返り討ちにしてやろう!こっちには、トッププレイヤーがいるんだ!アンチなんかに負けてたまるか!」
 俺がそう言うと、莉乃は頷いた。

「じゃあ、改めてよろしくね!」
 今度はミリアだけじゃなく、莉乃と俺も手を出した。女の子は、順番に握手して、よろしくお願いします!と頭を下げた。
 その後、女の子は簡単な自己紹介をし始めた。
 女の子は、本当は中学三年生らしく、イベント後に、貯まったお小遣いで課金して身長などをいじったらしい。クラスメイトにバレないようにしたかったのだという。だが、顔はいじれないため、自分の小さい時と全く同じ顔になってしまった。なので、昔からの親友からバレないように、始めたときからつけていたス○イリーの仮面を今でもつけているという。名前はスマイルと名乗った。だが、スマイルと呼ぶのも何か変なのでマイと呼ぶことにした。
 
「作戦ですが、まずミリアさんがボコボコにした男たちが土下座して謝ります。それに三人が注目している隙に、バレない位置から魔法使いたちが魔法を使って、三人を拘束。そして、みんなでリンチという感じです」

「なので、その男たちがこっちに近づいてきたら、一番速いユウキさんが魔法使いたちのところへ全力で走り、倒す。というのが妥当なのではないでしょうか?」
 
 俺が役に立てるなんて!だが、ATKが皆無なんだよなぁ……。あ、でも忍モード発動すれば楽勝だぜ!忍モード最高!

「ただ、その作戦だと、剣士でも魔法使える奴はいるから、それで対策してくるだろうね……」
 ミリアがそう言う。俺たちは、うーんと唸った。
 こういうときにパッといい案を出せたら、カッコいいのになぁ……。

「強いスキルゲットできるのに賭けて、スキル集めするしかないんじゃないかな……」
 莉乃がそう言った。



「そろそろ、どのくらい集まったか見せ合おうか」
 俺がそう言うと、他の三人は頷いた。

「「「「せーのっ!」」」」
 四人でハモり、パネルを表示させる。

《名前    ユウキ》
《Lv  27》

《HP  370》
《MP  185》

《ATK  0(+7)》
《DEF  0(+6)》
《MAT  0》
《MDE  0(+6)》
《AGI  395(+255)》
《EVA  197(+60)》

《装備》
《忍ノ上衣》
《忍ノ袴》
《忍ノ足袋》
《忍ノ鞋》

《所持スキル》
《回避達人》 《忍》 《毒無効》
《炎無効》 《無限潜水》
《無限スタミナ》 《HPドレイン大》
《爆破耐性中》 《スタミナ減らし》
《AGI特化》 《空中移動》
《自然回復中》 《気配察知》
《気配消し》 《MPドレイン中》
《高速》 《予知》 《走刃》
《風属性》


《名前    リノ》
《Lv  28》

《HP  380》
《MP  190》

《ATK  420(+207)》
《DEF  0(+5)》
《MAT  0》
《MDE  0》
《AGI  0》
《EVA  0》

《装備》
《女神のドレス》
《女神のハイヒール》
《女神の手袋》
《女神の大剣》

《所持スキル》
《毒殺のプロ》 《毒無効》
《ATK特化》 《潜水名人》
《炎耐性中》 《爆破無効》
《気配察知》 《気配消し》 《爆破》
《渾身の一撃》 《自然回復大》
《処刑人》 《女神の加護を受けし者》
《ビーストテイマー》 《バリア》
《透明化》 《毒属性》


《名前    ミリア》
《Lv  53》

《HP  630》
《MP  315》

《ATK  200(+115)》
《DEF  172(+6)》
《MAT  139》
《MDE  150(+6)》
《AGI  225(+115)》
《EVA  112(+60)》

《装備》
《格闘家のチャイナ服(赤・金)》
《格闘家の靴(針)》
《格闘家のナックル》

《所持スキル》
《炎の拳》 《炎無効》 《毒無効》
《無限潜水》 《回避達人》
《麻痺魔法無効》 《気配察知》
《雷槍》 《電気無効》 《水刃》
《AGI特化》 《ATK特化》
《ノックバック》 《毒霧》
《ノックバック無効》 《格闘家・雷》
《雷銃》 《雷獣》 《無限スタミナ》
《雷針》 《避雷針》 《雷爆》
《麻痺の拳》 《衝撃波》
《炎属性》 《雷属性》


《名前    スマイル》
《Lv  25》

《HP  350》
《MP  175》

《ATK  100(+80)》
《DEF  60(+15)》
《MAT  123》
《MDE  46(+10)》
《AGI  123(+35)》
《EVA  61(+60)》

《装備》
《攻略者の迷彩服》
《攻略者の迷彩服ズボン》
《攻略者の迷彩靴》
《攻略者の迷彩短刀》

《所持スキル》
《柔軟》 《アクロバティック》
《空中移動》 《無限潜水》
《足技強化》 《ATK強化》
《無限スタミナ》 《走刃》
《水刃》 《水龍》 《水弾》
《水壁》 《水属性》 《水砲》
《水中高速移動》 《水棺》 
《エリア変更・水》 《水流波》


「莉乃、お前もついにスペシャルスキルゲットしたんだな!」

「うん!めっちゃ嬉しい!」
 莉乃はそう言って、パネルを表示した。

《スキル説明:女神の加護を受けし者》
 Lv30以下の状態で、中ボス級かボス級のモンスターを五体、一撃で倒す。全MPを消費するかわり、女神モードになれる。女神モード中は飛行可能になり、自身のATKが+100される。さらに、五分間パーティーメンバーを無敵状態にする。女神モードは一日一回しか使用できず、効果は一時間。

「五分で、倒しましょう」
 マイがそう言ってから、続けた。

「まず、男たちが来たらリノさんがスペシャルスキルを発動します。そうしたら、五分間の無敵状態で全員倒す。これしか、ないんじゃないでしょうか」

「その作戦にしよう!私たちなら、五分で充分だよ!」

 一撃で相手を吹っ飛ばせる莉乃とミリア、さっきのスキル集めで分かったが、プレイスキルが半端ないマイ、そして超スピードを持ち、忍術を使える俺。一見、五分で充分だと思ってしまうが、あまりにもタイムリミットが短くないか?まあ、そんなこと思っていても他に案があるわけじゃないんだが……。ここは、腹を決めてやるしかない。

「私も、五分でやれると思う!私たちの力、見せてやろう!」
 莉乃がそう言ったので、俺は頷いた。

「じゃあ、五分で倒す、この作戦で決まり!私は、今日はログアウトするね!バイバイ!」
 ミリアがそう言って、ログアウトした。それに続くように、マイと莉乃、俺もログアウトをした。
 深く考えないようにしよう……。きっと、俺たちならやれる。




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