極振り夫婦のVRMMO生活

峯 こうめい

極振り夫婦の初VRMMO

 俺、神谷裕樹は順調な人生を過ごしている。今は二十五歳で、三歳年下の嫁がいる。莉乃だ。今年で結婚三年目で、今でもラブラブな毎日だ!
 めっちゃ美人!めっちゃ料理上手い!
もう、パーフェクトな嫁だ!
 二十歳になった時なんかは、周りはもう彼女がいる人ばかりで、リア充爆発しろ!滅びろ!などと心の中で毒づいていたが、今はもう毒づかれる側だ。マジ、生きてて良かった!と毎日思っている。
 そんな俺たち夫婦は、最近ある物を購入した。
 それは、Sword Magic Onlineという、いわゆるVRMMOというやつだ。
 そして今、初期設定が終わり、始まりの街に転送されたところである。

「お、莉乃!お前も今初期設定終わったのか!」

「裕樹!そっちも今終わったんだ!じゃあ早速……お互いのステータス見せ合いっこしようよ!」

「おお、いいな、それ!じゃあ、せーので行くぞ」

「「せーの!」」
 二人でハモり、お互い半透明の青いパネルを表示する。

《名前    ユウキ》
《Lv  1》

《HP  100/100》
《MP  50/50》

《ATK  0(+7)》
《DEF  0(+5)》
《MAT  0》
《MDE  0》
《AGI  100》
《EVA  50》


《名前    リノ》
《Lv  1》

《HP  100/100》
《MP  50/50》

《ATK  100(+10)》
《DEF  0(+5)》
《MAT  0》
《MDE  0》
《AGI  0》
《EVA  0》

 俺はビックリした。多分、莉乃もだろう。
 
「私たち、やっちゃったかもね...。まさか、裕樹君まで一つに振り分けるなんて思わなかったから……」

「ああ、俺も、まさか莉乃もやるとは……。俺、現実では足遅いからゲームでは速くしたいと思って……」

「私も、現実とは違ってムキムキの男の人みたいに強くなりたいなぁと思って……」

 まさか莉乃まで極振りをするとは思わず、俺はスピードにステータスポイントを全て振ってしまった。
 オーマイガー!何てこった!
 別にふざけてはいない。本当にそんな反応をしてしまうほど、まずい状況だということは全くゲームをしない俺にも分かる。

「まあ、ほら、ゲームだから!ね?楽しんだ者勝ちだよ!」

「そ、それもそうだよな!とりあえず、一回モンスターと戦ってみよう!」
 俺たちは、街から広い草原へと歩き出す。
 ……え?てか、周りの人おっそ!莉乃もおっそ!そうか……AGIに極振りしたからか……。
 これは嬉しい!今まで、誰かより速く走れたことがない俺にはとても嬉しいぞ!この感覚!
 ふっ、ノロマどもめ!と、莉乃以外に心の中で言った。
 一度は人に向かってノロマと言いたかったんだよなぁ……まさかこんな所で一つ夢が叶うとは……。

「ま、待ってえ……裕樹君……」
 振り向くと、いつのまにか莉乃はかなり後ろの方にいた。
 
「ああ、ごめん!他の人より足が速いことに、テンション上がっちゃって」

 莉乃の速さに合わせて歩いていると、3分ほど歩いてようやく草原に着いた。
 ツヤがある鮮やかな緑色の草が一面に生えている草原は、ゲームではなく現実を見ているようなリアルさだった。
 今の技術って凄いな……。こんなにリアルにできるのか……。
 そんなことを思っていると、遠くから声がした。

「うわぁー!誰か、誰か助けてー!」
 男性の声だ。俺は莉乃に、行こう、と言い声がした方へ走る。
 風を切るこの感じ、なんて清々しいんだ!……っと、そんな呑気ではいられない。
 少し走ると、声の主であろう人物を見つけた。モンスターの前で、座り込んでしまっている。恐らく、腰を抜かしてしまったのだろう。右手には片手剣を持ち、装備は俺たちと同じ初期の革装備だ。

「大丈夫ですか!?今、助けます!」

「待て!駄目だ!初心者の俺たちじゃあ勝てない!そいつは普通、中層に出てくるんだ!だから、中級以上のプレイヤーが来るのを待つしかない!」
 男性が半泣きで言った。

「やってみなきゃ、分からないですよ!」
 俺はそう叫びながら、二刀の短刀を、それぞれ左右の腰に付けてあった鞘から抜く。
 相手の頭上には、HPバーと、《アイアンゴーレム》という名前が表示されている。
 アイアンゴーレムは真っ白で、身体中ゴツゴツしている。人間のように二本の手足があり、顔の中心には赤く光る鉱石が一つ埋められている。
 そしてなんといってもデカイ!二メートルはあるぞ!こんなのに襲われたら、怖いどころの話じゃないな。

 俺は自慢のスピードを活かしてゴーレムの攻撃を余裕で躱す。現実なら、確実に一瞬でゲームオーバーだろう。
 攻撃を当てられずゴーレムがよろけた隙に、思い切り力を込めて両手に持っている短刀でゴーレムをスパン!と………………切れなかった。

「か、硬い!」
 今度は俺がよろけた。
 まずい!攻撃が来る!
 そう思った時にはもう遅く、ゴーレムの硬い左腕が脇腹に飛んできた。

「ぐはぁ!」
 脇腹に痛みが走る。そして俺は、二メートルほど吹き飛ばされた。
 誰か近くに医者はいませんか!医者!
 医者はいませんか?など、人生の中で使わねえだろ!などと、お笑い芸人のコントなどを見ながら思っていたが、まさかこんな所で使うとは……。

 すると、AGIが0の莉乃が遅れてやって来た。

「莉乃!駄目だ!そいつと戦うな!」
 俺は叫んだ。すると莉乃は親指を立てて笑顔でグッドをした。そして背中にある大きな鞘から大剣を軽々と抜いた。

「よくも裕樹君を!死んじゃえ!」
 莉乃はそう叫びながら、ゴーレムに向かって縦に大剣を振り、ゴーレムを真っ二つにスパン!と………………切れなかっ…………えっ?

「き、切りやがった……」
 何が起こったんだ?………………そうか!莉乃は、ATKに極振りしてたんだった。完全に忘れていた……。

 真っ二つになったゴーレムは、すぐにバラバラに弾けて消えた。

 すると、
《レベルが上がりました》
《スキル、回避名人を獲得しました》
 という音声が流れパネルが表示された。それとともに脇腹の痛みが消えた。レベルが上がると、体力が全回復するのだ。

《名前    ユウキ》
《Lv  5》

《HP  150\150》
《MP  75\75》

《新獲得スキル説明:回避名人》
 Lvが四十以下の状態で、中層モンスターの攻撃を躱し、なおかつ自身の攻撃を一撃ヒットさせる。自身のEVAが+三十される。
 新しく獲得したスキルの説明を読んだ後、ステータスポイントが十五たまっているのに気付きAGIに全て振った。これによって、俺のAGIは115になった。
 それにしても、EVAがプラスされるスキルを獲得できたのは嬉しい。EVAは常に、AGIの半分になるように設定されているためステータスポイントは振れないからだ。

「裕樹君!大丈夫?」
 大剣を背中にある鞘に納めながら、走ってくる。
 急に顔面に大剣落ちて来そうで、変な汗が出てきた。お願いだから、ちゃんと立ち止まってやってくれ……。

「ああ、大丈夫だよ。あれ?あの人は?」
 あの人とは、最初助けを求めていた男性のことだ。

「ああ、あの人なら、私にお礼言ってログアウトしちゃったよ」

「そうなのか……フレンドになりたかったのにな……」


 裕樹達はまだ知らないが、このSword Magic Onlineにはチャットというものがあり、フレンドチャットというフレンドと一体一で話せるチャットと、オープンチャットという誰でも参加可能のチャットの二つがある。チャットは、ゲーム内からとそして、ゲームの公式ホームページから参加、書き込みできるようになっている。そして、裕樹達(ほぼ莉乃)に助けてもらったマサルという男性はホームページからオープンチャットを作成し、二人のことを話していた。

マサル
「さっき、ヤバい二人組に会った」

ユウト
「どんな奴ら?」

マサル
「まず、二人と出会った経緯から話すわ。俺、バッリバリの初心者で最初の街の近くにある草原でレベル稼ぎしてたら、なんでか分かんないけどアイアンゴーレムが急に出てきてボコられたんだよ。それで、大声で助けを呼んだら、その二人組が来た」

ブラック
「大声で助け呼ぶとかダッセw」

ユウト
「やめろよ。それで?」

マサル
「その二人も、俺と同じで初期装備で一人は男でもう一人は女。男の方は短刀の二刀持ち、女の方は大剣だった。で、何がヤバかったって、男はスピードが凄かった。アイアンゴーレムの攻撃を余裕で避けてた。ちな、俺は一回も避けられなかったわけだが。で、もっとヤバいのは女の方。アイアンゴーレムのこと、大剣で一撃。縦にスパン!と真っ二つに切りやがった」

ユウト
「チート説と、二人とも極振り説のどっちかだな」

ブラック
「チートじゃね?」

シュウ
「男の方は、ゴーレムに攻撃してたか?」

マサル
「ああ、してたけど一も削れてなかった。女は、走るのがめっちゃ遅かった」

シュウ
「じゃあ、二人とも極振り説の方が濃厚じゃね?」

ユウト
「そうだな。恐らく、極振りだろ」

ブラック
「フレンドにはならなかったの?」

マサル
「はやくチャットで言いたくて、忘れたわw」

ミリア
「何々?なんか面白そうな話してるじゃん!」

ユウト
「っ!?ミ、ミリアってまさかあのトッププレイヤーの!?」

ミリア
「そうだけど、どうして?」

ブラック
「ファッ!?嘘だろ!?」

ミリア
「嘘じゃないよ!だって、このゲーム同じ名前は付けられないようになってるでしょ?」

マサル
「マジか……。こんな所で話せるなんて、めっちゃ嬉しい!俺、ファンなんです!」

シュウ
「俺も!話せて光栄っす!」

ミリア
「二人とも、ありがとう!」

ミリア
「私、その極振りの二人組探して、会って、フレンドになる!」

ミリア
「だって、その二人とこのゲームできたら面白そうだもん!」

ミリア
「だからさ、マサル君!その二人組の見た目教えて!」

マサル
「はい!分かりました!」

 その後、トッププレイヤーミリアからの質問攻めが始まった。
 勿論、自分たちのことをトッププレイヤーが探しているなど、チャットの存在を知らない裕樹達は知る由もない。

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