感情を覚えた令嬢

パンデミック

憂鬱

パーティーの日が少しずつ近づいてきた。



婚約者から令嬢の元に婚約者の目の色と同じ、空を染めたような綺麗なドレスが送られてきた。それはとても美しくて、嬉しかった。



嬉しかった、けど心の奥底ではこれが最後では無いかと考えている令嬢がいた、そう考えることが嫌だった。婚約者の好意を無下にしているようで。



ゆっくりと近付く地獄の日、その日に向けて令嬢は色々頑張ってきた。




マナーだってもう1回学び直した、婚約者の隣に立にあたってだらしのない様子を晒してはいけないと。来賓についてもたくさん調べた、話に困らないように。



全部全部、婚約者が胸を張って自慢の妻だと言えるようにたくさん努力していた。



もうそんな夢は叶わない。



だけど、少しだけ期待をしたかった、婚約者はしっかりとした人、王子としてあの女を王妃にすることは間違っているのだと気づくはずだと。



あの女が王妃になるにはとてつもない量の勉強をしなければならない。



私が5歳から17歳までかけて頑張ってきた王妃教育を彼女は20歳までに、結婚式があるまでの期間、3年で終わらせなければならないのだ。



王妃は簡単では無い、生半可な気持ちでは絶対になれない。



この婚約だってもしも破棄されたのなら多額の賠償金がでるだろう、幼い頃から全ての時間を割いて王妃教育をしてきた、それが無駄になるのだ。



時間は戻らない。



王妃教育にかけた人材も、お金も、時間も、何もかも戻らないのだ。



令嬢は薄々感じていた、婚約者の心が自分にない事を。



もうすぐパーティーがある、もう取り返しがつかない。

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