異世界に召喚されて魔族になりました

ルルーチルニド

54.宿探し

思いのほか登録に時間を取られて時刻はもうお昼時を過ぎている
うちのお嬢様の何でもいいからとにかく早く食べたい
との申し上げにラトルが近くの店に案内してくれた

その店は低級冒険者御用達のお店らしく「安く」「早く」をモットーに営業しているらしい

「いらっしゃい」

店の中に入るとかなりガタイの良い筋肉質な店員がぶっきらぼうに答える

「席は適当に座んな」

ほとんど人の居ない店内はライトが点灯していなくそのからの光のみで若干薄暗い
先程の店員はそのまま厨房であろう部屋に入っていく

「メニュー見てもわかんない…ラトル適当に沢山頼んで〜」
「俺らも適当に頼む」
「分かった」

メニューを見ても「にく」や「にく盛り合わせ」「鮮魚の塩焼き」など非常に簡単な綴りのものばかり
全くと言っていいほど想像が出来ない
ラトルが注文をすると先程の筋肉質マッチョな店員とは別の若い女性がメイド服を彷彿させる衣装で来た

注文を取り終えるとウェイターは厨房の方へ行き注文を伝える
そして待つこと数分

「お待たせしました〜」
「おぉ〜♡」

大量の料理がテーブルに運ばれる
棍棒の様な肉、棒に串刺しにされた焼き魚、てんこ盛りな野菜などなどテーブルに置く場所が無くなるほど並べられた

「いっただきまーす!」


あんなにあった料理は1時間も持たずに綺麗に無くなっていた
風香、食べる量増えたわね?
5皿くらいはペロリと食べていたわね?
それでもごちそうさまでした〜と余裕綽々な声のトーンである…

味は一般的で特にこれといって不思議な味付けなどは無かった
そして、なんと言っても安さを売りにしているだけあって
1品辺り1〜2ブリンズ程度で非常に安く済んだ(普通の店は4ブリンズやそれ以上かかるらしい)
これは駆け出し冒険者にとってはありがたいわね

して、お昼ご飯も食べたことだし次は宿を探さないとね
メインの大通りは冒険者お断りな宿屋が多かった、これは旅行客などをメインにしたからなのだそう
お断りでない宿屋もあるけれど単価が高い、そしてロビーでのブリーフィングNGなどと言った制約も多くあまり冒険者に人気ではない

そんな中1つの宿屋に訪れる
戸をあけた時にベルが鳴り響くようになっており、その音を合図に奥から

「いらっしゃいませ〜」

と呼びかけられる
受付の場所には誰も居なかったが布で仕切られた向こうの部屋からは遠くまで届くようなハッキリとした少し年上の女性のような声が響く


声の直後に布を押しながら1人受付に入って来た
その人は全身が毛深く覆われており鼻が長く、まるで二足歩行で歩く少し(とは言い難いが)太った狼そのものである
その狼の女性は改めてもう一度いらっしゃいませと言いお辞儀をした

「冒険者さまですね、宿泊ですか?」
「はい、6人です」
「大部屋1部屋と個室1部屋なら空いております。2人部屋ですと4部屋は空いておりますよ」
「どうする?」
「大部屋と個室でいいんじゃねぇか?」
「俺もそれでいい」
「決まりね、大部屋と個室1部屋ずつで」
「かしこまりました」

受付の狼人族は鍵を2つ取り出し大部屋と個室とで分けて出してくれた

「料金は1泊、大部屋14ブリンズ個室8ブリンズね、翌朝に支払ってくれたらいいから。それから朝昼夕食はその都度追加で1人1ブリンズよ」

ごゆっくり〜と手を振りながら狼人族は奥の部屋へと入っていった
他の宿も少し料金を見たけれどここまで安いところは無かったわね
外観は少し年季の入った感じだったけれど内装はさほど気にならない感じだったし
新米冒険者にはとてもいい宿だわ

「宿も確保できた事だし、しばらく街を自由散策ってのはどうかしら?」
「「賛成!」」

クエストや冒険は明日からでもいいでしょ
知らない街を散策するのは少し楽しみだしね

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