異世界に召喚されて魔族になりました

ルルーチルニド

ss,あの日の夜から脱獄まで2

移動中も常に匂いは確認しておく
援軍は来ないと言っても既に居た奴らは数人は居るからな
まあ、そうでなくとも常に警戒するのは冒険者の性ってやつかな

「ん?これは…悪い、先に行っててくれ」
「なんだ?あまり遅くなるなよ!それとなるべく誰も殺すなって伝言だ!!」
「おう!」

移動中にリンの匂いがした
ついでにもう1人知ってる人族の匂いも
奴隷の監視にでも来てたのだろうか
そして、会いたくない奴の匂いだ

それはさておき、まず様子を伺おうと岩陰から覗き見る
戦闘中か、凛の圧倒的不利だな
そう状況判断した瞬間に凛が目くらましをして逃げようとしている
大男は怯んでいたがすぐに体制を立て直しリンを追おうとする

「待ちな!嬢ちゃん!」
「させねぇよ!」
「うわっなんだ?!」

左手に持っていた五角形の鉄製の盾を大男の足元へと投げつけ怯ませる、その隙に盾を拾い振り返ると同時に看守の首後ろに盾を叩き込む
そのまま看守は倒れ込みぐったりしている
凛はそのまま逃げれたようだ、もう後ろ姿もない

「久しぶりだな」
「お前か犬人族。この騒動もまた、お前の仕業か?」
「いや、今回のはさっきの女の子だよ」
「なるほどねぇ〜。んで、今回は丸腰じゃねぇんだな」
「事前に準備が出来たからな」
「それなら構えな、モルファスト参る!」

両手でその長剣を握り閃光の如く斬りつけてくる
それを左手の盾で受け止める、弾くにしては重すぎる剣撃だった
モルファストが体制を整える前に斧を横腹に目掛けて突き出す

「あぶねぇ! 」

危なげなく後ろにステップして避けて反撃が来る
もう一度盾で受け切るがそのまま距離を詰めてくる
やばい!そう思い後ろに下がる
距離を置いた直後、モルファストの膝蹴りは空を蹴る

「流石に読まれるか」
「俺も冒険者だからな、その手の戦闘術は何度も見た」

やはりこいつは強い
武器が整った所で楽に勝たせてくれる相手ではない
だが、ここで諦める訳にもいかない

「くらえ!!」

斧を大振りしわざと長剣で受けさせる
そこへがら空きになった腹に盾で殴る
が、鍔迫り合っていた斧に異常に力が込められ押し切られる
バランスを崩した結果、俺の左手はモルファストに届くことは無かった
そして、崩れたバランスを元に戻す前にモルファストの膝蹴りがみぞおちに入り膝を着く

「ぐっ!」
「そんなもんかっ?!」

膝蹴りのダメージはそれほど無かったがしばらくうずくまったポーズを取り、奴に近づいて来てもらう
十分近づいたところに足を目がけて斧で薙ぎ払うがジャンプして避けられる

「今だっ!」

斧を上に放り投げて注意を斧に向けさせる
その一瞬出来た隙にラグビー選手ようなタックルをする
モルファストが地面に着く前にタックルが決まる、そのまま奴を抱きしめ走り続ける

「んぁ?!」

予想外だったのか一瞬驚いた声を上げた
そのまま壁まで走り遠慮なく激突する

「っぐ!!」

まだだ、と言わんばかりに長剣を振り下ろして来る
俺は避けずに肩に盾を叩き込む

「ぐぁっ!」

苦痛の叫び声と共に長剣は俺を切らずに、力なくその場に落ちた
骨は折れてはいないだろう、脱臼くらいはしてるかもしれん

「なぜ確実に仕留められる所にしなかった?」
「なるべく殺すなとの指示だからな」
「ふっ、俺の負けだ、行きな」
「良いのかよ」
「今なら王国騎士長に告げ口する奴もいねぇしな、それに奴隷って制度もそんなに好きじゃねぇんだよ」

おいおい、それでいいのかよ

「んじゃ、遠慮なく」
「お前らとはまた会いそうな気がするぜ」

その台詞を背中に受け俺は合流地点へと急ぐ
広場に近づくとまだ通路だと言うのに鼓膜を破るかと思うほどの歓喜の声が聞こえてきた
一悶着あったのか?
俺が合流した瞬間にはもう出口へと向かっていた

お、置いていかれる所だった…
皆の後ろをついて行く
久しぶりに感じる外の風は、今までの疲れをはらい落としてくれるかの様にとても心地が良かった




「ありがとうね、ラトル」
「こちらこそありがとう、お前が居なかったら脱獄は無理だっただろう。だけど俺は置いていかれそうだったけどな」
「それは…その…悪かったわよ、でも全員把握なんて出来ないわよ」
「悪い、ただの意地悪だ」

そう言ってお互い笑いあった
そして、久々にソナルを見上げその眩しさに目を細めた

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