異世界に召喚されて魔族になりました

ルルーチルニド

8,私は死んだ

死後の世界について考えたことはあるかしら?
だいたいの人は天国とか地獄とか言ったり
そんなものあるわけない
そう言う

私もそう、死後の世界なんて存在しないと思ってたわ


……

………

ずっと暗闇の中に居る
これが?死後の世界…?

なんで【私】という認識だけができるの?
意識だけがここにある
何も見えない、何も聞こえない
温度は感じないのにどこかが寒い

「怖い…」

声を発しているのかも分からない

呆然としていた
何分経ったか…いや、何時間かもしれない
とにかく前に進もう
そう言う意識だけに集中しよう


……

「っ…?!?!」

あれは?!
ひ、光?!?!

そう思うと私はその小さく今にも消えそうな光に向かって走っていた
ちょっと嬉しくて泣きそうだわ

(貴方は何のために行くの?)

?!
頭の中に直接声が?
しかもどこかで聞いた覚えが?

だめだ、思い出せない

(貴方は何をしに行くの?)

幻聴とかではないらしい
何のため?何をしに行く??
そんなの決まってる

「あの子の…風香のために行くわ。つまらなかった私の人生に楽しさを与えてくれた風香に恩を返すために行くのよ!」

他人から見たらくだらない事なのかもしれない、気持ちの悪い執着とも見えるかも知れない

だけども私は風香にだけは笑って暮らせる明日を捧げたい
子どもの頃から私は武術を教えられてきた
家がとんでもない道場だったのよ
正直とても辛かった
そんな中、学校で仲良くなった風香との他愛のない会話とかで私は何度も救われてきた

だから少しでも風香が笑っていられる明日のために、私はどんな手でも使ってしまうだろう
風香だけは幸せになってほしい
いつしか私はそう思うようになっていた

光が強くなってきた
私はまだ生きられるのだろうか
目も開けられないほどの光の中に私は落ちた

「んむぅ…」

起き上がろうとした
が、胴体に違和感を感じた

「無理矢理起き上がらないでください!!」

誰かの声がした
目を開けつつその何かに問う

「だれ…」
「私達に名前はまだないです」
「そう」

目を開けなければ良かった事実を見ながら適当に聞き流す
私は最初に目に映った事から目が離せない

胴体に数本の剣が刺さってるのだけれど…

「…?」

おかしい

「痛くないわ?」

激痛が走ってもおかしくない光景に脳がバグりそうだった

「ご主人様には持続痛覚鈍化のスキルかありますから」
「この程度痛くなくてとーぜんなのです!」
「ダメージは自然治癒スキルで相殺していますのて安心してください」

さっきから喋ってくる方に目を向けると
コウモリが2匹羽ばたいていた

「コウ…モリ?」
「はい!ご主人様の従者です!」

理解が追いつかないとはこの事ね
今、分かるのはある程度意識がしっかりしてきたってことだけね

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