冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

第十二話 Eランク以上への無茶な依頼

僕達は今日も冒険者ギルド来ている。
装備を整えたい気持ちはあるが、これから買い戻しでお金が入る可能性もあり、もう少し待つことにした。

ランクアップしたことで受けることが出来る依頼も増えているだろうから、依頼票を確認する。


依頼票を確認しながら考え事をしてしまうが、おそらくギルドマスターはクロウの異常さに気付いて来ていると思う。

僕達も隠すことなくクロウの事も話してしまった。
従魔登録をしなかったが、しておくべきかと思っていると良さそうな依頼があった。


【ゴブリンが大量発生したようだ。森の調査をお願いしたい。領主より。】

僕達がゴブリンを大量に倒した事が原因と思うが、Eランク以上への依頼となっている。

はて? 大量のゴブリンがいないかの調査になると思うが、依頼ランクが低すぎないか?
調査依頼だからこんなものなのか?


不思議に思いながらもサクラも依頼を受けることに同意してくれたので、依頼票を持って受付に行く。

朝の時間帯でもあり、受付の列は長いが、Dランク押しの受け付けさんの前はガラガラだったのでそこに押し掛けた。

「ねえ、この依頼について詳しく聞きたいんだけど?」

僕がそう言うと男の受け付けさんは驚いた表情をして「ちょっと待ってろ。」と言い残し上の階に移動した。

そしてしばらくすると結局はギルドマスターの部屋に行くことになった。


「お前らがこの依頼を受けてくれるのか? もしそうであれば俺は嬉しいが、どうだ!」

どうだと言われても、詳しく聞きたいこともあったし、ギルマスに直接聞くのが正解か?

「僕達が受けてもいいけど、どうして依頼ランクが低いのか気になったし、何を持って依頼達成なのかも書かれてないし。僕達はまだ調査依頼を受けたことがないから、詳しく聞きたいんだ。」


そう返事をしたところ、ギルマスの話は次の通りだった。

領主とはこの町を治めている者で、貴族であるため町長とも呼ぶことができないのでそう呼ばれている。

依頼ランクが低いのは冒険者ギルドが領主に報告した内容が悪かった。
今回ゴブリンの集団、集落と思われる所を発見し討伐したのがFランクの冒険者だった。その事を聞き出されて仕方なく答えてしまった。

それを聞いた領主は、安くすむのであれば一番良いと、Eランクの達成報酬金額程度に報酬を低くしている。
冒険者ギルドももっと危険な依頼になると何度も説明したが、取り合ってくれなかった。Fランクの報酬額にするのを阻止したのが精一杯だった。

調査依頼は調査のみで、広い森だが出来る限り広範囲を確認しどの辺にどのくらいの魔物がいるか冒険者ギルドに報告する。

これも本来なら区分けをして大人数で調査する事が普通だそうだ。
魔物が不意をついて攻撃を加えてくる事を防ぐため、人数をかける。


何か僕達が悪いことをしてしまったように感じた。
本当は僕達に落ち度はないが、僕達の成果がこの依頼に確実に繋がっている。

責任をとり僕達がこの依頼を受けるが、達成条件をハッキリさせたい。このままではどこまで調べても結果が出ない依頼になっている。

「僕達が受けることはいいんですが、何を持って達成と判断されるのですか?」

僕達の言葉を聞いたギルマスが考えている。



「森の怪しい場所を報告してくれたらいいぞ。」


「怪しいとは? 森って広いよね? この森をくまなく調査するにはどれくらいの人数で、どのくらいの期間が必要なの通常は?」

またギルマスは考える。



「三十人か四十人で一月はかかるか……。」

おい!
大分無茶な依頼だな……。
誰がこんな依頼を受けるんだ?


「誰も受けないでしょこんな依頼。僕達も止めるよ。」


「そうだろうな、だが、俺も強くは進めない。森は気になるが、大切なギルド員をこんなことで失いたくないしな。」

「だったらこの依頼はどうなるの?」


「誰も受けてくれない依頼は、冒険者ギルドで冒険者にお願いしてみるな。それでも受ける冒険者がいないときは依頼内容や報酬の交渉をする。」


「あっ! じゃあやっぱり僕達が受けない方がいいんだね。」

僕達の言葉を聞いたギルマスの表情は冴えない。


「それでもな、もし本当にゴブリンでも集団がいたら、町や国の人に被害が及ぶかも知れないからな……。」


そんなことを言われると迷う。
僕達にまだ縁が無い町だが、心優しい者が傷つくのは心が痛む。


だがしかしここは心を鬼にしてまだ依頼は受けない。

これまで聞いたり考えたりして思ったのが、ここで僕達が依頼を受けて達成してしまうと、次に出される依頼も無茶なものになりそうだ。


ここはギルマスに頑張ってもらって依頼内容と報酬を交渉して貰おう。


「ごめんね、今は依頼を受けるときではないと思ったから今回は止めておくよ。」


「残念だがわかった。ただ、どうしようもないときは冒険者ギルドが冒険者を召集するかもしれないからその時は頼むぞ!」


「まー、皆が集まっているのを拒否する訳ではないけど、何でこんな冒険者になりたての僕達にそこまで話しているの?」

ギルマスはまた口を閉じ考えた。
今日のギルマスは考える……。


「何かお前らは何でも出来る、そう俺の勘が言っている。後は何故かお前らがその見た目のままの人間には見えない。ギルドプレートは嘘をつかないのにな……。」


何気に勘の良いギルマスの部屋を出て僕達はまた依頼票を確認する作業を開始した。

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