冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

第十三都市へ入場

デーブンの気合が入る言葉で終わった貴族や騎士、各ギルドのメンバーが門を開け中に入り始めた。
勇者はもちろん僕たちも参加は表明しており、陣形のやや前方に位置どっていた。

門を過ぎると目の前には破壊され、がれきとなった建物が見えた。
不思議と住人はおらず、死体が散乱していることもない。

僕たちはがれきを撤去してくれている冒険者が作った道を歩いて行く。

ダンジョンまでは先頭の人が案内してくれ、警戒も怠らない。

・・・・
・・・・

皆が何かを話ているが、小声であり地面を踏みしめる音が響く。

ダンジョンまで到達したが敵が襲ってくるわけでもなく、住人がいるわけでもなく、廃墟のようだった。

「サクラ? サクラの予想だとどんな展開になるかな?」

「そうね・・・、おそらくみんなダンジョンに連れて行かれたんじゃない? この中で過ごさせられているから、もう食料もつきそうだし、助からないかな・・・。」

「ん・・・、やっぱりそう思う? だけどなんでダンジョンに連れて行ったんだろう?」

「魔力じゃない? 強い魔物を生み出すように誰かが考えた・・・。そう思うわ。」

僕とサクラはダンジョンに連れて行かれたことを予想したが、どうかな?
そんなことを話、考えているとダンジョンに突入することになった。

ダンジョンの中は大勢で移動するのは厳しいので、時間差で慣れた仲間と小集団となり突入することになった。
勇者やデーブン、僕たちは離れていても話し合えるが、他のパーティーはその手段がない。
簡単に声や音での合図を打ち合わせた。

「おし! じゃあ俺から行くか!」
ガイアがそう言うと、デーブンが止めていた。

「何を言っているんだガイア。あなたの立場はみんなをまとめる事だ。突入は控えてほしいが、行くのなら中盤にしろ。先に行くのは強く前方の敵を蹴散らせる者。次に状況を判断でき、物事の決定力がある者が入るのだ。」

デーブンが上手くこの場を仕切ってくれている。
貴族もそこには反対もせず、ダンジョンに突入する順番が決まっていく。

先頭はコウキたちが入る。
次にダイチたちとセツナがパーティーとなり、ファンフートが一緒に行動するそうだ。
ファンフートは護衛の騎士が付くかと思ったが、ダイチたちを信頼すると言った。

その後は貴族が信頼している戦闘能力が高い騎士たちが入り、ようやくSランク冒険者パーティーが入ることになる。

どの程度の魔物や人物が潜んでいるかわからないので、Aランクの冒険者並みの戦闘力がない者は外の警戒に当たることになった。
貴族が例外で、騎士を連れ中に入る。
これは各国が自国の貢献を主張したいため、止めることはできなかった。
魔王討伐後の利権を争うのだろう。


順番も決まり僕たちもダンジョンに入ろうとしたところでデーブンとガイアに呼び止められた。

「【黒猫】、お前たちは実力を隠していただろ? 頼む、俺の大切な冒険者ギルドの仲間をよろしくな! 回復が得意なことも聞いているぞ。できるならだれも死なないように援助してくれたらありがたい・・・。」

「荷物運び情報ギルドは直接ダンジョンの中に入らないが、俺からもお願いだ。ラウール達なら大体の事はできるだろ? だから、手の届く範囲でいい、助けてくれ・・・。」

デーブンも珍しい。
あまりこういったお願いはないのに。


「わかってるよ。僕もわかる範囲で被害があるのは嫌だから、出来る限りのことはするよ。だけど一つだけお願いがある。魔王に一番先に到達したらで良いから、会話をさせて。どんな思いがあるのか知りたいから・・・。」

僕のこのお願いは任せると同意してくれた。

「じゃあ行こう!」

僕の合図で【黒猫】はダンジョンに入る。

そしてすぐに何かの気配がしたので振り向くと、ダンジョンコアがいた。
幸い誰も見ていないので、行き止まりまで急ぎ、なぜ出てきたのか聞いた。

「僕も行こうか? それともこの前言っていた魔王を補足したから、いるところまで転移する?」

おう、いい提案だが、転移については断った。

「途中でダンジョンの魔物に傷つけられる者がいるかもしれないから、追い越さない程度に進んで行くよ。だけど、一緒にいるとダンジョンの様子がわかる?」

「もっちろーん! 一緒に行く?」

「同行はこちらがお願いしたいよ。できたらその都度ダンジョンの様子を教えてもらえたら助かるよ。」

「おっけーい! 僕に任せて。」

あっさりとレアな人物? ダンジョンコアと一緒に進むことが決まった。
ダンジョンコアはひとまずの情報をくれた。

このダンジョンは全百階層があり、最奥はSランクのボスがいる。
過去に攻略した者はおらず、おおよそ魔王を感知した四十階層にはつよい集団であれば十日もあれば到達できる。
僕たちより前に入ってきた弱い者の集まりは十五階層にいるが、衰弱しているか死んでいる。
ものすごい速さで進んだものが少し前にいたが、魔王がいるところを通り過ぎてしまった。

「もしかして、元教育係が追い越した?」
僕はなぜか確信した。

その後は僕たちの前に入った集団を感知し、ピンチな時にそこまで連れて行ってもらいたいと告げた。


なぜ魔王は四十階層で止まっているのだろう?
なぜ元教育係は通り過ぎてしまったのだろう。

【黒猫】のみんなで話しをしながら先に進み始めた。

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