冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

オーク討伐に出発

結局僕たちは十日間やりたいことがなくて、人の姿の動きを確かめるために魔の森で魔物を殲滅していた。
中にはオークキングやオークロードもいて、今回の討伐目標のオークの拠点にどんな魔物がいても大丈夫と軽く考えていた。

武器も目立つ物は控えたほうが良いと、新たにアースドラゴンの爪で作ったナイフを人数分用意し装備した。
地味に見せかける工夫も抜けはない。
僕達ならどんな武器でも魔力を込めるとスパッと切れるから、何でもよかったんだが・・・。気分だ。

武器の準備まで万全に整え、僕たちは作戦開始日に荷物運び情報ギルドに入った。

そこにはすでに参加者がそろっているようで、職員を交えて自己紹介をしていった。
僕はボーとして聞いていたので、一人の名前も覚えていない・・・。

更にボーとしていると出発の時間になり、三つの馬車に別れて出発した。
もちろん僕たちは一つの自前の馬車に乗り込み門を出て外にいた冒険者と騎士と合流した。

さすがに人数が多く、オークの集落までは時間がかかりそうだ。

僕たちが到着して更に時間がたつと、全員がそろったのか偉そうな騎士が演説を始めた。
僕たちは遠すぎてよく聞こえなかったが、前にいる騎士は盛り上がっている。

そしてある程度時間が過ぎると演説が終わったのか、集団が移動を開始した。
騎士が二等辺三角形に展開し、冒険者が先頭の左右に分かれる。
更に僕たちが後ろにつき、最後方を騎士と冒険者が守る、そんな陣形だった。

その陣形のまま街道を進み、途中から森に入り先に進んだ。
食事の時間や休憩時間には簡単な設営をしている。
夜は騎士と冒険者が見張りをしている。
僕たちは物資を運び、言われた物をそれぞれの場所に運んでいた。

その中でもソフィアが運び込むと絡まれるので、ソフィアには馬車で留守番をしてもらう事にした。
馬車の周りも女性の騎士が好意で守ってくれている。
この騎士は絶対に守ると心に決めた。

大人数の移動は初めてだったが、時間がだいぶかかり、五日かけてオークの集落近くまで到着した。
その日は休むこととなり、明日総攻撃をかけることに決まった。

~~~~~

最終日まで大けがをする人もなく、オークもほとんど出現しなかった。
これは僕の勝手な予想だが、集落に向かっていることを予測して魔物を配置しているボスがいると感じている。
戦力をまとめ攻撃に備えている。
一番偉い人はちゃんと戦略を練っているか不安になった。
何か楽観的な雰囲気が漂っている。

ソフィアがいる馬車を守ってくれていた女騎士も「誰も怪我をしていませんね~。本当にあるのでしょうかね? 集落は。」などと言い出している。

呑気な気分だなと感じながらも、僕たちが口を出すことではないので黙っていた。

そして一晩寝て戦闘開始当日となった。

~~~~~

また偉そうな騎士が演説を始めたようで、周りの騎士が盛り上がっている。
この声で居場所がばれそうだなと僕たちは話していた。

あまり言いたくないが、この部隊を率いている人はダメだ・・・。
クロウの気配察知はまねできないだろうが、すでにこちらの動きが察知された気配がする。
魔物の陣形が整ってきている・・・。

おそらくいつか戦ったようなロード種がいるな。
他にも上位種が複数いて、オークだけではない気配だ。
クロウも警戒を始めている。

そんなことも知らずにまだ演説が続き、騎士もバカ騒ぎをしている・・・。
冒険者も何か言いたそうだが、騎士の中には貴族もいるだろうし騎士の身内や息がかかっている者もいる。
さすがに冒険者は文句があっても言えない雰囲気だ。

冒険者の最高戦力ではSランクのバイスがいるが、バイスも騎士には何も言わないようだ。
他はAランク数名、Bランク数名、Cランクが一番多い状態か?
やや劣るDランクも人数は多いな。Eランクは打ち漏らした魔物にあたる役か?

騎士の戦力はひどいな・・・。
強者の気配が少ない・・・。
数人頼みの配置か?
周りに気を張っているのもその騎士だけか。

改めてこの集団を見ると不安になってきた。
出来る限り死者は出したくなかったが、ここまで油断している人を助ける気が起きない・・・。
千匹はいると情報を得ているのに、これはなんだ?
やはり貴族が馬鹿か・・・。

「ねえみんな、これどうする?」

「ラウール、言いたいことはわかるわ。こんなのが騎士なんて・・・。自分たちが強いと思っているんでしょうね? もしかして、オークが一匹でも騎士を一人殺せるかもね。」

「我一番強い気配と戦いたい!」

「クロウ! それは俺の獲物だ!」

「我の!」

「そこで喧嘩をしないでくださいね。他にもちらほら強そうな気配があるでしょう。仲良く分けましょうね。ですがラウール、ラウールが言っているようにどうしましょう。守る価値がありますか?」

「・・・ない、とも言ってられないね。でも犠牲者が出ても心が痛まなそうだよ・・・。」

「そうねラウール。これはあきらめましょ。犠牲者がいてもこれはどうでもいいんじゃない? 初めは誰も死なせたくなかったけど、もういいわ・・・。」

僕とサクラは救えない命があってもいいとあきらめてしまった。

「俺もここまで馬鹿な集団は面倒を見ん!」

「我も一抜け!」

「そうですか・・・。私も無駄な努力はやめますね。何の為にここまで来たのでしょうね。ラウールが善良な人に被害が行かないように、あれだけこの討伐隊に入ることを悩んだのに、救いようがないですね。」

「せめてここでも慎重に行動できたらね・・・。あの盛り上がりの中の言葉で聞こえてくるのは、自分がいかに手柄を上げるかだけだものね。守るではなくて、自分の昇進の為に戦っているみたいだしね・・・。」

今回色々動いて討伐隊に入ったことが馬鹿みたいだと感じたラウール。
こんな事だったらもうフロックリンから立ち去っておくべきだったとみんなが考えた。

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