冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

ヤマトの冒険者登録

僕たちは両親と別れ、ニジュールヘ移動した。
街に入り、冒険者ギルドに向かう。


街の中では美しさでソフィアが目立ち、厳つさでもヤマトが目立っている。
結果的に僕とサクラ、クロウも目立つことになる。


何人かは、僕たちを見つけた後に走り出していた。


目立ちながらも冒険者ギルドに到着し、受け付けに進む。
さすがに順番を譲る冒険者はいなかったが、明らかに避けられている・・・。


「お久しぶりですシトカさん! 今日は冒険者活動の再開とパーティー登録、それと・・・、ヤマトの冒険者登録をお願いします!」


急に話しかけられたシトカは動きが止まっている。何度か目をパチパチさせ、ようやく口を開いた。


「お久しぶりですラウールさん。冒険者活動を再開とは?」


「一年ほど魔の森に籠っていたので、全く依頼を受けていなかったんですよ~。だけどそろそろ依頼を受けようかな~と思って。仲間も増えましたしね。」


「ま・・、魔の森ですか・・・。そこは籠る所でしょうか・・・。」


「まーまー、それは置いておいて、ヤマトの冒険者登録を頼むよ!」


「おう! 俺を冒険者に登録してくれ!」


シトカは目の前の獣人が登録するとは思っていなかったようで、また止まった。


・・・・
・・・・


「よう! ダメか!?」


「はっ! 申し訳ありません・・・。強そうな姿を見て、てっきり登録されているものと思っていました。」


「初めてだぞ! よろしくな!」


「よろしくお願いします。それではこちらに必要事項を記入してください。」


そう言うとシトカは登録用紙を出した。


その紙にヤマトが必要事項を記入し、シトカに渡した。


シトカはヤマトが書いた用紙を見て、僕に質問をしてきた。


僕は聞かれたままに答えた。
ヤマトの戦闘力は僕たちと同じくらいある。採取も上手い。罪のあるものを討伐することができる。人柄も僕が保証する。


その言葉を聞き、シトカは少し待っていて欲しいと告げ、奥の部屋に消えた。


少しの時間待っているとシトカが戻ってきて、ヤマトに告げた。


「ギルドマスターのウールに確認をとりました。Sランクのラウールさんが保証する人物であれば、Bランクで登録するようにとのことです。」


・・・・


「いきなりBランクになるんだ・・・。すごいねヤマト!」


「イヤイヤ、お前らが凄いからこそだろ!」


それを聞いていたシトカが口を挟んだ。


「二人ともですよ。強さが保証され、一緒にパーティーも組む。それだけでギルドは依頼を円滑に達成できる可能性が上がる。高ランクの依頼は、多くはないのですが、難しいので。ラウールさんたち【黒猫】には頑張って頂きたいとのことですよ。」


そうして無事にヤマトの冒険者登録を終えた。


ソフィアも冒険者活動を再開するためにプレートを見せると、またシトカが驚いていた。


僕たち【黒猫】も冒険者活動を再開し、ヤマトとソフィアをパーティーに加える手続きをする。
そしてしばらくはニジュールで活動することも伝えた。


「それではこれで手続きは終了です。【黒猫】の皆さんはこれからお時間はありますか?」


時間?
僕たちはすぐに何かをすると決めていなかったが、小声で話し合った。
誰も急ぐものはないという結果になり、シトカに返事をする。


「できましたら、ウールが話をしたいと申しています。別室に移動して頂けますか?」


これからの事も考え、ウールとは話をしておこうと、案内されるがまま移動した。


飲み物が出され、一息つくとドアがノックされた。


「今回はすまない。急な願いに答えてくれて感謝する。」
部屋に入るなりウールは頭を下げた。
そして、テーブルを挟んだ僕の目の前の椅子に座った。


「今回話したいことは内緒にしてもらいたいが良いか?」


どんな話かはわからないが、僕たちは誰かに何かを言う者がいないので同意する。


「ありがたい。これから話すことは、この国の機密にも関わる事だ。国からの依頼があり、信頼できる者にのみ話をしている。各国の冒険者ギルドも同様な動きをしている。」


・・・・
ウールはそこで一度飲み物をのみ、一呼吸おいてから話し始めた。


内容はある程度僕たちに有意義なものだった。


三ヶ月前に神託があり、魔王が出現することを国は知っている。


一ヶ月前に、正しい手順で勇者召喚を行った。


今現在は基礎訓練を終えた勇者が、騎士や高ランク冒険者と旅に出る準備をしている。


二~三年後に魔王が出現すると言われているため、少しでも早く勇者を強くしたいそうだ。
旅の途中で新たな情報を得られたらもうけものだし、魔王に変化する前に討伐することができたらな尚更良い。そんな考えもあるようだ。


今回の魔王は、魔物が進化するのか、魔王として初めから現れるのかはわかっていないので、被害をできる限り少なくしたい。
苦肉の策にも思えるが・・・。


召喚された勇者達は・・・、達と言われる人数だが、初めは混乱していたが、諦めなのか今は訓練に勤しんでいる。


金銭面では、各貴族が負担している。だが貴族の中には悪巧みをする者もいるため、勇者が取り込まれないように、できるだけ信頼できる冒険者に預けたいようだ。




もちろんファンフート・テザンも受け持っている勇者がおり、ダイチ達が先輩として、一つのグループを受け持つことが決定している。


出来れば依頼として引き受けて欲しいとウールに頭を下げられた。


勇者は特殊な能力があり、能力は上がりやすい。ただ、戦闘に向かないものもいる。


そこで依頼期間は勇者が独り立ちするまで。もしくは魔王を討伐するまでとなる。
勇者にかかる金銭的負担は貴族が負う。
旅の間の負担は、各ギルドに請求すると受けとることができる。
金銭負担は無制限ではない。




さて、ここまでの情報で、この依頼はどうしようかな。



「冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く