冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

ラウールの役割り

次の日にはすでにカーシン伯爵に呼び出され、館にいた。
目の前にはカーシン伯爵とセバスがいる。


「今回はよろしくなラウール!」


軽い・・・。


「よろしくお願いします。それで、僕はどんな役割を?」


少しもったいぶった態度でカーシン伯爵が話し出した。


「まずは、今回は俺のお願いでこんな無茶な状況になった、すまん・・・。そしてまたお願いだ・・・、王国の者が少しでも命を落とさないように協力してくれ! 帝国の者も命はある・・・、しかし勝手に権力争いをしている者まで怪我をさせないでくれとは言えん。悪いが、帝国兵には遠慮せずに攻撃してほしい。すべての負は俺が背負うから・・。」


思った以上にカーシン伯爵は考えていたようだ。
僕が帝国兵を殺した後・・・、盗賊とも違う存在・・・。
しかし、僕の大切な人の為に僕は乗り越える!


「そこでラウールとサクラは俺の傍にいてほしい。冒険者ギルドには話をしておく。今回の冒険者ギルドの立ち位置は規定通り中立だ。どちらに肩入れもしないが、行くなら勝手にどうぞだ。しかし帝国はどういうわけか冒険者ギルドも動かしているようだ。」


「そんなことが出来るのですか?」


「ギルドマスターが手を加えるとできない事も無いようだ・・・。何か帝国側から良い条件を提示されて受け入れたのだろう。」


「権力にね・・・。」


「そう、権力に負ける冒険者やギルマスなど、冒険者ではない! 自由・・・、自由に生きるのが冒険者だ!」


お・・・、う。熱い!


「それで僕の役割りは?」


「すまん・・・。俺は冒険者を尊敬してるからな! それでちょっとな・・・。それでラウールとサクラに頼みたいのは、お前たちの役割りをどうしたら一番犠牲が少ない?」


おう・・・。丸投げか?


「僕とサクラは攻撃も回復も魔法でできます。広範囲殲滅もできますし、近距離で武器での攻撃もできますよ。回復も、死んでなきゃ何とでもできるかな? ちなみにこのクロウも僕たちくらいは魔法を使えますよ。あっ、回復は試してないや・・・。」


目の前のカーシン伯爵の動きが止まった・・・。


「言いすぎました! 全部嘘です!」


「おい!」


「と言うのも嘘です。」


「おい!」


「まーここで言ったことは内緒でお願いします。」


「それは承知した!」


僕はカーシン伯爵を信用して、少し話すことにした。


「今まで言った事は本当です。僕の方が回復はうまいです。ただ、一瞬のひらめきはサクラかな? クロウは広範囲の攻撃で手加減できない時があります。なんとなく気配で色々わかりますし、威圧で弱い人は制圧できるかもしれません。ただ、集団行動は苦手です・・・。」


「ん~・・・。そうか、そうだな、ラウール達には先制攻撃をお願いするか? そしてその後は各個撃破で。しばらくしたら、傷ついたものを回復してもらうか。それぞれで動けるように。」


「それだとありがたいですけど、敵はどの程度の人数なんですか?」


「今わかっている情報だと、2万人。こちらも同じくらいの人数だ。」


ん~2万人とは多いのか?
この世界では前世より人口は少なく感じている。
大きな街も面積が小さく、その中で人混みがあるから、正確な人数を考えたことがなかった。
ただ、街を歩けば知っている顔がある程度であるから、田舎町程度の人口は街にいるとする。
そうすると2万人は多いな。


「2万人で強さは?」


「徴兵された兵士は、成人男性で動きが良い者だけだろう。兵士は、冒険者で言うとD~Cランク程度か? 騎士はBランクはあるのではないかな。そこにSランク冒険者がいるだろう。そして軍隊である組織の強き者も、Sランク冒険者程度の強さはあるだろう。」


ん~、微妙だな。
Sランク冒険者で今まで見たことのある人であれば、そこまで強くない。
Sランクの魔物の方が当然強い。
その魔物で遊べる程度に強くなってしまったからな。


もしかして、もしかしてだけど・・・、僕達だけで殲滅できるのではないか?
しかし目立つことを許容しても、目立ちすぎるか?
それともここも飛びぬけたほうが良いか?


「一回の攻撃で終わらせてもいいのでしょうか?」


・・・・
・・・・・


・・・・・
・・・・


・・・


・・・


「一回の攻撃で・・・・。それは、出来るから言っているのか・・・・?」


・・・・


「予想だけですけどできるかと。僕達の中の一人でも、Sランクの魔物は一撃・・・、ですが。」


・・・・
・・・・


・・・・




・・・・・・


「は~?」


「ここだけの話ですよ? 僕たちはクロウを手に入れるためにSランクの魔物をダンジョンで1日に4回倒していました。そして、倒していると段々試すことも多くなって、そのうち色々と実験しながら倒していまして・・・。倒すだけなら、余裕でした。そして僕たちの中の誰か一人でも本気で魔法を使うと・・・、地形が変わります・・・。」


「は~!?」


「ですから、どの程度まで力を出したらいいのか?」


カーシンは予想以上の言葉を聞いて混乱した。
実力があるのは知っている。
しかし、ここまでの実力があるのは・・・、信じていいのか?
しかしクロースから、クロウの力は聞いている。
手加減している状況でも全員の実力がものすごいものだと。
Sランク冒険者と比べても、比較できないほどの実力差があると聞いている。


「ラウールとサクラ、そしてクロウはどこまで覚悟が決まっている?お前らの実力をすべて知られてもいいか?そして、敵とはいえ、多くの人を殺すことになるが、覚悟はいいのか・・・?」


僕はずっと考えていた。
敵とはいえ人を一度に大量に殺すことが出来るのか?
大切な人の平穏を守ると言う目的があるとはいえ、僕は・・・。


「大切な人の為に頑張ります・・・。」


「うん! ラウールもサクラも、お前たちは俺が依頼してすることだ。すべては命令した俺が最終的な責任だ。傷ついた味方も、殺した敵も・・・。すべては俺が責任をとるものだ。お前たちが何も負を追うことはない。それが戦争だ。心に何かが引っかかるだろう。それが正常だ。だがそこは俺に責任をとらせてくれ。それが貴族である俺の責務だ! 一兵は全力を尽くす! 将はただ責任をとる! それでいいのだ。」


僕の心に響いた。
僕は全力を尽くす。
ただ全力を。


カーシン伯爵の話では、開戦はもうすぐだ。
魔物が倒され始めてから準備は進んでいたようだ。


僕はこの世界に来て初めて全力を尽くす・・・。
後のことは、考えないでおこう・・・。

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