冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

初めてのダンジョン

僕たちは冒険者ギルドにいた。周りのざわめきは割愛する。
 受付で、初心者でも簡単なダンジョンがないか聞くと、そのまま【初心者のダンジョン】があると言う。これはクライスの街で一番階層が短く、魔物も弱く、罠もわかりやすく、まるで練習しろよと言うようなダンジョンらしい。
そのことを聞いたラウールとサクラの、行き先が決定した。そしてもう少し情報を聞いてみると、ダンジョンによって危険度は違うが、ダンジョンに入る条件は時にないと言う。入ったことと出たことだけ、ダンジョンの入り口にいる人に伝えるだけだと言う。そして、その人は、どのギルドにも所属していない人になっているそうだ。利益が出るものだから、どのギルドにも不公平にならないための措置のようだ。ただ、ダンジョンに入るのはほとんどが冒険者か、国を守る役割の者である。一般人はよほどのことがない限り立ち入らないと言う。
ダンジョンの素材や宝は、冒険者ギルドでも、商人ギルドでも買い取ってくれるが、冒険者は冒険者ギルドに売ることで依頼達成数を稼ぐことが出来るそうだ。また、依頼票をわざわざ持っていくかなくとも、素材の売却が常設依頼になっているとのことだ。


 冒険者ギルドをでて、ラウールとサクラは初心者のダンジョンに向かっていた。
 「ね~サクラ、初心者のダンジョンって、地下5階までで、出て来る魔物もスライム系統だけなんだってね。」


 「そういってたね。だったら、罠系統の練習にしようよ。ラウールも私も2人で探してみよう。」


 「そうだね。多分だけど、僕達ならスライムでかすり傷もおわないから。」


そういって二人は話しながら、目的地に着いた。
そこには、初々しい冒険者らしき人が大勢いた。


 「ん~、さすがに並んでるのか~。」


 「初心者って私たちもだけど、初々しいね。」


 「そうだね。僕はランクが高いけど、普通なら僕の年齢はまだランクが低いはずだしね。」


 周りを見渡しても、ラウールより幼い冒険者はほとんどいない。そうやってサクラと2人で周りの冒険者を見渡し、会話していると、ラウール達の順番が来た。入り口では名前を尋ねられただけで、特に他のやり取りはなかった。


 「とうとう初ダンジョンだね!行こうサクラ!」


 「そうね、行きましょラウール!」


そう言って2人は僕を構え、先に進んで行った。
ちなみに、ライダース装備をラウールはしていない。
ここまでくる間に手に入れている物から選んでいた。
ラウールは丈夫そうな服とローブ、どちらも黒のもの。剣は月光を持っている。
サクラも丈夫そうな服とローブ、色は深い緑。武器は大鎌だ。なんでもロマンだそうだ・・・。
 月光以外は、いわゆる初心者でも手に入る素材でできている。


 【初心者のダンジョン1階】
 思っていたより広い。そして、草原タイプのようだ。気配を探ると周りには人の気配しかしていない。スライムは全て他の冒険者に倒されているようだ。そして、出来るだけ広く気配察知すると、不自然な魔力があるところが2か所ある。そのことはサクラも察知したようで、2人でその方向に進んで行った。


 1つの魔力は、地面から感じた。
 「ラウール?ここじゃない?変な魔力を感じるところは。」


 「そうだね。この地面はなんか変だね?ちょっと魔法で石をぶつけてみる?」


 「少し離れて試してみようか。」


そういって2人は距離を開けた。そしてラウールが地面の土も利用し魔法を使用したときに、違和感を感じた。


 「サクラ・・・、ダンジョンの中は、あまり地面の土を利用できないみたいだ。魔力が通るのが、表面だけみたい。」


そう言われたサクラも魔力を通してみているようだ。そしてラウールに向かって、
 「そうね、自然を利用しにくい状況みたいね。外なら、よく物語であったように、家でも作れるのにね。」


そう、この2人は逃亡しながらも、魔法の可能性を探っていた。そして、自然や地球の知識を利用する場合と、自分の魔力だけに頼る方法との違いを感じていた。特に、自分の魔力だけを利用するときには、だいぶ魔力を使用しなければならなかった。
そしてラウールはララから聞いた理論で、自身の魔力と周囲の魔素を混ぜる事以外に、地球の知識を利用することですさまじい魔法を使用していた。サクラに教えた事も、ラウールが体験していたため教えることが出来るものであった。そして2人は地球の知識と言う共通の部分があることで、この世界の人よりも魔法の使い方が上手かった。


 「ちょっとだけ外よりハンデだね?それでもサクラ、僕たちの魔力は多いし強いから大丈夫だよ。」


 「それでは初めに私が・・・、落石!」
と、罠であろう部分に岩を落としていた。


ズボン!!


と何かの音がした後に、そこには落とし穴が出現していた。


 「やっぱり罠ね?」


 「そうだね。これくらいの深さなら、ちょっと足を取られてしまうけど、怪我もしないね。」


 「でもこれがすごい深かったり、下に鋭利物があった場合は大変ね?」


 「そうだねサクラ。それでもこれで罠の見分けはつきそうだから、もう一つの不自然なところに行ってみよう。」


 2人は先に進んで行った。草原なので、不自然な魔力のある方向に進むと迷うことはない。
そしてしばらく歩くと、目の前に階段があった。


 「・・・・あっけないね。」
ラウールは項垂れた。


 「そうだね・・・。」
サクラは肩を落とした。


 「それでも、この感覚を思えておこうね。なんとなくの違いも分かったし、他のダンジョンでも利用できる業だね?サクラはどう?」


 「私はたぶんラウールよりはちょっと違いが判らないと思う。ただ、慣れて行ったら大丈夫かな?」


 「僕は魔法以外のスキルもあるからね。それでもサクラも子のダンジョンで練習したらわかるよきっと!」


 「うん!私も頑張る。」


 2人は階段を下りて行った。そして怪しいところに寄り道しながら、どんな罠があるのか確認した。罠の解除が出来ないかも試してみたが、今はわからなかった。そして順調に5階層までついてしまった。5階層も特に問題になるところもなく先に進んだ。そして、罠でもなく、階段でもない不自然な所は、門だった。


 「ねえラウール?ここが最後の部屋かな?」


 「おそらくね。とんでもなく大きな門だけど、これはどうやったら空くのかな?」


 「4階あたりから他の冒険者がいなくなったものね?」


 「ん~、初心者のダンジョンとは言え、初心者にスライムは苦戦しそうだしね。叩き潰すか、魔法を使うかだしね。ある程度の力があれば大丈夫だけどね。」


そう話しながら門に更に近づくと、門が自然に開き始めた。


 「近づくと開く門か?次からは気を付けないとね。自分たちのタイミングで入れないと苦戦する場所もあるかもしれないから・・・。」


そう言って2人は門の先に進んだ。

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