冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

盗賊討伐開始前日

話し合い当日、僕は冒険者ギルドに入った。
話し合いはギルド2階、会議室で行われるという事で、チルミさんに案内された。
 案内された部屋には、ギルドマスターのランバードさんが座って待っていた。その横には男が2人座っている。
その2人に挨拶をすると、ギルドマスターは僕に紹介してくれた。相手にも僕の事を説明してくれていたようで、ごたごたすることはなかった。


 【希望の家】
リーダー:Sランク冒険者:カシマス:男:30歳:片手剣使い:190CMはある長身。細マッチョ:金髪:肩まである髪を男ながらにポニーテールに結んだイケメンだ。


サブリーダー:Aランク冒険者:フラロ:男:27歳:土魔法使い:170CMやせ型:赤いスポーツ刈り:四角い輪郭で、眉が太くいかつい


 まるで職業が逆のような二人だが、実力は高いという。クランも50名と大所帯で、僕が入らなければ、このクランだけで討伐依頼を進めるようだった。騎士がいるため、25名の参加で、バランスよい人材を選ぶという。
クランの信頼度も高く、スタスデの街に迫る危険があった時には、必ずクランの誰かを参加させているという事。後輩の育成にも定評があり、孤児を引き取り育てることもあるようだ。今回は、この街へ不利益を与える盗賊を許すことが出来ず、リーダー自ら参加するそうだ。


 僕たちはお互い握手を交わした後、無言で騎士を待っていた。


 ~~~~~~~~~~


 待ち合わせの時間をかなりすぎ、騎士たちが到着したという報告があった。騎士も2名話し合いに参加するようだ。


 騎士の偉そうなほうが入ってくるなり
『さー話し合いを始めよう。』と言い出したところで、隣にいた小柄な騎士が遮り、「隊長、まずは遅れたお詫びを・・。皆さん申し訳ありませんでした。出発前にちょっとひと悶着ありまして…。」


 偉そうな騎士も
「すまなかった。ランバードもすまん。騎士の間でも色々あってな。」


ランバードが、
 「お前がそういうならそうなんだろう。俺はお前は信頼している。そのお前の言う事ならな。遅れたことは何も言わない。」


 「ありがとう。それでは早速だが、俺の上司である大隊長が、冒険者の手を借りなくとも討伐できるだろうと言い出した。それを領主まで話しに行き、今回の共同討伐が中止になった。ワシも出発前に知らされて・・。何が何だかわからないが、すまん。」


 困惑した顔のランバードが聞き返した。
 「それはどういうことだ! 騎士の人数を増やすという事か? お前たち騎士は、機動力が冒険者より悪いから、今回の計画になったはずだ!」


 顔をしかめた隊長も話し出す。
 「そうだ、だからこそ話を持ち掛けた。しかし、決定は覆らん。ギルドには迷惑をかけた。迷惑料はワシがだす!許してくれ・・・。」


 隣で聞いていたカシマスが
「では、私たちは単独で討伐に向かう。依頼でなければ騎士も何も言えないはずだ。この街の危険は見逃せん。私たちのクランのすべてをかけて盗賊を根絶やしにしてこよう。」


 「ちょっと待て、ギルドはそこにいた盗賊を討伐することについては何も言えん。だからと言って200人の盗賊の集団に向かうのは、止めさせてもらう。」
ランバードは立ち上がり、必死な表情で話し始めた。


 「すまん・・。どちらも遠慮してくれ。今回は領主が、盗賊討伐隊の邪魔をした者は全て処罰すると言っている。お前たちも邪魔をしたとされ、クランを解体させられる危険がある」


・・・・・
 ・・・・


話し合いが続いている。僕が口をは挟むタイミングが無い。
クランに手を出したら許さないとか、クランがすべて相手になるとか、リーダー止めてとか、ギルドを敵にするのかとか、ワシの顔に免じてとか、隊長は悪くないとか言い合いが続いている。


 僕もだいぶ聞いてるだけなのもつまらなくなってきたので
「帰っていいですか?」
と切り出した。


 「「「いやいやいや!!」」」


 「ラウール、お前の言いたいこともわかるが、もう少し待ってくれ。このギルドをかけて、盗賊は討伐したい。こいつを説得するまで待ってくれ。」
 焦りながらもランバードが返事をしてくる。


 「いやいや、もう無理ですよね。街の偉い人が決めていますから。貴族?とかですよね。いくらギルドとはいえ、貴族に表立って反発するのは良くないですよね??」


 「そうだが・・。」


そこでラウールがひらめいた。僕は盗賊討伐をしたいと今は思っている。善良な人が大切に思っている人に危害が加えられないように・・。
こんないきなり作戦を変える上司がいる組織など、チートな人1人がひっくり返すことが出来ると。


 「僕はこれから散歩に出かけます。子供の一人歩きは危ないだろうな~。少し金目のものがあれば、強そうな護衛がいても襲ってくるだろうな~。怖いな~誰かついてきてくれないかな~。」


そう話し出すと、カシマスさんが何か気づいたように視線を送ってきた。


 「ラウール君、私がついて行こうか。子供の一人歩きは危ない。Sランクの僕がいれば100人や200人、もっと襲ってきても返り討ちにしてあげるよ。もし、危ないところに間違って入っていっても、僕が守ってあげるよ。」
カシマスは人の強さをなんとなく察することが出来る。Sランクになる人は観察力がないといけない。相手の強さを見抜くことも能力の1つだ。そのカシマスが、目の前にいるラウール君は強い、そう自分の感覚が教えてくれる。


 「ありがとう。じゃあ行こう。ここにいても依頼がなくなったから。じゃあギルマス。また明日!」


 「私たちも帰りましょう。ではごきげんよう。」


・・・・・・。


 後に残されたギルマスと騎士は、話し合いを続けるのであった。

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