冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

帰る場所

「行ってきます!!」


 僕は両親に別れを告げ、これから旅立つ。


 昨日までにこの町で知り合った人たちには別れを告げた。アリサさんなんかは、涙を流してくれた。この世界を旅することになると、年単位で再会できな。前世で有れば、距離はあってないようなもので、移動は早い。声が聞きたくなれば一瞬で連絡がつく。僕もここまで育ててくれた両親と離れるのはつらい。次に会うときには、どんな様子で迎えてくれるのか? 心配が多すぎて、旅を止めようかとも考えた。
けど、両親が背中を押してくれた。まだ見ぬ世界、この広い世界で、この街しか知らないのは不幸だと・・・。


12歳というまだ子供の年齢だが、旅をしている子供がいないわけではないようだ。この世界では、仕事につく年齢と言うのもはっきりしていない。学校はこの街にもあるが、ほとんどは貴族の子供が通っていて、我々庶民は小さなころから家の手伝いや、どこかの職人、商人などに弟子入りして生計を立てていくそうだ。僕は冒険者となり、自由職として飛び回ることが出来る。その立場を両親が認めてくれ、旅をさせてくれる。Bランク冒険者は危険もあるが、その分収入もよい。僕はチートもあり、強さも申し分ない。だから、前世では自由にならなかった時間を、今回の人生では有意義に使いたい。


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 母様は話しにくそうにしていたが、僕の生まれの事を旅に出る前に知っていてほしいと話をしてくれた。ある程度は知っているけど、静かに話しを聞いていた。
 生みの親を悪く言わないように気を付けていたようだが、父はロドリゲスというようだ。冒険者登録をしていたため、父様とは知り合いになったみたい。しかし、どんな仕事も続かないようで、いろんな仕事をしていて、何日も家に帰らず、酒浸りの毎日を送っていたようだ。生みの母はローリーと言うようだ。良くも悪くも自分と言うものが無く、ロドリゲスに依存していて、毎日家で帰りを待っているような女だったようだ。僕が生まれたことは喜んでいたようだけど、それよりもロドリゲスの子供という事が重要で、ロドリゲスがいらないと言った僕は、もういらない存在になったようだ。はっきりと話してくれたわけではないけど、そういう事らしい。


 最後に母様は生みの親を選ぶのであれば、私たちの事を忘れて、幸せに暮らしてほしいと言った。
 僕はすぐ「それはないよ!」と言ってしまった。僕の両親はララ、ミックと言う。他に親はいないと言ったら、2人とも泣いていた。


もともと、僕が4歳のころ、高熱が続いたことがあった。現代でいう風邪だと思うけど、二人は寝ずに僕を看病してくれた。2人とも僕が少しでも苦しそうにすると心配し、少しでも楽になるように頭をなでてくれた。そして元気になった時には2人とも気が抜けて寝込んでしまった。そんな2人を見て、「あ~この二人が親でよかった・・」と思い、それまで照れ臭かったからあまり呼んだことが無かったけど、父様、母様と呼ぶようになった。


 (長生きしてね・・・)


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 別れの挨拶を済ませ、僕は一人で街の外に立っている。
 今日も門番はスコットさんだ。スコットさんは僕が門を出て街へ振り返ると


「頑張ってきなラウール!! 俺もだが、お前の知り合いはミックとララが困っていたら手を差し伸べる。お前はお前の人生を行け!!」


と胸に手を当て、見送ってくれた。


 「ありがとうスコットさん! スコットさんが死ぬ前には帰ってきます!!」
と両親と同じ年くらいのスコットさんに叫び、僕は出発した。 

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