君の生きる希望になりたい

ほたる

君との出会い(1)

今日もまた僕の産まれた家に、
エンジン音が聞こえ車が止まった。


呼び鈴が鳴り、
僕達を守るようにお母さんが
ワフッ!ワフッ!と興奮して鳴いた。



女の人が出迎えに行ってすぐ、
4人の家族を連れて戻って来た。




女の人が1番身体の小さな僕を抱きかかえた。


僕をそっと床に降ろすと、
手を丸めて甲を僕の鼻先に出した。



同じように手を出して来た女の子に、
僕は寄って行った。


その女の子は、
ポカポカと暖かい外の匂いがした。

太陽の光を沢山浴びて帰って来たお母さんの匂いにも似ていた。



その隣りに座って居た女の人は、
ほのかに甘い洗剤の匂いがした。

とっても落ち着く大好きな匂いだった。



一回り大きな手をした男の人は、
太陽の匂いと少しの汗の匂いがした。

顔を見ると目尻に皺を寄せて笑っていた。




その男の人にくっ付いて座る男の子は、
僕の前に恐る恐る手の甲を出してきた。


でも僕が寄って行くと、
驚いた様子で手を引っ込めてしまった。



その男の子からは、
僕に痛い事をした大嫌いな場所に似た匂いがした。


何故こんな匂いが、
男の子からするのかが分からなくて、
嫌いな場所の匂いなのに興味が湧いていた。




何度もクンクンと匂いを嗅いで、
ポカポカの太陽の匂いがする女の子に抱っこされた。



僕を育ててくれた女の人と話をしていた男の人は、
一通り話しが終わったのか、
ご飯の匂いがする袋を受け取って立ち上がった。



僕も女の子の腕の中に抱えられたまま、
産まれ育った家を離れた。



車に乗った後も女の子は僕を抱きかかえたまま。


優しく何度も何度も背中を撫でてくれた。



隣りに座る男の子は僕を見るだけで、
まだ緊張した顔をしていて触ってくれない…。








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