君の生きる希望になりたい

ほたる

僕の世界の始まり(1)

僕は、ゴールデンレトリバーの男の子。


僕を産んでくれたお母さんは優しい垂れ目をしている。



お父さん?

僕はお父さんの事をあまり知らないんだ…。



僕の兄弟は僕を含めて7頭。



お兄ちゃんが2頭とお姉ちゃんが4頭。


それから末っ子の僕。



この世界に出て来るには、
狭くて苦しい道を通るという大きな試練があるんだ。


頑張って…頑張って…

ようやくお母さんのお腹の外に出れたら、
大きく息を吸ってそれからお乳を探すんだ。



でも僕の先に産まれたお兄ちゃんやお姉ちゃんが沢山いるから、
お乳にはなかなか辿り着けない…。


そんな僕を見かねたお母さんが、
僕を咥えてお乳の傍に置いてくれた。


前足でお母さんのお腹をググッと押して沢山お乳を吸うんだ。



お腹がいっぱいになってウトウトしながら、
兄弟の輪の中に入って眠る。


兄弟の温もりとお母さんの湿った舌が、
僕をリラックスさせてくれるんだ。




それから、お母さんは僕達の顔やお尻を舐めて綺麗にしてくれる。


まだまだ上手く踏ん張れない僕のお尻を舐めて排泄のお手伝いをしてくれる。



僕達は産まれた時から鼻がとっても効く。

それは、目と耳が開いてないから。


匂いでお母さんやお兄ちゃんお姉ちゃんを探すんだ。






僕がこの世界に出て来て、
お乳を吸って…眠って…を繰り返していたある日


目の前をぼやぁとした影が動くのを見たんだ。


その影の後を着いていくうちに、
それがお兄ちゃんだと気づいた。


ずっと一緒に大きくなってきたのに、
お兄ちゃん達の姿を見た時は、
まるで初めましてのような気分だった。




目の前の物がはっきり見えるようになった頃、
足の踏ん張りがしっかりして来て、
少しだけ視線が高くなった。


僕は、初めてお腹を上げて歩けたんだ。




ポテポテと前に進んでは、

コロンと転がって……。


兄弟たちのしっぽや耳を追いかけようとしては転がって……。



沢山たぁくさん、お母さんのお乳を吸って。




そして気づいたら産まれた頃よりも、

フワフワな毛が身体を覆っていて、
身体付きもコロコロと大きくなっていた。



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