君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜

高見 燈

章の終わり 幼馴染みの会話

 ーーカルデラさん。

 イレーネ国、“蒼騎士団”の第3部隊将軍。
 と言う役職らしい。

 蒼騎士団は、私達が捕まった時にいた蒼い鎧を着たあのブロンドイケメン。
 “サデュー•ナタク”が統率する兵士軍団なんだとか。

 彼は、国王近衛隊長……正確な名称は、“国王護衛軍 統括騎士“。その配下にある蒼騎士団の団長でもあるんだとか。

 つまり、彼の為に尽力する兵隊。カルデラさんは、そこの将軍だったと言うんだからちょっと、驚いた。

「飛翠。カルデラさん。大丈夫なのかな?」

 私は、ちょっと様子を見てくる。と言って部屋を出てってしまったカルデラさんの事を、思う。

 どう考えても大丈夫だとは思えない。

 飛翠は、私がずっと持っていた手配書を眺めている。ワインレッドのソファーに座ったまま。

「さあな。本人がついて行く。って言ってるんだから、心配したところでどーにもなんねー。」

 ばさっ。

 と、ソファーに手配書を置いた。
 いつもの飛翠の冷淡な口調。
 それに、この無愛想な感じ。

 なんだかホッとする。

「そうだけど……」

 こうして少し時間が経つと……私の心も落ち着いたのか……。

 やっとまともに思考回路が働きだした。

 今までは何だかわからなくて、正直……パニック状態。もう何を考えていたのかなんてわからない。

 けど……なんだろ。

 飛翠の言う通り……“私達の偽物”。
 いや……この世界だと、私達が“お尋ね者の偽物”なのか。ややこしい。

 それを捕まえてあの“偉そうなイヤな王様”とやらに、突き出さないとどうにもならない。

 それが、ようやくわかってきた。

 だから、落ち着いた。

 “逃げる”だけ。と言うのも、正直イラッとする。何も悪い事してないんだから。私も飛翠も。

「飛翠」

 私はふかふかのベッドに腰掛けた。
 柔らかなスプリングが、私のお尻をクッションみたいに包む。

 ダークベリー色の掛け布団はふわふわしてる。羽毛布団よりも軽そうだ。

 飛翠は答えないけど、私に顔を向けた。
 ランプの灯りしかないから、少し陰って見える。

「どうなるのかな? 私達。と言うか……」

 そうだ。言っておかないと。
 今しかない。

 私は飛翠の顔を見つめた。

「ごめん。なんか……こんな事になって……」

 パニック状態だったから。とは、言い訳だけど、飛翠がここにいるのも、私のせいだ。

 あの古書店で、本を見てた私の傍にいたから。白い光に包まれたんだ。

「は? なんか変なモン食ったか? それとも頭沸いたか?」

 飛翠はきょとん。とした。
 と言うより呆れていた。

「だってさ……」

 あー……悪いと思ってるんだから、素直にもっとこー……。別にいいよ。とか、言ってくれないかな。

 ぶらぶらと私は、足を揺らした。
 ベッドは座ると足が床につかない。

「お前の“ワガママ”に振り回されんの慣れてるし。それに、俺としてはかなりありがてー世界だけどな。」

 は??

 私は飛翠のその言葉に、揺らしていた足を止めた。

 ソファーの上の飛翠は、とても“強気で勝ち気”な顔をしていた。

「退屈してたからな。毎日クソみてーな生活だ。ワケわかんねー女ども。殴り合ってもつまんねークソ野郎ども。」

 飛翠は肘掛けに肘をつくと、頬杖つく。

 殿様みたいな雰囲気を、醸し出しているのは気の所為だろうか。

 それに何だか嬉しそうな……と言うか……“悪意”に、満ちた笑顔だけど。

「卒業さえすればいい様な環境。その先は大学だ。何もやりてーこともねーのにな。うんざりしてたんだ。俺は。」

 なにを言ってらっしゃるのかな? 
 この方は……。

 飛翠は更に続けた。
 ギラギラした目つきで。

「ここはおもしろそーじゃねーか。わかりやすい。“強くなきゃ生きていけねー”んだろ? シンプルで、やり甲斐ありそうだ。」

 は…………?

 なに? え? なんか“産まれた”??
 別人格でも産まれたか!?

 前々から“アブない奴”だとは思ってたけど……とうとう、“戦闘モード”の脳みそが出来上がった!?

「ねぇ? お願いだから“普通”でいてくれるかな? ついていけない。」

 私は……とりあえずそう返事しといた。

「は? 俺がいねーと困るくせに何言ってんだ。安心しろよ。お前の事は面倒見てやるよ」

 と、飛翠は不敵に笑ったのだ。

 はぁ。

 なんでこんなに“自信過剰”な殿様に、育ったんでしょうか。

 神様ーー。この人は本当に、最恐です。

 もう私にも止められません。

 カルデラさんが、早く帰ってきますように。

 私はランプで照らされた天井に、祈りを捧げた。
 天にいるかどうかもわからないけど。

「何やってんだ? つーか。見ろよ。」

 と、飛翠の呆れた声が聞こえた。

 はい? なにを? 私は神を見たい。

 と、思いつつも立ち上がる。

 飛翠の方に向かった。
 ソファーにふんぞり返り手配書を差し出していた。

 セピア色の少しぼろっとした手配書だ。

 私と飛翠に“よく似た人物”が描かれている。

 その上には……

「え!? ウソでしょ!?」

 私はーー、声をあげていた。

「どっちにしても“強くなる”しかねーな。俺もお前も、“この世界のルール”で。」

 と、飛翠の声が聞こえた。
 強気な声が。

 でも、私は手配書から目を離せなかった。

 2億500万コアの懸賞金は、3億コアに跳ね上がっていたのだ。

 最早……この世界の誰もが……敵になりそうな予感がした。

「……って、3億って日本と同じなのかな!?」
「知るか。つーか、メシ。」

 はぁ……。前途多難だ。

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