元魔王の人間無双

月田優魔

リルル・マレイラ

オレは大きな門の前に立っていた。
王宮を見上げるとその佇まいは圧感の一言だった。
王都へ来た時も思ったがなかなか素晴らしい建物だ。
門の横に立っている門番に声をかける。

「すいません、国王様に呼ばれてきたガゼル・レイヴァルドですけど」

「ちょっとお待ちください。軍の方に連絡します」

王宮の中には王国宮廷魔法騎士団の本部がある。軍の人間にオレを案内させるということだろう。
さすがに部外者が自由な状態で王宮へは入れないわな。
門の中から、黒い羽衣のような軍服に身を包んだ一人の女性がやってくる。

「あれ?誰かと思えばガゼルくんじゃない」

「げ」

思わず声が漏れる。
オレはこの女性を知っている。この前、オレの家をゴロツキに襲撃されたときに、犯人を引き渡したやつだ。軍に所属している。

「げ、ってなにかなぁ。私、もしかして嫌われててるぅ?」

リルル・マレイラ。少し長めの茶髪で髪の先の方はくねくねと波のようなウェーブがかかっている。優しそうでおっとりした顔立ち、性格でとても軍に所属しているとは思えない女性だ。

「ちょっと本音が出ただけです。それより今日は国王様に呼ばれて来たんですけど」

「さらっと酷いこと言われた気がするけどそれは流しておいて……うん、話は聞いてるよ。君の案内は私がさせてもらうね」

リルルに連れられて王宮の中に向かった。


オレとリルルは広い廊下を歩いていた。

「この前は災難だったね」

災難とは家を襲撃された件だろう。

「まったくです。オレは平穏に普通に穏やかに暮らしたいだけなんですけどね」

「君は傍観者でいたい人なの?」

「できればそうしたいところなんですけどね……」

しかし、現実はそう簡単にはいかない。いつ何か大きな事件に巻き込まれるかわからない。

「で、今度は何したの?」

聞き方がおかしい。その聞き方だと明らかにオレが何かした感じだ。

「オレは何もしてません」

「えぇ?そうなの?けど、国王様に呼び出されるなんてよっぽどのことだと思うけどな」

それはオレも気になっているところではある。国王が学生を呼び出すなんて聞いたことがない。

「オレが何か悪いことでもすると思いますか?」

何を答えたらいいのか分からなくなって、こっちから質問してみる。

「……思う」

おい。

「あはは、冗談だって。ところで、傍観者でいたいなら私が面倒見てあげようか?」

「……やめておきます。あなたのことよくわからないんで」

「ふふ、残念」

どうもペースが読めない人だ。何を考えているのか分からない。マイペースというかなんというか………。

「じゃあ、国王様に会いに行こうか」

オレ達は王の間へと足を速めた。

          

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