元魔王の人間無双

月田優魔

襲撃

次の日の朝、セレスは教室で友達を待っていた。

「おはようセレス」

「おはようございますセレスさん」

オリビアとクシェルが教室に入ってくる。

「おはよう2人とも。今日は遅かったね」

「学園前で偶然クシェルに会ってね。話しながら歩いてたら遅くなっちゃった。」

何かに気づいたオリビアは教室を見渡す。

「そういえばガゼルがまだ来てないわね」

呆れたような顔で呟く。

「ガゼルが朝寝坊するのはよくあることですからね」

ははは、と微笑しながらクシェルが説明する。

「呆れてモノも言えないわ……。そんなヤツに負けただなんて、アタシの評価が下がっちゃうじゃない。アイツが来たら一言文句を言ってやるわ!」

ガタンっと勢いよく教室のドアが開く。
教室中の視線が注がれる。

「来たわねガゼルっ!あなた首席としての自覚が…………?」

語尾にいくにつれ言葉の勢いが弱くなっていく。

そこに立っていたのは知らない男2人だった。

「あなた達、誰………?」

オリビアが男2人に問いかける。
クシェルも、誰か?という疑問以上の思考は止まっている様子だった。
男達は不敵な笑みを浮かべているだけで黙っている。

すると1人が、すっと人差し指を差し出した。
その人差し指の先にはクシェルがいる。
オリビアとクシェルは危機感のまるでない顔で、ポカーンと眺めている。

ーー次の瞬間、人差し指の先から魔法陣が浮かび上がり、雷撃の槍がクシェルの腹部を貫く。

「うぐっ!!?」

「クシェルっ!!!!!!!」

オリビアが叫び、クシェルが腹を抱えてうずくまる。
床に真っ赤な血が広がっていく。

「キャアアアァァァァァァァァッ!!!」

教室に悲鳴が響き渡る。

「アンタなにすんのよっ!!!」

敵だということに気づいたオリビア。
その表情には怒気があらわになっている。
魔法陣を5つ展開し、ありったけの魔力を込める。

《火弾》よりもさらに強力な火魔法火炎滅却砲
放たれれば男2人どころか、教室が半壊するほどの威力が込められている。

「食らいなさいっ!!!」

魔法陣が紅く光り輝く。
その周りには魔力の粒子が爛々と輝いている。

ーーーしかし、魔法が発動することはなかった。

「がぁっ……っ!!!」

オリビアの心臓を剣が貫いていた。
油断していた背後からの一撃。
発動しようとした魔法陣が消えていく。

「…………な………ん…で………っ」

オリビアは最後の力で背後を見てそのまま崩れ落ち、床に倒れた。

「お前らっ!大人しくしていたら殺したりはしない!だが抵抗するならぶっ殺す。わかったら大人しくしてろっ!!!」

教室全員に聞こえるように男がそう言い放つ。
他のクラスメイト達は恐ろしくて動けなくなっていた。

血の中で微かに見える視界、クシェルは振り絞ってオリビアのそばに立っている人影に呟く。

「…………………………さ…………ん…………」


          

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