頭脳派ゲーム世界の黒幕

月田優魔

ペア


特別ゲームが発表されてから1日後の朝。
オレはいつも通りの時間に登校する。
教室の中はいつも通りの様子だった。
初めての特別ゲームということで動揺しているかと思ったが、そうではない。
退学の条件があるとはいえ、中学校の復習レベルということで安心しているようだ。
確かに中学校で真面目に勉強してきた人であれば簡単にクリアできるゲームだろう。
しかしそんな人でも退学する危険がないわけじゃない。
それはペアを組んだパートナーが意図的にテストの点数を下げること。
相手が0点を取れば500点以上とることは難しい。退学になるかもしれない。
その点は慎重にペアを組まなければならない。
入学早々退学になったりしたら笑えないからな。

「昨日の樟葉さんとの勉強会はどうだった?」

いつの間にか隣の席に座っていた白銀から声をかけられる。

「いい感じだったよ。これならペア次第でなんとか退学は避けられそうだ」

「ペアの方は決まったの?」

「まだ決まってない。特別ゲームは始まったばかりだからな」

まだ発表されてから1日しか経ってない。ペアを決めるには早すぎる。

「君の場合、早く決めた方がいいよ。Fランクの君と組んでくれる人なんてなかなかいないからね」

「なんで急がないといけないんだ?」

「………本気で言ってるの?」

白銀は呆れたように大きくため息を吐く。

「いいかい?この特別ゲームではランクの高い人から順に売れていく。当然だよ。ランクの高い人と組めば高得点を狙えてポイントが貰えるんだから。つまり、ランクの低い人は高い人と組みにくい。低い人同士で組めば、もしかしたら退学もあるかもしれないよ」

「マジか」

それが困ったところではある。オレはランクが低いため周りから必要とされない。

「だから他の人に取られる前にランクの高い人を確保しておいた方がいいと思うんだ」

白銀はそんな風に助言をしてきた。
それをオレは適当に流す。

「まぁ、なんとかなるだろ」

「能天気だね。流石Fランク」

話しても無駄だと思ったのか、それ以上こちらに何か言うことはなかった。
ホームルームの少し前、クラスメイトが全員集まった時点で樟葉が壇上に立つ。

「みんな。ちょっといいかな」

教室中から視線が集まる。

「私は今回の特別ゲームで退学者を1人も出したくないの。だから、クラスのみんなで協力してペアを調整してゲームを乗り切りたいと思ってる。どうかな?」

「俺もそれがいいと思うよ」

真っ先に答えたのはクラスメイトの星宗介ほしそうすけ。爽やか好青年という感じの男だ。

「俺たち全員で協力してゲームを乗り切ろうよ」

星もまたクラスのリーダーの資質があり、色んな人と仲良くなっている。

「ありがとう星くん。みんなもそれでいいかな?」

異議はないようでクラス中から賛同を得られる。
そんな中、七瀬が手をあげる。

「私は勝手にさせてもらうわ」

この一言でクラスの雰囲気が一気に悪化する。

「ここは実力主義の学校よ。退学する人はそれまでの生徒だったということ。みんな仲良しこよしでする必要はないわ」

「でもみんなで協力した方が確実にゲームを乗り切れるよ」

「だとしても私は勝手にさせてもらうわ」

これで七瀬はクラス中から反感をかったことだろう。
輪を乱す人と仲良くしようとは思わない。
1人で孤立していく七瀬。

「そっか。強制はできないからね。他の人はそれでいいかな」

これでクラスの方針は決まった。
オレとしてもとてもありがたい話だ。
安全に特別ゲームを乗り切れそうで何より。

「それじゃあ昼休みにペアを決めるから忘れないでね」

樟葉が壇上から降りて星となにやら話している。
その後2人揃ってオレのところに来た。

「夜神くん。星くんと話したんだけど、やっぱり夜神くんだけは先にペアを決めておいた方がいいと思うんだ。Fランクだから心配だよ」

このクラスで一番ランクが低いのは間違いなくオレだろう。
つまりクラスで一番頭が悪いということ。退学候補筆頭だ。

「オレもできれば早めに決めておきたいと思ってたんだ」

「ペアを組むんだったら進藤くんとかどうかな?一緒に勉強会したけど、学力はかなり高かったよ」

樟葉の意見に星も首を縦に振る。

「俺もそれで大丈夫だと思う。それでいいかな?夜神くん」

「ああ。大丈夫だ」

できれば白銀と組んでおきたかったが、まぁ進藤でも大丈夫だろう。
どちらでもオレのやることは変わらない。

「進藤くんには私から話を通しておくね」

「よろしく頼む」

樟葉と星は自分の席へと戻っていく。

「ねえ雑用。おかしいと思わない?」

「何が。ってか、その雑用呼びやめろって」

隣の席の白銀だ。

「普通Fランクの君のペアはクラスで一番頭がいい私を選ぶところ。なのに樟葉さんは進藤くんを選んだ。どう思う?」

「どうって………たまたまなんじゃないか?」

「そうだね。そうだといいね」

含みのある言い方で気になったがオレは流しておくことにした。
何が起ころうともオレのやるべきことは変わらない。

「夜神くん。私たちはもっと情報を集める必要がある。他のクラスを偵察に行くよ。ついてきて」

「………分かった」

雑用らしく白銀の後ろにひっついてオレは他クラスへと向かった。

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