頭脳派ゲーム世界の黒幕

月田優魔

リーダー

特別ゲームが発表された後の放課後。昨日と違い、教室内はとても騒がしい。ほとんどの生徒が教室に残り、特別ゲームの話をしていた。

「夜神くん、大丈夫?」

樟葉が席に座っているオレの元へやってくる。大丈夫か、というのはもちろん特別ゲームのことだろう。

「正直厳しいと思う。オレは入学試験で1ポイントしかもらえなかったFランクだからな」

考えてみればよく入学できたものだ。何か他の要因があるのかもしれないな。

「退学するかもってこと?」

「樟葉も分かってるだろ。オレは頭が悪いって」

「だったら勉強すればいいんだよ。テストまで5日間あるからそれまで勉強しよう。私も付き合うから一緒に頑張ろうよ」

「………そうだな。頑張るか」

退学しないためにオレも最低限の努力をする必要がある。

「そう簡単にいくかな?」

隣の席の白銀が話に割り込んできた。

「今からやっても間に合わないんじゃないかな?ここで見限っておくことが君のためになるかもしれないよ」

その台詞に反感を持ったようで樟葉が強く反応する。

「白銀さん。私は友達を見捨てないよ。最後まで諦めない」

「ごめんね。余計なお世話だったね」

ふっと笑った白銀。

「白銀さん。話があるんだけど」

今度は樟葉から声をかける。

「私たちのクラスでリーダーを選んだ方いいと思うんだ」

確かにクラスの方針を決めるリーダーを立てておいた方がクラスがうまく回るようになる。

「それを白銀さんに頼めないかと思って。このクラスで1番ランクが高いの白銀さんだから」

リーダーは優秀な人の方がいい。そこで白銀に話が来たようだ。

「私よりも適任の人がいるよ」

それをすぐに否定する。

「え?だれ?」

「君だよ。樟葉さん」

まさか自分に返ってくるとは思ってもいなかったようで、驚いている。

「わ、私?」

「樟葉さんはこのクラスのほとんどの人と仲良くなってる。君だったら誰も反対する人はいないよ。影響力もあるしね」

確かにそこは大事なところだ。方針を決めてもクラスが従わなければ意味がない。

「でも私、頭良くないよ」

「そこは私がカバーするよ。このクラスの参謀ということだったら引き受けてもいいよ」

頭のいい白銀に適任と言えるだろう。作戦を考えるだけなら影響力は必要ない。

「…………分かった。私がリーダーをするよ。このクラスが1番をとれるように全力で頑張る」

「私も頑張るよ」

その様子を隣で聞いていると、白銀の視線がこちらに向く。

「君も手伝ってね」

「オレも?」

「うん。雑用係として」

「拒否権は?」

「ないよ」

拒否権はないようだし大人しく従っておく方が良さそうだな。

「分かった。代わりにオレの普通で平穏な学校生活は頼んだぞ」

「任されたよ」

「………なんか、二人とも仲良いね」

樟葉がオレと白銀をじーっと見つめる。

「そんなことないぞ。なあ?」

オレは白銀に同意を求める。

「そうなの?私は仲良くなったつもりだったけど」

思わぬ返答にオレは驚いていた。
恥ずかしいことを真顔で言ってくれる。

「そ、それよりも今はテストのことだろ」

オレは脱線した話を元に戻す。

「そうだった。これから図書室で勉強しようと思うんだけど、二人ともどうかな?」

「私は遠慮しとくよ」

白銀が速攻で断る。頭がいい白銀なら当然か。

「オレは行くよ」

「じゃあ、夜神くんは先に行っててね。私はもう少し誘ってみるよ」

オレは図書室へと向かった。

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