頭脳派ゲーム世界の黒幕

月田優魔

学園都市

オレは自分の教室にやってきた。
1年4組。オレが1年間を過ごすクラス。
1学年4組まであり一クラス40人ほどだ。
オレの席は窓側の一番後ろ。最高の場所だ。
席に座り荷物を置くと教室の中を見渡す。
一人で座っている人もいれば、誰かと話している人、つまり友達ができた人もいるみたいだ。
樟葉は後者のようで、いろんな人に話しかけている。
真似してオレもいろんな人に話しかければいいんだろうが、残念なことに知らない人に話しかける勇気はオレにはない。樟葉を助けた時は緊急事態だったために話しかけることができたのだ。
日差しを浴びながらぼーっとしていると、横からの視線を感じる。隣の席の女の子がこちらを見ているようだ。最初は気にしないようにしていたが、だんだんと居心地が悪くなり、勇気を振り絞りこちらから声をかけてみる。

「あの………何か?」

すると、焦ることなくこちらを見つめ返した彼女はふっと微笑んだ。

「ごめんね。邪魔するつもりはなかったんだ。あまりに気持ちよさそうにしてたから、つい見つめちゃった。迷惑だった?」

輝くような銀髪にサファイアのように澄んだ蒼い瞳がオレを見つめる。そんな状況で迷惑だったなどと言えるわけもなく……。

「いや、大丈夫だ」

「それならよかったよ。私は白銀織姫しろがねおりひめ。よろしくね」

「夜神優希です。よろしく」

どこかミステリアスな女の子で、オレが今まで会ったどの人間とも違う。芯が強そうな印象を受ける女の子だ。
その時教室の扉が開き、先生と思われる人が入ってくる。

「それでは席につけ。ホームルームを始める」

騒がしくしていた生徒たちが自分の席に座り静かになる。

「私が君たちの担任をすることになった榎本遥えのもとはるかだ。よろしくな」

サバサバした口調の女の先生だった。さらりとした長い黒髪が特徴的だ。

「それでは君たちにこれから端末を配る。大切な物だから絶対無くさないように」

そう言って配り始めたのは長方形のタッチ画面のついた電子機器。まるでスマホのようだ。

「それはこの島で生活する上で必需品となる端末だ。端末は、まぁ本土でいうところのスマホのようなものだ。この島で生活するのに便利になる様々な機能がついている。電話機能はもちろんのこと、地図機能、アプリ、電子マネー、自分の個人情報の確認などができる。全員まずは自分の個人情報を開いてみろ」

端末の電源を入れて個人情報を確認してみる。名前、性別、在籍校、学年など見慣れる表示と一緒にランクとポイントという欄がある。

「そこに表示されているランクとは自分の実力がどの程度かを示す階級だ。ランクはポイントに応じて上下し、基本的にFランクからSランクまでの七段階ある。この島ではランクによって受けられる恩恵や待遇が違ってくる。島でお金の代わりとなる電子マネーは月始めにポイントによって支給される」

つまり恩恵を受けられるかどうかは実力しだい。優秀な者が好待遇を受けられるという社会の縮図。
ーーーそう、この島は差別を前提とした場所だということ。

「ポイントを手に入れる方法は大きく分けて三つある。大切なことだからしっかり聞いておくように」

先生の説明をまとめると以下の通り。

一つ、学校のテストで好成績を収めて手に入れる。
二つ、生徒と個人ゲームをして手に入れる。
三つ、不定期に開催される特別ゲームの商品で手に入れる。

「一つ目は言わなくてもわかるだろう。学力の成績に応じてポイントが支給される。二つ目、これも結構重要だ。生徒同士で合意の上ポイントを賭けて個人ゲームをし、勝利して手に入れる。三つ目。これが一番重要。不定期で開催される特別ゲームで好成績を収めて賞品として手に入れる。要は実力で手に入れろ、ということだ。

この島は、それ自体が生き残りをかけたサバイバルゲーム。
自分の力で勝利を掴み生き残れ、ということ。

「ポイントには個人ポイントとは別にクラスポイントというのが存在する。クラスポイントとはクラス単位で優劣を決めるポイントだ。同じ学年で競い合ってもらい、卒業時に1番高いポイントのクラスだけがこの学校の卒業生に与えられる進学・就職の有利の恩恵を受けることができる」

パンフレットなどで入学する前から分かっていたことではあったが、改めて聞かされると変わったシステムだ。個人戦であり団体戦でもある。個人でお金を稼ぎ、団体で協力し合い一つのことを成す、という感じだ。

「個人ゲームは端末から申請することができる。近くにいる端末を検索し相手の端末に申請する。受諾されると、システムの厳正な管理のもとゲームが行われる。ゲームのルールは合意があればどんなルールでも大丈夫だ。この島ではゲームを推奨しているのでみんなどんどん勝負してくれ」

榎本先生は楽しそうにオレたちを見下ろしている。

「それでは楽しい学校生活を送ってくれたまえ。それと、夜神優希は後で生活指導室に来るように」

そう言い残し、榎本は教室から去っていった。
まったく………なんなんだ。

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