これがあたしの王道ファンタジー! 〜愛と勇気と装備変更と〜

プリティナスコ

前略、髑髏とプリンと

「おぉ〜これはスゴイ!!」


 初めてくるネオスティアの街に、あたしは興奮を隠しきれない。


「あまりはしゃがないで下さい。田舎者と思われます。」


 いやいや、これははしゃぐなって方が無理でしょ!
 曰く、ここ始まりの街『ラックベル』はまさに、冒険者の街。という触れ込みの街らしい。
 なんでも、比較的弱い魔物しか出現せず、この街で冒険者になる人も多く、必要な物も揃う。それを支援するような施設もあり、様々な冒険者がこの街を起点に活動しているらしい。


「こういうまさに異世界ファンタジーって感じの街に来たかったんだよ!」


 周りを見渡す、見たことない建物やお店に心が踊る。不思議な食べ物を売る屋台。怪しげな煙をだす小屋、コンビニ、武器屋に防具屋それに道具屋!どれをとっても異世界!
 ………コンビニ?


「コンビニ?なんでコンビニ?」


「便利ですよね、コンビニ。」


 私もよく行きます。リリアンも行くらしい、似合わないなぁ。
よく見ればコンビニの他にもちらほらと、あたしの世界の建物もある。よく見るマンション、明らかにパクってる食べ物チェーン店などが、昔からあたしの世界からネオスティアにきた人が多い事を教えてくれた。


「やっぱりさ、酒場とかあるの?そこでギルドに入ったりパーティーを組んだりさ」


 そういうのちょっと憧れる。


「仲間は多いほうがいいよね。」


「酒場もギルドもありますけど、仲間が増えるとは限りませんよ。講義の時間です。」


「パーティーは同じ目的の為の即席の一行です。同じ目的地を目指す私達もパーティーといえるでしょう。」


 まぁ申請する気はないですけど。仲良くなれたと思うけど、まだ壁を感じる。


「パーティーを組む事によってお互いを証明したり、同じ仕事ができたりと、便利な点も少なからずありますが特に必要性を感じません。」


「それもそうか、奴隷商人に間違われても困るし。」


「そうですか、雑魚Cさんと同じ対応が好みと。」


「本当にすみません。」


 マウントを取られ、気絶してまで殴られるくらいなら素直に謝ろう。リリアンと生活する上での必須技能である。


「ギルドはそれの拡大版とでもいいましょうか。同じ目的の為の一団とでもいいましょうか。」


「『青の領地』もギルドですね。私も所属しています。」


「それはそうと酒場を目指しましょう。」


 はて?いまパーティーを組む気はないと言ったばかりなのになんのようだろうか?


「ゴムザルの新種発見報告と、『コガラシ』における、共存、その申請です。」


 リリアンなりに考えてくれてたみたい。ボス達元気にしてるかなぁ。


「ありがとね、あたしじゃそこまでできなかったよ。」


 単純に感謝する。次の言葉は、『いえ、ただの生徒の成長に対する褒美です』って感じかな。


「いえ、たまには弟子に褒美をあげようかと、成果もあげましたからね。」


 ちょっと違った、それでも、だいたいおんなじようなことを言うリリアンに少し頬が緩む。
 それであたしは弟子なのか生徒なのか。
 そんなことを考えているも、ザワザワとした人だかりをみてけて2人揃って足を止める。なにかあったのかな?


 「酒場はここなのですが……」


 ちょっと見てくるよ、リリアン、人混みは好きじゃないだろうし。あたしは人混みの中をかき分けていった。


「よいしょっと、ちょっと失礼!」


「んん……っ!!」


 髑髏、ガイコツ、悪魔か魔王か、とにかくそんな説明がしっくりとくるなにかがいた。
 骨をあしらった仮面、大きな体躯ににそれを覆う漆黒の甲冑、そしてその異様な姿をもっても存在感を失うことのない大剣を地面に刺し、石像のような姿でその人?は立っていた。
 よし!逃げよう!


「あわわわわ………」


 良く見れば人混みの中に数時間前に別れたリッカがいた。


「リッカ、さっきぶりだね」


「あ、セツナ!」


「酒場に入りたいんだけど……あれは?」


「わ、わかんない…あたしも用があるんだけど……」


 リッカ、ガクガクである。正義の賞金稼ぎならなんとかしてほしいところだけど。


「あれは……引退……」


「志!!」


「そもそも1度も賞金首捕まえたことないし……」


 おい、じゃすてぃすうぉんてっどはんたー。 
 まぁ、そんなことだろうと思ってたけど。仕方ないリリアンに聞くか。
 とりあえず人混みから離れる。状況を説明するやいなや。


「では行ってきて下さい。話しを聞いてどいてもらいましょう。」


「マジですか!?」


 おおっと、遠回しに死んでこいって言われたぞ?


「はい、遠目にみても今の私より強いです。それなら、あと1度死ねる人が行った方がいいです。」


「あと1回死んだら一般人なんですけど……」


 でも枷付きリリアンより強いのか……やだなぁ……
 まぁ枷なしも見たことないけど。
 仕方ない、行こう。どうせそれ以外に考えもないし、リリアンもアイデアをだす気はないだろうし。


「そんじゃいっちょいきますかー……」


 いつもよりテンションの低い掛け声と共に、あたしは再び人混みに潜った……


「あ、あの〜。何かお探しですか。」


「ウム」


 とりあえず語りかける。めっちゃ怖っ!


「お手伝いしますよ……?」


 沈黙が重い……しばらくの静かな間、ほどなくして髑髏はゆっくりと話し始めた。なにを言われるのかドキドキしながら耳を傾ける。いきなり死ねもあるよなぁ……


「この街に、美味いぷりんの店があると聞いてな」


「なんですと!?」


 あるんだ!プリン!


「道を聞きたかったのだが酒場には怯えられ入れず、人も寄り付かなかったゆえな」


 立ち尽くしていたのだ、とは髑髏の談。そいつは困ったね。


「それなら早く言ってよ!道を聞いてきてあげる、一緒に行こう!」


「良いのか?見た目の怖さは自覚しているが」


 あらぬ誤解を与えるのでは?遠慮しがちな髑髏の言葉


「気にしない気にしない。プリン好きに悪いやつはいないよ。それにいつも悪魔みたいなのと一緒だからね!」


「さぁ行こう!プリンが待ってるよ。髑髏の人の名前は?」


「孤高なる暗黒騎士である」


「おっけー!孤高なる暗黒騎士!」


 上がりすぎたテンションと共に、あたしは道を聞くために走り出した。

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